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Act.4


 風呂場に作った鏡には一糸まとわぬ美少女が映る。全体的に本当に肌が白く、病気を疑ってしまうレベル。


「……」


 創造魔法でお湯を張り、意を決して風呂に入った訳だが。


「何も、感じないな」


 今までうだうだ考えていたのが馬鹿みたいに、その姿を見ても何も感じなかった。これは恐らく、自分の体と頭もちゃんと認識しているって事なのだろう。

 何か大事な物を一つ失ったような、謎の喪失感が漂うが頭ではもう分かっているのだろう。わたしはこの世界にアリスという女の子になってしまったという事を。


 流石に髪の毛や肌を洗うのは難しいので今回は浄化という形を取る。

 男に比べて女性の髪や肌は繊細だと良く言われてるので、男の時と同じように洗うのは傷を付けかねない為の処置である。


 ぶっちゃけて言えば風呂に入ったという気持ちがあれば良いのだ。それでもあれなので、一応タオルで出来る限り優しく、肌を拭いてみた。

 あまり拭いた感はしないけど、気持ち的には良いかな? その後は持ち手のある桶にお湯を汲み、体にかける。


 ここまでした所で後は湯せんに浸かるだけだ。

 ゆっくりと、バスタブの中に体を沈めていく。肩まで入った所で楽な姿勢を取る。


「ふぃー……気持ち良い」


 やはり風呂はこうでなくては。


「本当にアリスになったんだなあ」


 両手で湯をすくい、目の前に持ってくる。薄っすらと映るのは少女の顔……自分の今の顔である。

 夢ではない……それはもうはっきりと分かる。あの白い空間が何だったか分からないが、そこで自分の姿を作ったのも事実。


「これから、どうしようかな」


 アリスとして生きていくのはもう決定事項。

 一人称も何とか変えてるけど、いつボロが出てもおかしくない。と言うかまだ若干慣れてないし。一応理想なキャラなので設定通りに振る舞いたいけど。


 幸い? なのかは分からないが、便利な能力とかは使えているし生活については困らないと思う。

 ただし創造魔法ばかりに頼るのは駄目だと思うし、もし使えなくなった場合も考えて、最低限生活できるようにはしたい。


 異世界に来たらやっぱり……スローライフだな。

 冒険者? 定番だろうけど、スローライフをするのにこれは必要なのか? あーでもお金を稼ぐ必要はあるか。そもそも、冒険者って存在するのか。


「どっちにしろ……街とかに行かないと分からない、か」


 問題はこの近くに街はあるのか。街じゃなくてもせめて村があれば良いが……探すしか無いか。

 無意識に天井を見ながらこれからの事を考える。お金は大事だけど、現状は充実した力があるから優先度は比較的低めかな?

 お金の前にこの世界の知識を知っておきたい。この世界にはこの世界のルールが有るはずだし、それを知るのは大事だ。情報は命と言うし、間違いではない。


 最低限の知識が手に入ったら後は、のんびりとお金を稼いだり、野菜とかを自分で栽培したい。創造魔法を使わずとも自給自足が出来ればもう、それはゴールだろう。

 勿論、力については無くなって欲しくはない。それでも万が一の事もあるし、地盤固めは超重要。


 目指すはのんびりスローライフだ。


「そろそろ上がるか」


 バスタブから出て、体に付いた水滴を綺麗に拭いた後、脱衣所(洗面所と兼用だが)で服を着る。

 アリス風のあの服ではなく、創造魔法で作ったシンプルな白色のワンピースである。非常に不本意ながら下着もきちんと作って着たよ。このフィットする感じ……慣れない。


 アリス風の服は何日着ていても汚れがつかない。というより水をかけても埃がかかっても砂がついても、直ぐに綺麗になるんだよね。謎仕様。

 気分的な問題も有るので創造魔法でいくつかの衣装は作ってある。スボンとかも良いのだが、アリスにはやっぱりひらひら系の物が似合ってるんだよなあ。


 ……着るのは自分なんだが。


 因みに創造魔法で作った衣装は普通に汚れるし、濡れる。あのアリスの服がやはり特殊なだけのようだった。

 周辺を出歩く時はやはりアリスの服を着る。とはいえ、あれを着なくても普通の服で鎌を持つ事も、魔法を使うことも出来るので誤差なんだけど。

 ただし、時間停止能力は使えない。あの懐中時計が無いと発動できないのだ。そういう条件にしたのだから納得はしてる。

 余談だが……普通の服で懐中時計を持つだけでも時間停止能力は使えたので、ぶっちゃけあのアリスの服が無くても大丈夫みたい。でも行動する時はあれを着るようするが。



 すっかり暗くなった外を屋根裏部屋の窓から見る。

 明かり代わりにしてるのは、地球に有るアウトドア用の電池式ランプだ。電気とかそういうのは無いので、それならば電池式が良いかな、と思って作ってみた。


 虫の鳴き声が聞こえる。

 外は当然森なので、明かりはないので真っ暗なのだが、この家の庭には同じように地球から呼び出したソーラー式の屋外用ライトをいくつか埋め込んであるので、一応そこそこ明るい。


 光量センサーが付いてるので、昼間は消え、夜は充電した電池で光を放つ。


「ふぁーあ」


 ベッドに寝転がり、天井を見てると眠気が襲ってくる。それの影響であくびも自然と出る。

 時計はないので何時かはわからないけど、体感的には夜10時くらい? 時計を作ってもこの世界の時間が分からないので設定ができない。だから作ってない。


 明日はどうするか。

 ベッドに仰向けになりながら考える。創造魔法のお陰で大分、生活の地盤は出来たと思う。後はこれを創造魔法無しでもずっと居られるようにすること。


「そろそろ街とかを探すべきかな」


 街があればそこで魔物でも何でも換金すればお金が入るはず。換金できないって事もあり得るけど、そうであって欲しくないかなぁ。

 お金があれば後はお店とかで野菜や果物、それらの種とかも買えるはず……種が買えれば後は栽培すれば良いだろう。

 後は出来るならお米とかも作りたい。現状創造魔法で地球でも慣れ親しんだお米を作ってるので、それをこっちの世界の物に替えられれば完璧。


 そういうのを考える前にやはり知識が必要。

 地球の感覚では多分居られないと思うし、さっきも言ったように早いうちに知っておきたい。ならば、図書館的な物があればそれで良いのだが……。

 魔法だって完全に自己イメージでしかない。これがこの先通用するかもわからないし、魔法関係の本もあったら嬉しいな。


「よし……明日は街を探してみよう」


 アリスになって一週間と少し。ようやくわたしは街というか人里を探すことを決めるのだった。


 さ、今日はもう寝ますかね。

 目を瞑って数分、わたしの意識は夢の中へを落ちていったのだった。



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