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19.転生の真実②

あくまで野球メイン恋愛サブなので、転生絡みは補足的なアレだと思います。

 ブロック大会2回戦、都立石神高校との一戦は、引き続き都大二高グラウンドで行われる事となった。

 石神高校は良くも悪くも普通の都立高校。コンスタントに1勝する力はあるが、その程度の高校でしかない。

 先発の堂上は初回こそ制球を乱したものの、2回以降は無安打で抑えて6回1失点。打線も機能して11―1の6回コールド勝ちとなった。


 試合後、第三の転生者――相沢に呼び出されると、例によってコンビニのイートインに舞台を移した。


「さて、始めようか」


 相沢はどこからともなくA4サイズの紙を取り出した。

 相変わらず準備が良い。この姿勢は見習う必要があるかもしれない。


「お前の狙い、周回数、そして転生知識の出どころ。洗いざらい吐いてもらうぞ」

「そうだね。先ずは周回数から答えようかな」


 相沢はそう言って間を取ると、少しだけ真剣な表情を見せた。


「……正直、分からない」

「んだよ、周回中の記憶は曖昧になるのか?」

「違うよ。転生しすぎて、もう周回数なんて数えてないんだ。まあ……10は確実に超えてると思う」


 その瞬間、俺は言葉を失ってしまった。

 彼は高校生として、30年以上は過ごしている事になる。

 その過程で、東京中の強豪校と、何十回も試合をこなしているのだろう。


 俺のスプリットを打てたのも納得だ。

 関越一高と八玉学園は春に当たった事があるし、練習試合も何度か行っていた。

 なにより、相沢は高校球児だった時間が凄まじく長い。体の使い方も熟知しているのだろう。


「……そんだけ転生してりゃ、転生知識も付いてくるって訳か」

「それもそうだけど、他にも根拠があるんだよね」


 相沢はA4用紙を2枚差し出してきた。


「先ずは転生者の基本条件から。それを熟読した上で、2枚目を読んで欲しい」


【転生者の基本条件】

・1994年度生まれ

・東京の野球界隈に縁がある

・都大三高の選手ではない

・高校時代に未練を残して亡くなっている


 随分と条件に偏りがあるな。

 特に3番目の「都大三高の選手ではない」はピンポイント過ぎるだろう。


「2枚目は転生者の等級ね」

「転生者にランクまであるのかよ」

「うん。ちなみに、俺達は二人ともCランクだと思うよ」


 普通の流れなら、俺はSSSランクで無双するんじゃないのか?

 そんな事を思いながら、2枚目に目を通した。


【転生者の等級】

Cランク……満40歳未満で死亡して、満15歳の自分に死に戻りする転生者。0〜4人。

Bランク……満40歳以上で死亡している転生者。但し、他の転生者に刺激されるまで以前の記憶が蘇らない。0〜4人。

Aランク……条件はCと同じで、かつ転生に関する全ての知識が与えられる。但し周回はできない。1人。


 Aランクが実質的な転生者のボスという事か。

 BとCは大差ない、というかCのほうが有利まである。


「つまり、お前は周回の過程で、Aランクの転生者と何度か接触して知識を得たと」

「正解。だからほぼ全てを知ってるけど、毎回変わる転生者の内訳だけは分からないんだ」


 なるほどな。

 尤も、ところどころ嘘をついている可能性もあるので、あくまで話半分程度と捉えておこう。


「最後に俺の目的だったね。その前に、先週言った『周回を終えた元転生者の動き』は覚えてるかな」

「ああ、確か正史通りに動くんだったか」

「そう。あくまでも、1周目で見てきた世界こそが史実――柏原くん風に言うなら正史であり、今の俺達はパラレルワールドで自己満足の茶番を繰り広げているに過ぎないんだ」


 そういう言い方をされると、少しだけ心臓が痛むというか、虚しい気持ちになるな。

 俺は人生をやり直せたが、それは正しい歴史ではない。結局、あるべき俺の姿というのは、関越一高に入学した柏原竜也なのだろう。


「ただし――史実を上書きする方法が一つだけある」


 相沢はそう言って、少しだけ笑みを浮かべた。


「俺は十数回、いや数十回は転生して、いろんな転生者を――いろんな世界を見てきた。俺みたいに下級生として甲子園に出場した人間や、人生をやり直してプロに行った人間もいた。

 けど、その条件だけは一度も達成されなかった。何十人もの転生者が、その目標を前に散っていった。それが――」


 相沢は少しだけ間を取ると、


「都大三高の甲子園春夏連覇阻止。唯一、この方法だけが史実を上書きする条件であり、転生者に与えられた使命なんだ」


 そう続けて、再び真剣な表情を見せた。


「都大三高の春夏連覇阻止……?」

「柏原くんも覚えているでしょ? 俺達の世代の都大三高はあまりにも強すぎて、世間も完全に白けてたよね」


 はっきりと覚えている。

 木田や木更津を擁する都大三高は強すぎた。西日本最強の大阪王蔭すらも、野球とは思えない無残なスコアで大敗した。

 神宮大会や春の関東大会で土を付けた高校はあったが、甲子園の舞台では見事に10倍返しで公開処刑されていた。


「ここまで言えば分かるよね。俺の目的は都大三高の春夏連覇を阻止する事。そして、同じ転生者である柏原くんにも協力して欲しい」


 相沢は語り終えると、何時ものニコニコと爽やかな表情を浮かべた。


「言っとくけど、転校しろって話ならお断りだぞ」

「あはは、頼みたいのは山々だけど、柏原くんの頭じゃ二高には入れないでしょ?」


 ぶっ飛ばすぞ、と言いたい所だが、事実なので否定はしない。

 何はともあれ、ここまで辻褄は合っている。都大三高の春夏連覇阻止も避けては通れない道なので、断る理由もないだろう。


「ま、こっちに利益があるなら協力してもいいけどな」

「ありがとう、必ず後悔はさせないから。じゃ、具体的な内容はまた来週にしよう」


 そんな感じで話を締めると、何時ものようにA4用紙を受け取った。


【相沢メモ⑤転生者の基本条件】

・1994年度生まれ

・東京の野球界隈に縁がある

・都大三高の選手ではない

・高校時代に未練を残して亡くなっている


【相沢メモ⑥転生者の等級】

Cランク……満40歳未満で死亡して、満15歳の自分に死に戻りする転生者。0〜4人。

Bランク……満40歳以上で死亡している転生者。但し、他の転生者に刺激されるまで以前の記憶が蘇らない。0〜4人。

Aランク……条件はCと同じで、かつ転生に関する全ての知識が与えられる。但し周回はできない。1人。


【相沢メモ⑦転生者の使命】

2年後に控える都大三高の春夏連覇を阻止する事。

条件を達成する事で、今の世界線が史実として上書きされる。



NEXT→12月6日(日)20時頃。

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