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期待外れと追放された神眼使いが《墓守》に就職したら墓地にダンジョンが出来てました   作者: 紙風船


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第二十九話 会議終了

「はぁ……いや、すまない。ナナヲ君が代理墓守を立ててザルクヘイムに向かった事までは把握していたのだが、内容の隅々までは確認しきれていなかった。申し訳ない」

「いえ、大した事はないと思います」

「そうは思えないんだが……特に其処の彼女」


 支部長の視線がシエルに向く。


「彼女が君のテイムモンスターだろう。確かスケルトンと聞いていたのだが……」

「エルダーリッチーを討伐したことで進化して、今はアバドンです」

「……災厄の異名を持つ伝説のモンスターが従者、か」


 眼鏡を外して眉間を押さえる支部長に僕とシエル以外からの同情の眼差しが集まっていた。何だ、僕は悪くないぞ。


「制御は、問題ないなんだね?」

「えぇ。意思の疎通も可能です」

「どうも~」


 言葉を発し、ひらひらと手を振るシエルを見た支部長が目を見開いた。


「会話も可能なのか……!」

「スケルトンの時から会話はしてました。お陰様で連携も取れて墓守作業もダンジョン対策もばっちりですよ」

「声帯無いのにどうやって話すんだ……」


 椅子に深く座り、盛大な溜息を吐いているのを見るに、もう彼の中では情報過多で疲労困憊ってところだろう。


「……ナナヲ君には時間のある時に其処のアバドンに関する報告書をあげてもらう。どういう風に仕事をしているのかや普段の様子を書いてくれると助かる。それをアルベールに渡してくれるかな」

「分かりました」


 昼間の仕事が増えてしまった。僕の睡眠時間が……。


「支部長殿、一つご報告が」

「どうされた? ミルル殿」


 一区切りついたところでミルルさんが小さく手を上げる。そしてチラ、と僕を見た。あぁ、きっとアレの事だろうなと思い、頷く。


「ナナヲ様が使用されている聖水について、お話が」

「うん? ミルル殿が所属されている聖天教と取引した物を支給しているが……。地下ダンジョンの事もあるから多めに支給しているはずだ」

「はい。実はナナヲ様はその聖水に独自に手を加えて効果を高めた物を使用されています」

「なに?」


 支部長の目つきが鋭いものとなり、僕に突き刺さる。


「あー……えっと、もしかして違反行為でしょうか?」

「聖水は瘴気を浄化する為の物だ。基本的に手を加える余地はないはずだ。だから違反という概念がそもそも無いね。一体何をしたんだ?」

「蒸留しました。そしたら聖水の濃度が上がって浄化力が凄く上がりましたね。今はそれを撒いて墓地内は殆どモンスターは出現しないです」

「はぁぁ……」


 本日2度目の大きな溜息だった。なるほど、こうしたイレギュラーが多いから支部長はやつれて見えるわけだ。


「蒸留……蒸留ね……その発想はなかったかな……はは……」

「おいナナヲ……支部長壊れちゃったぞ……」

「僕は悪くない……」

「聞こえてるぞ、この問題児どもめ」


 今日一日にして僕に対する評価が下がってる気がする。おかしいな。こんなに貢献して優秀な仕事っぷりを発揮しているというのに。


 蒸留聖水に関しては改めて慎重に調査した上で、聖天教と合同で蒸留施設を作って大量生産する方針で話が進んだ。発案者である僕にも何か還元をとミルルさんは言ってくれたが、僕はこれを辞退したかった。蒸留というシステムを考案したのは僕ではないし、本当に偶々だったからだ。

 だがミルルさんも支部長も納得してくれなかったので妥協案として、何かあった時に聖天教に助けてもらうというかなりアバウトな案を提示してもらった。アバウト過ぎるが故に悪用されそうな案ではあるが、ミルルさん発案だし、僕を信頼して提示してくれた案なのでそれを裏切るような事は断じて出来やしなかった。


 こうして蒸留聖水が今後、本格的にグラスタで供給されることになった。町全体の瘴気を浄化することが出来れば、僕の望む昼夜逆転生活からの脱出が達成されることになる。


 そして確かな効力はまず、僕の墓地で発揮されることになった。



  □   □   □   □



「今日はモンスターが居ないな……」

「流石に浄化しきっちゃった感じかな。地面だけじゃなく、空間全体が澄み切ってるみたい。逆に私なんかは居心地が悪いかな……」


 普通に話し、普通に食事をするので人間だと思いがちだがシエルはモンスターだ。瘴気を摂取することが普通であるが故に、清廉さに包まれた場所は逆効果だった。


「さっさとダンジョンに行こう。皆も申し訳ないけどちょっと急ぎでお願いします」

「はいよ」

「分かりました」


 一番の初心者である僕がリーダーとなってしまった結果、こうしてお願いする形で指示を出すことになった。だがやはり相手は先輩ともあって、エレーナもミルルさんも大人しく従ってくれる。


 いつもとは違う、増えた人数でぞろぞろと墓地を進む。夜間と昼間に撒いた蒸留聖水のお陰でモンスターはゼロ。これならば散布業務をすっ飛ばして探索が出来るから効率的だ。人数が増えたお陰で持ち運べる荷物も増えたので、継続的な探索も可能。戦闘も前衛後衛と回復担当まで構成されたので継戦能力も大幅にアップした。


「僕が前衛を。シエルとエレーナは後衛で、ミルルさんはサポートをお願いします。出来る限り深層へ向かいますが、無理そうなら早めに撤退しますね」


 ダンジョンの入口で突入前に簡単な作戦説明と方針を伝える。無理せずに何度もアタックを仕掛けることで出来る限りの損害を減らす。強い敵が出たらシエルの知恵を借りて戦う。もうあまり知り合いに死んでほしくないしな……。


 地面に設置された扉を開き、階段を下りる。


 さて、鬼が出るか蛇が出るか。はたまた骨が出るかゾンビが出るか。


 不安と期待が綯い交ぜになった不思議な感情を抑え込み、油断なく進む。


 こうして第770番墓地地下ダンジョンの本格的な攻略が始まった。

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