下克上
母が入院し退院し、世話がほとんどワイにきて辛い。
介護職とか医療従事者の人たちほんますごい
山下の言葉を皮切りに天井と床からサソリのような妖魔の姿が出現し、交戦が開始された。
そして同時刻。葉山邸とは2キロほど離れた廃ビル。
屋上にて炎は目の前にいる相手に対してため息をつきながら、睨み付ける。
「まったく、僕は『三人』で葉山邸での構えをするよう君に伝えたはずなんだけどね、小山」
「……」
咎める炎に対し、小山は不遜な目つきで気怠げに首を回し無言で返した。
「どういう腹つもりか知らないけど、すぐに向かえ。一人ここにいる理由も後できっちり聞く」
「……は、笑わせますね、小娘が」
「小娘は事実だから否定しないけど」
雰囲気が違う、というのは見ればわかる。
解せないのは普段の彼女ではこんなことをしない。真面目に熱心に、文句を言いつつも仕事をしっかりこなす優秀な忍者だ。
しかし今は忍者としての服装ではなく、海のように淡い蒼色のドレスを着用しているのも炎の思考に淀みを与える。今、小山美希という人間に何が起きているのか。
「御頭様、貴女はいいですよね。血筋にも才能にも、容姿にも恵まれていて」
「急になんの話だ」
「これは大事な話ですよ? 山田と山下も貴女を上司として信を置いていますから」
「君は僕を認めていない、っていうことかな」
「いいえ。違いますよ。貴女の『実力』は確かなものです。私たち三人の誰もが年下である御頭様に及ばない。千代もそうですが……貴女たち姉妹は私には眩しすぎる」
「結論をいいなよ。無駄に時間を引き伸ばすのは君は好かなかったはずだけど」
「そうですね。ではお言葉に甘えて……目障りだから殺させてもらうわよ、ガキ」
小谷の服装がドレスから一瞬にして忍者服にへ変わる。しかしそれは普段彼女が使用しているものではなく、炎と千代のように露出が過多なものへと。
本来であればこの形状の忍び服は一般の忍者が着ることは許されない。
「調子に乗ってるなぁ……殺す気でくるなら殺されても文句は言うなよ?」
炎の気配も刹那の間にガラリと変わる。
互いにクナイを持ち、殺し合いが始まった。