表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
抜忍クノイチと鋼鉄戦士  作者: 法相
最終決戦
41/47

奮起

 年内最後の更新になります。

 読者の皆様、よいお年を!

 天叢雲は苛立っていた。

 目前にいる二人を同時に相手取るのはいい、正面切って視界に映っている極上の相手であり餌だから。

 だが、ダメージにならないような攻撃をしてくる攻撃は非常に鬱陶しさを感じ始めていた。

 直撃したところで痛手ではないが、当たればほんの一瞬だけとはいえ、思考を揺らされる。

 人間で言えば蚊が常に耳元で飛んでいるようなもので、集中力を乱されるのも無理はない。

 そして余計に苛立たせているのは、この激戦の中をサポートできるような強者がこの場にはいないことだった。


(最初の不意打ちは私の思考外をつくためのものであった、だから仕方ない。けれど、こんな芸当ができるのにここにいないのは勿体無い! この場にいてくれたらもっと素晴らしい戦になっただろうに! 悲しみを覚えてしまう)


 苛立ちと期待と失望、落胆は同時に味わえる感情であると、天叢雲は学んだ。

 同時に、このまま続けば遠からず自分が勝利すると言うことを確信していた。

 天叢雲から見ても龍臥と炎は強者だ。

 他の妖魔では、いや天叢雲も怜奈と戦った頃の力であれば龍臥と炎の二人同時相手だと勝てなかっただろう。

 だが、今は違う。

 負の感情を栄養にする妖魔はその性質上、時が経てば経つほど強くなる。

 怜奈との傷を治すために動けなかった期間を含めて、今の天叢雲は長い間討伐されなかったことは龍臥たちにとっての不幸だ。

 天叢雲は妨害のことも計算に入れたその上で、なお自分の方が強者であり捕食者であることを理解している。

 炎は速さに優れているが、天叢雲に致命傷を与えるほどの一撃はない。

 龍臥は攻撃力に優れているが、その速さは炎に劣る。

 前回は彼の攻撃を受けたが、怜奈ほどではないと判断した。


(いや、もしかしたら私が強くなったから記憶の方が美化されたのかもしれませんね)


 そうであれば、それも素晴らしいことだと感じた。

 龍臥の後退に合わせて、何度目かの狙撃が飛んでくる。

 弾は当たらなかったが、やはり攻撃のタイミングを逸らされていた。


「ですが、それもこれまでですよ」


 踏み込みを先ほどまでよりも強く、羽根を羽ばたかせ加速し右腕のハサミは龍臥の頭を狙う。

 その一撃は回避できず頭の装甲を破壊し、龍臥の素顔が晒された。


「しまっ……!?」

「鳳くん!」

「その首をもらいますよ」


 伸ばし切った腕の角度をわずかにずらし、そのまま龍臥の首を斬り落とそうとーー


『抜剣!』


 した時だった。

 想定外の第三者の声が聞こえた。否、天叢雲はこの声を聞いたことがある。

 声の主は炎にも負けない速さの何かが二人の間に割り込み、天叢雲のハサミを止めた。

 天叢雲の思考が停止し、最初の不意打ちよりも長い隙が生まれた。


「主人様!」

「! おお!」


 胸部に衝撃が走り、ハサミのある腕は掴まれたままさらに伸びきりミチミチと音を立てる。

 そこへダメ押しと言わんばかりに龍臥が回り込み、関節部分へ拳を叩き込んだ。

 伸び切ったところへ本来動かない可動部への負荷は、龍臥の一撃がトドメとなりぶちりとちぎれた。

 何が起きたか一瞬理解ができなかったが、すぐに自分の腕が一つ失ったことを理解した天叢雲は驚愕した。


「……主人様の首を落とさせるものか、痴れ者が」


 直後に冷たい声が響き、追撃の一撃が加えられ大きく後ろへ飛ばされる天叢雲。

 着地し、視線を移せばそこには月明かりに照らされている銀狼を模した鋼鉄兵器を纏っている人物がいた。


「この声は、この間彼を仕留め損なった時の乱入者……!」

「鳳龍臥様付きのくノ一高垣千代、参る」


 龍臥に助けられ、知らない誰かのための戦いから離れたいと願っていた少女。

 だが、今は誰かではなく自分の守りたいもののために、立ち上がった千代がそこにいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ