Act.9
2章最後となります!
何でこうなった……何かすみません。
ログハウスに帰宅し、ゆっくりとくつろいていれば、時間はあっという間に過ぎ去って行き、夜となっていた。
エリシアちゃんが作ってくれた夜ご飯のメニューはオムレツと、ホーンラビットの肉だった。
ホーンラビットの肉って、結構美味しいんだよ。ウルフ系の肉とはまた違った感じのね。結構柔らかい、と言えば良いかな?
で、お馴染みのご飯と味噌汁。エリシアちゃんってば、また腕を上げちゃってまあ……いや、何となく変わったなって思っただけだけど。
「エリシアちゃん、また上手くなった?」
「そうですか? でもそう言ってもらえると嬉しいです」
「私は良く分からないけど、これ結構美味しいわね」
「ホーンラビットの肉ですよ」
「あーなるほど。通りで柔らかい訳ね」
ティアさんもすっかり、この生活に慣れてる気がする。これなら引き込めるかもしれない、とまた黒い事を考える。
晩御飯を済まし、再びみんなはそれぞれ別行動と言うか、自分の部屋に戻って行く。食器洗いを終えたわたしは、ティアさんの部屋へ。
何故かと言えば、昼間にあった出来事を教える為である。荷物も返さないといけないし。
「あれ、アリス、どうしたの?」
「少し話たい事があるので、時間大丈夫?」
「え? うん、大丈夫よ」
そう言ってティアさんは一度、中に戻って外へ出てくる。
場所はぶっちゃけ、外が良かったが、屋根裏部屋でする事にした。屋根裏部屋にはわたしの部屋から行けるようになってる。
「えっと、ここをこう」
「何してるの?」
エリシアちゃんは知ってるけど、そう言えばティアさんには教えてなかったね。わたしの部屋のちょっと色が違う部分の天井に引っ掛ける部分があるので、それにこの棒を引っ掛けて下に引くようにする。
「ええ……」
そうすれば、ガッシャンと音を立てながら隠し階段? が下りてくるのだ。それを見たティアさんは予想通り驚いていた。
そのままティアさんの手を引いて屋根裏部屋へ。
二階建てになってからあまり来てないんだよねー……でも、掃除する時はきちんとここも対象にしてるので綺麗なはず。
屋根裏部屋の窓を開け、ティアさんに向き直る。
「それで話って?」
「うん。実は、今日ミストルまで行ったんだけど、そこでティアさんの荷物を奪った犯人の男三人と会ったんだ」
「え!? ミストルって何処! 今すぐ倒しに行かなきゃ」
「ティアさん落ち着いて。ティアさんが行かなくても大丈夫」
「それってどういう……」
ストレージから男に返して貰った荷物を取り出し、ティアさんに見せると、これまた驚いた顔をするティアさん。
「え、これは……」
「その男たちから返して貰ったんだけど、ティアさんのであってる?」
「ええ……間違いないわ」
リュックを開けて中身を確認するティアさん。
あいつら、中身を特に弄ってなかったみたいで、お金が少し減っていた事以外無くなった物は無かったようだった。
まあ、お金が減ってるって言うのは気になるけど、まあ見逃しちゃってるし良いか。それにティアさんだって少し稼いでいる訳だし。
「アリス。本当になんてお礼を言ったら良いか……」
「気にしないで。でもごめん、自分の判断で三人は見逃しちゃった」
「大丈夫よ……確かにまだ怒りがあるけど。荷物が返ってきたし、私もこの通りアリスたちのお陰で元気だし」
見逃したのはわたしの勝手な判断だから申し訳なかったけど、ティアさんは気にして無いようだった。でもやっぱり少しは怒ってるっぽい。
「荷物も戻って来たし、私はそろそろお暇になるかしらね」
「あ、ティアさん。その事でちょっと話が」
「え?」
荷物も返したという事で、わたしは早速交渉と言うか……考えていた事をティアさんに提案するのだった。
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その後、ティアさんはこの家の護衛と言う名目でわたしが雇うと言う事になった。ティアさんの本業は冒険者だから、引き留めるって言うのは正直気が引けていた。
だからこれをお願いする時はちょっと不安だったんだけど、ティアさんは二つ返事でOKと言ってくれたのだ。
しまいには、お給金も要らないとか言い出したけど、それは流石に宜しくないのでちゃんと支払うとしている。
部屋は引き続き、今まで使ってた場所を使用してもらってる。この契約は冒険者組合で正式に手続きを取ったので、大丈夫だ。
で、雇用主と雇用者と言う関係にはなったものの、普段通りである。別にティアさんの行動を制限してないので自由なのだ。
契約と言うのはぶっちゃけ建前なのだ。その中で、水魔法を使って貰う感じ。水の入れる容器を幾つか用意したので、そこに入れて貰ってる。
「ティアさん、本当に良いんです?」
「勿論よ。私はアリスたちに助けてもらったんだし、前にも言ったわよね? 恩は必ず返すって」
「でもここに居てもいける所とかあまりないよ?」
「あら、別に行く必要ないわよ。ソロの冒険者に戻ってもまた勧誘の嵐が来るでしょうし。それに、冒険者じゃなくても稼げるしね、アリスのお陰で」
まあ、この家の護衛と言う名目だけどね。
毎月お給料を出すという事にしてるので、安定した収入とも言えるだろう。ティアさん自身も荷物とかが戻ってきたから蓄えもあるしね。
「まあ、それならそれでこっちも嬉しいけど」
「アリスたちも、私もどちらも損はないんだから」
所謂Win-Winな関係と言うやつだ。
どちらも損しない、そんな関係。このログハウスもまた賑やかになるなって思う。でもこういうのも悪くは無いだろう。むしろ、理想的なスローライフなのでは!?
改めて思うと、ティアさんが加わったことで更にこの世界に馴染めて来てるのではないだろうか。創造魔法に頼らずに過ごせるという目標がまた近づいた気がする。
まあ、エリシアちゃんもティアさんも訳ありで出会った存在ではあるけど、これもまた出会いの運命と言えば良いのかな。
「ティアさんも、行きたい所あったら言ってください。転移で行けるなら直ぐにでも送れるので」
「ふふ、ありがとう」
行ける所は少ないけどね……港街ポステルにアルタ村、そして国境の街ミストルの三か所だ。ミストルについてはわたししかまだ行った事無いけどね。
エリシアちゃんの約束もあるので、時間が出来たら誘ってみよう。
「そう言えば凄い今更なんだけど、アリスって何でこんな森の中で暮らしてるの?」
そんな事を考えていると、ふいにティアさんに質問を投げられる。
そう言えばなんでだっけ? アリスとして転生して、住む場所が欲しかったから森の中に家を即席で建てたんだった。
即席……何か変かもしれないけど、創造魔法がチート過ぎるのだ。
誰にも邪魔のされない、のんびりを暮らせる環境が欲しかったって言うのもあったかな。地球での暮らしは両親が死んでからは虚無だったし。
地球でのことは忘れて、この世界で暮らしたい。女の子になってしまったけど、これも良い転機なんじゃないかなとも思った。
でも改めて思ったけど、一人って言うのはやっぱり寂しいと実感したよ。最初は気にして無かったけどさ。
今はエリシアちゃんとティアさんが居るから結構にぎやかだけど。
「ごめん、言いずらい事だった?」
「うーん……のんびり過ごしたいから、かな」
「なるほどねー」
ティアさんはそれ以上は何も聞いてこない。
転生した……前世の記憶があるって事はエリシアちゃんにも言ってないしね。それを言った所で何も変わらない気もするし、わざわざ言う必要は無いかなって。
「まあとりあえず……アリス。これからもよろしくね」
「こちらこそ」
理想のキャラ”アリス”になって転生してから半年。自分含め、三人目の同居人が増えました、まる。
最後に閑話を一つ投稿して終了となります。
なお、Ch.3については時間が空いてしまうと思いますが、よろしくお願いします。




