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抜忍クノイチと鋼鉄戦士  作者: 法相
エピローグ
45/47

これからのこと

早ければあと2〜5話ほどで最終回予定です。

なにとぞ最後までよろしくお願いします。

「さ、主人様。冷ましましたのであーんしてください」

「あ、あの千代さん……流石に親御さんの前でそういうのするのは」

「気にしないでくれたまえ。千代の新しい一面を見れて父親としてはなによりだよ」


 はっはっは、と豪快に笑う綾人に対して「こっちは構うんですよ」と言わずにはいられなかった。

 綾人には「青春している若者を見るのは、栄養にいい」と真顔で返され、困惑せざるを得なかった。当の千代も全く気にしていないようで、瞳を潤ませながら「い、嫌でしたか?」と言うものだから龍臥が折れるしかなかった。

 ――この娘、こんな感じだったか?

 差し出された料理を口に入れ、咀嚼しながら思う。

 そして全ての料理を食べ終え、あらためて綾人に視線を向ける。


「ごちそうさまでした。それでえっと……俺、これからどうなるんです?」


 ここまでしてもらっておいてではあるけど、と内心で思いつつ無視していい話題ではないのでしっかりと聞く。

 とって食いはしない、というのは真実であることに間違いはないのだろうがどうしても警戒する。


「そうだね。君としては早く知りたいのだろうけど……だけど、先にお礼と謝罪を言わせてくれ」


 綾人は三つ指をつき、龍臥に深く頭を下げた。


「無関係にも関わらず千代を受け入れてくれたこと、炎を助けてくれたこと、小山を止めてくれたこと……本来ならば我々で解決しなければいけなかった今回の妖魔退治にも協力して解決してくれて、本当にありがとう。そして、巻き込んでしまってすまなかった」

「え?」


 そんなに深々と頭を下げられることではないと思っている龍臥は思わず間の抜けた声が溢れる。そんな彼を見て千代は「発言させていただきます」と前置きを置いて、少し呆れたように口を開いた。


「主人様、私が言えることではないのですが、自身の功績を自覚なされたほうがよろしいかと思われます」

「千代の言うとおりだ。そもそも千代の忍び装束見て首突っ込むとか奇特すぎて信じられないよ。忍者の話聞いておいて匿うとか普通の人間の感覚じゃないよ。それに加えて今まで一人で妖魔を倒してきたとも聞いてるし、私たちには恩ができたというものだよ」

「ど、どういたしまして?」


 千代に手助けしたのは、本当にただの偶然であったし、少しでもタイミングがずれていたら出会うことすらなかっただろう。

 それにお礼を言われているが、龍臥自身も千代に命を助けられ家のことまでしてもらっていたのだ。


「でも、それなら俺もです。千代さんには、まだ短い期間ですけどいっぱい助けてもらってますし。千代さん、俺こそありがとう。天叢雲に勝てたのも千代さんのおかげだよ」

「もったいなきお言葉、ありがとうございます」

「それに炎さんや俺は会ってないけど、部下の忍者さんの協力もあったしね。綾人さん、あちらにも後でお礼を言いに行かせてください」


 もちろんだとも、と綾人は返す。


(周りへの気遣いといえばいいのか、可愛がられるタイプだな。この子なら安心だ)

「では、今後の話をしようか。まず君にはまだしばらくここに住んでもらう」

「え」

「起きた時にも言ったが、君は重傷だ。少なくともあと二週間は静養してくれ」

「そんな、怪我を治療してもらっただけでも感謝してますよ」

「恩人にはこれくらいはしないと、こちらの気が治らないんだ。まぁここは千代の顔も立ててやると言う意味も含めて、こちらのわがままを受け入れてほしい」

「わ、わかりました」

「ありがとう。それと、今後に関してなんだが……忍者を見てしまった以上はいくつか守ってもらいたいことがあるんだ」


 そう言って綾人は指を立てながら説明をする。


 一つ、忍者のことは他者に口外してはならない。協力関係のある場所においてはその限りではないが、無関係の第三者に話すと命が狙われる。

 二つ、妖魔のことを同一の理由により話してはならない。

 三つ、緊急時に協力要請をかける際には、参加すること。その際にかかる費用諸々は依頼者側である高垣家の負担とする。


「と、まぁ大まかにはこの三つだね」

「まぁ最初の二つは今まで通りだから問題ないですね。三つ目の方は……」

「恥ずかしい話だが、こちらの都合だ。炎から聞いた話すごい鋼鉄兵器の使い手ということだからね。実績的にも随分と長い間戦ってきているようだし、逃す手はないからね」


 本当に申し訳ないけど、と再び綾人は苦笑する。

 引退しているとはいえ、一つの部隊を治めていた人間が下げる頭の重さは並大抵のものではない。


(正直、断るのは不可能な状況だな。懸念するべきはどれだけの頻度で呼ばれるかなんだけど、もう一つ)


 チラリ、と自分の横にいる千代を見る。

 可愛らしく小首を傾げているが、もともと彼女が忍者であることを抜けようとしたことがキッカケでできた縁だ。

 どう答えたものか、と考えていると、考えを見透かしているかのように千代から「私のことでしたら大丈夫ですよ」と言われる。


「天叢雲の時にも伝えたと思いますが……私は、貴方のためでしたらこの命をかける覚悟ができておりますので」

「千代さん……」

「お熱いねぇ。まぁその方が都合いいんだけど」


 と、綾人が聞き逃せない言葉を呟いた。

 どういうことだ、と龍臥が聞こうとする前に答えが返ってきた。


「千代の処遇は、君専属の忍者として派遣することになった」

「はいぃ!? え、え? ど、どういうこと?」

「仮にも一度ウチから抜けようとしたわけだからね。そのまま戻すわけには行かないんだ。扱いは龍臥くんに一任するが、どのように扱ってくれても構わない」


 最後の一言が龍臥の琴線に触れた。


「……綾人さん、娘の扱い方に対してその言い方は」

「主人様」


 綾人の言い方に怒りを覚え、喰ってかかろうとするも、千代から静止される。

 自分を想ってくれるだけで嬉しいのです、と言うように。


「千代さん……でもさ」

「龍臥くん、君は千代のことを、本当に大事に想ってくれているんだね。父親として嬉しく思う。だからこそ娘のことを、よろしくお願いします」


 深々と、先ほどよりも深く綾人は頭を下げる。

 先ほどの長としてのようにではなく、一人の父親として。

 そんな彼の姿を見て龍臥は呆気にとられ、うまく言葉に表すことができなかった。


「……わかりました。納得はしませんが、理解はしました」

「そう言ってもらえると、こちらとしても助かる。というわけだ、千代。彼の身の回りの世話を頼んだ」

「確かに受諾しました父様」


 綾人は千代の快諾を見て満足そうに頷き、龍臥と二人だけで話したいからと出て行くように命じる。

 千代は最後に「何かありましたらいつでもお呼びください」と龍臥に告げ、名残惜しそうに部屋を出て行った。


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