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抜忍クノイチと鋼鉄戦士  作者: 法相
エピローグ
47/47

これから生きる未来

 今回で最終回です。

 今まで見てくださった皆様、本当にありがとうございました! どうか二人の幸福を祈ってやってください。

「久しぶりのマイホーム!」


 目が覚めてからから三週間、怪我がようやく完治した龍臥は久しぶりに自分の住んでいるアパートへの帰還が叶い大きな声をあげていた。

 その隣には千代がいて、ニコニコと微笑んでいた。

 今は平日の真っ昼間で、アパートの住人も出かけているので近所迷惑になることもないのでなおのびのびとしているわけだ。


「中は先日のうちに私と姉様が手入れを行なっておりましたので、問題はないと思いますがご確認もお願いします」

「わかった。あれ? でも炎さんは確か部屋が汚い系の人って前言っていたような……」


 仕事ができる女であることは間違い無いのだが、一抹の不安が残る。


「姉様だらしないのは自分の部屋だけですよ。姉様も他人の部屋の手入れには汚すようなヘマはしません」


 私も見張っていましたし、と胸をはる千代。


「なら安心できるね。千代さんも自分の部屋にそれ置いてきなよ」


 彼女の手には大きめのキャリーケースがあり、中には着替えを含めた生活必需品などが多数入っている。

 一緒に寝た翌日、綾人と「距離感的に一緒の部屋でいいでしょ!」「ダメだっつってんでしょ!」と大いに口論になったが、最終的に炎が龍臥の援護に回って隣室を借りるということで決着がついた。


「はい! 荷物を置いたらすぐにそちらの部屋にむかいますので少々お待ちください」

「焦らなくていいから。俺もちょっと座りたいし」

「……わかりました。では三十分ほどしてから参りますね」

「うん。それじゃまた後でね」


 千代と別れて、自身の部屋に足を入れる。

 手入れはしてくれているというだけあって、とても綺麗に片付いている。

 彼女と出会った時にも思っていたのだが、細かいところにも気をつけているので人として尊敬をする。龍臥は自分の部屋をうまく片付けられないタイプなのだ。

 座布団の上に座り、一息ついてからスマフォを取り出す。高垣家では龍臥のスマフォでは電波が入らなかったので連絡も溜まっていた。

 綾人たちが学校や家の方にもいろいろと誤魔化しをしてくれていたようなのだが、祖父からの着信がかなりの量溜まっていた。

 言えないことがまだあるのだが、可能な限りの説明はしておかなければと連絡をすることにした。


「あ、もしもしじいちゃん?」

『龍臥! お前どうなってるんだ!? 国の人から「お孫さんが大怪我したので、とある病院に入院している」としか説明されて乱闘になったんじゃぞ!』


 自分の祖父ながら、なんとパワフルなじいちゃんだと血の繋がりを感じる。

 それから警察も来て説明に来たのが本当に役人だということがわかったり、家の周りには何事かと野次馬が集まったりして大変だったという話をされる。


(母さんってじいちゃんに似たんだなぁ……ばあちゃんはどっちかっていうとおとなしい性格の人だし)


 おそらく心配と相手が詐欺師とでも思って拳が飛んでいったのだろう。幸い相手が不問としたため騒ぎを聞きつけた警察に捕まることがなかったので、龍臥も一安心した。

 いや、実際は安心してはいけないのだが。


「厄介ごとに巻き込まれて怪我したのはほんと。電話も入院してたとこが圏外でできなかったんだ。心配かけてごめんな」

『今の時代で電話繋がらない場所なんぞほんとにあるんか……』

「残念ながら。まあおかげさまで身体はすっかり回復したよ。腕が切断にならなかったからいいお医者さんだったよ」

『切断寸前!?』

「人助けで事故に巻き込まれてね……」


 嘘は言っていない、と内心で龍臥は言い訳をしておく。

 現実では助け助けられの末の怪我だったが、妖魔退治だって広義で見ても見なくても人助けである。

 それから細々と高垣家で一緒に考えた言い訳も交え、話を進めていく。


「ま、今日帰ってきたから二、三日中に一回そっちにも顔出しに行くから」

『わかった。お前の好物をばあさんと用意するから、来る前にちゃんと連絡を入れなさい』

「うん。わかった。あ、あと……すごく、ちょっと言いにくいこともあんだけど……」

『なんじゃ? 気にせず話しなさい』

「さっき人助けの事故のこと言ったじゃん?」

『言ったのう』

「その事故で助けた人も一緒に連れて行きたいんだけど、いいかな?」

『もちろんじゃよ。お前がお客さんを連れてきたいとは……嬉しいのう』


 友達がいないことは祖父も知っているので、変に理解がある分悲しい。


「ありがと。ちなみに来るのは女の子なんだけど……」


 ん? と電話口の向こうから祖父の間の抜けた声が聞こえた。

 怜奈の過去のこともあったため、女性を連れていくのは躊躇いがあるのだが、痴情のもつれと思われてもいけないので説明を続けようとする。


「も、もちろん向こうの親御さんとは顔も合わせてるよ! 病院もその伝手だったし……」

『ば、ばあさん! 大変じゃ! 近いうちに龍臥が女の子を連れてくるぞ! 宴じゃ宴じゃ!』

「おっとぉ?」


 だが、思っていた反応と全然違い逆に困惑する。


「じ、じいちゃん?」

『あの子の将来のお嫁さんにもなるかもしれん! もてなすぞぉおおおお!!!!』


 龍臥の声は聞こえていないようで、テンションの高い祖父の声だけが聞こえてくる。七十超えているのに無茶するなじいちゃん、と内心でツッコミをいれずにはいられなかった。

 それからほどなくしてブツんと通話が終了する。


「ええ〜?」


 テンションの振り幅がおかしいので、逆についていけない。


「とりあえず、最関門は突破できたな。それでよしとしよう」


 緊張して気疲れした、と思い身体を後ろに倒して横になる。

 天井を見上げ一息入れた後、胸のペンダントを掴んで見上げる。

 怜奈から受け継いだ零式。

 今回の件で破損をしたため、綾人たちが厚意で専門の設備へ持って行き修理をしたのだが専門の設備でもブラックボックスな箇所が多く完全に直すことはできなかったということだった。

 そのため出力は以前よりも下がっている、と返却されたさいに報告を受けていた。

 だが龍臥としては天叢雲を討つまで性能が落ちていなかった零式に誇りをもっていたし、修理やメンテナンスを行ってくれた綾人たちに感謝の念しかない。


「これからも使わせてもらうよ、母さん」


 仇を討ったとはいえ、それではい終わりと言えるほど龍臥は薄情な人間ではない。

 綾人に言われずとも、可能な範囲の協力ないし妖魔退治は続けていた。今後はサポートもあると約束もされているのもあって救える命は増えるだろう。

 そして、亡くなった葉山への手向になるだろうと信じて。


「主人様。参りました」

「お、もうそんな時間経ったのか」


 祖父との電話が思いの外長引いていたのか、時間が経つのが早かったようだ。


「千代さん、俺の家に行くの二、三日後になったから」

「了解しました。家から持たされたお土産を持って行かねばですね」

「きっと喜んでくれるよ。千代さん連れていくこと話したらじいちゃん大興奮してたから」

「それは嬉しゅうございます。主人様のご家族に会うのは緊張しますが、粗相のないように気をつけます」


 ふんす、と両手を小さく上げて気合を入れる千代。このような仕草をするのがいちいち可愛らしいので龍臥は微笑ましい気持ちになる。

 千代ならば心配はないと思ってはいるが、それでもフォローはしっかりしようと胸に誓う。


「そうだ、向こうでは俺のこと主人様って言っちゃダメだよ? 特殊なプレイでもしてるのかと思われたらまずいし」

「だ、ダメでしたか。ではご実家の方では龍臥さんと呼ばせていただきますね」

「そうして。あ、それと……ちょっとお願いしていい?」

「なんなりと」

「それじゃ、膝枕してほしいな」


 喜んで、と龍臥の元へ近づいて座り彼の頭を膝の上に乗せる。

 柔らかさと、いい香りに気分が落ち着く。

 ある意味では一緒に寝るよりも恥ずかしい状態ではあると思いつつ、幸せな時間だと思う。


「千代さん」

「はい」

「これからも迷惑かけると思うけど、よろしくお願いします」

「それは私の台詞ですよ。不束者ですが、こちらこそよろしくお願いします、主人様」


 それから二人は目線が重なり、クスッと笑った。

 これからの二人の未来はまだわからない。

 しかし、お互いに出会う前よりもきっと力強く前に進んでいけることは間違いないだろう。

 二人ならば、きっとどんな困難にも立ち向かえるのだから。




                     終


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