邂逅2
目的は達成できたかは知りませんが、とだけこぼす。
「どうやって人間を妖魔にしたんだか……」
「それは二つ目の質問ですか?」
「違うけど。どういう経緯であれ人が妖魔になるって事実は知ったわけだし」
「おやおや、そう言われると逆に言いたくなってしまいますねぇ。まぁ簡単な話で、私たち妖魔と同じものを摂取してもらっただけですよ」
同じもの。
妖魔はそもそもどういう風に生まれるのかわかっていないから、同じものと言われても全く心当たりがない。強いて言えば人間を食べると言うことが共通するくらいだろうか。
けれどもそれは弱肉強食、ただの自然の摂理で済まされることだし人間が人肉を食べるとクルーエル病だったかメニエール病だかなんだったか……名前は忘れたけど害がある。
「おや、考えていますね。そのようにすぐに考えるのはいい傾向です。花丸をあげましょう」
「いらねぇよ」
「ふふふ。そうですか。ですが簡単にいいますとですね、私たち妖魔は人間の負の感情というものを主な餌としています」
「……はぁ? 馬鹿を言ってくれるじゃねえか」
感情というものは形で存在する物ではない。目には見えない以上食べるとかそういうことは不可能だ。
俺のそんな思考を読んだのか「存外そうでもないですよ」と天叢雲は微笑んだ。
「人間も酸素を吸うために息を吸うでしょう? それと一緒です。人間の目には見えていないだけで……私たちはそれを食物にもしている。その負の感情がより黒く、醜く、臓腑が煮えたぎるほどよい。彼女にはそれをトッピングしたものを体内に少しずつ摂取してもらいました」
にわかには信じがたい話だが、嘘をついている様子はない。俺にはわからないだけかもしれないが……生態系やらがわからないうちは話半分で聞いておく。
「さて、彼女に関してはこんなところですかね。もう一つの質問というのはなんでしょうか?」
「……お前は昔殺した人間のことを覚えているか」
「殺した人間ですか? 全員はさすがに覚えていませんが……」
それが何か? と怪訝そうに首を傾げる。
「質問を加えよう。お前はこの公園で殺した人間を覚えているか……クワガタ女」
「! なぜ私の妖魔としての姿のことを知っているのですか? 貴方とは初対面のはずですが」
「ああ。俺もお前の『今の姿』とは初対面だよ。けどよ……あのサソリ女からお前の妖魔としての姿は聞いてたし、その前から俺は妖魔としてのお前は知っていた」
耳のイヤリングを指で弾き、変身をして零式を装備する。
天叢雲は零式を纏った俺の姿を見て驚愕したような顔を見せた。
「その装甲兵器は……」
「覚えてるようだな。テメェが殺した人間の武装を」
「ええ、ええ。ええ! 覚えていますとも! あの日あの時、私を殺しかけたあの強敵のことを!」
「覚えてるなら話は早い。テメェは……確実にぶっ殺す!!!!!!!!」
腹の底から怒りの声を出し、俺は天叢雲を殺すために刃を向けた。