家事万能くノ一
「ただいまー」
「おかえりなさいませ、龍臥さん。随分と時間がかかったようですがなにかあったのですか?」
「ちょっとね。理不尽なおっさんがキレて俺をぶん殴ったてきたから殴り返してた」
「なんと!?」
素直に驚く千代さん。なんだか小動物のようで可愛く見える。
「まぁでも目当てのものは買えたから。ほら新品の毛布と布団」
ふふふ、とちょっと悪そうに笑いながら千代さんに品物を見せる。
「おお! ほ、本当にこれで眠らせていただいてよろしいのですか?」
「もちろん」
「ありがとうございます! しかしアレですね、昨日は感じる余裕がなかったのですが……異性とこうやって一つ屋根の下で過ごすのは」
ぽ、と千代さんは顔を赤くさせる。昨日もだけどこの子もしかしてムッツリスケベかな?
とはいえ冷静に考えれば付き合ってもいない男女が一つ屋根の下に一緒にいる、というのは側から見れば健全な生活とは思えないだろう。
まぁ俺も思うことがないかどうかと言われればない、とは言い切れない。健全な男の子だし。
……今はそれは置いておくか。
「そういえば俺が出かけている間に片付けをするって言ってたけど……おぉ?」
素直に驚嘆の声を漏らす、
散々っぱら散らかしていた俺の部屋が広々とした空間を取り戻していた。
細かいところで言うならどうやったらこんなに絡まるの? っていうくらい絡んでいたコードが綺麗にまとめられていた。
床もチリすら見えない。俺が出て行ってここに戻るまで聴取の時間を含めても、二時間と少ししか経っていないのに。
「いかがでしょう?」
「すっげく綺麗になっててびっくりしてる。え、千代さん家事万能……」
「お褒めいただきありがとうございます。まぁ昨日も言いましたけども、部屋の方はこれよりひどいものを知っていますので、本当にそれに比べたら全然ましでした」
「千代さん」
「はい?」
ガシッと彼女の両手を掴み、まっすぐに見つめる。
「ふぁっ!?」
「これからもよろしくお願いします!」
「こ、こちらこそよろしくお願いしますでございまする!?」
若干バグってらっしゃるようだけど、改めて千代さんにいてもらうことにした。
いやはや、このクノイチ家事万能とか最高かよ。可能な限りいてもらいたいわほんとに。