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17.転生の真実①

転生に関する設定については後書きにも纏めておくので、適当に読み流しちゃってもたぶん問題ありません。

 俺と相沢は、都大二高Gの近くにある、コンビニのイートインに身を移した。


「言うほど此処なら都合いいか?」

「まあまあ、細かい事は気にしない気にしない」


 相沢はそう言って天然水に口を付ける。

 ついてきたは良いものの、正直コイツは胡散臭い。

 あまり話を真に受けないほうか良いだろう。


「で、何から聞きたい? 可能な限り答えるよ」

「じゃあ他に転生者がいるなら、誰か教えてくれ」

「あはは、ごめんね。それだけは分からないんだ」


 相沢がそう答えた瞬間、俺の興味は一気に薄れていった。

 高校野球で勝ち続けるにおいて、必要な情報は転生者の所在だけだ。他の情報に価値はない。


「けど人数は分かるよ。全部で5人、つまり後3人はいる事になるね」


 つまり後2人か。

 この発言が演技で無ければ、相沢は恵に気付いていない事になる。

 3人の共通点から察するに、残りの2人も高校野球絡みの人間なのだろう。


「……もう用は無いって顔してるね」

「そりゃあな。聞きたいのはそれだけだし、ぶっちゃけ信用できねえ」

「なるほど。じゃあ信用してもらう為にも、もっと俺と転生の事を知ってもらわないとね」


 相沢はそう言って1枚のA4用紙を渡してきた。


「何これ」

「史実における俺の一生。まあゆっくり読んでよ」


 つまり、相沢が転生に至る迄の経緯か。

 要約すると以下の通りだ。


 正史の相沢は、都大二高ではなく八玉学園に入学した。

 彼は打撃には自信があったものの、致命的な送球難があり、守備を重視する八玉学園ではレギュラーになれずに終わった。


 高校を卒業した相沢は、やがて高校時代から付き合っていた恋人と結婚した。

 しかし、相沢は職場の女性と浮気してしまい、それが原因かは分からないが、就寝中に嫁に刺されて死んだ。


「……クソ野郎じゃねえか」


 読み終えた俺は、呆れ気味に息を漏らした。


「ま、若気の至りって事で」

「はいはい。で、転生したから打撃重視の都大二高に進路を変えたと」


 俺がそう続けると、相沢はニヤリと微笑む。


「いいや、俺は再び八玉学園に入学した」


 その瞬間、俺は思わず目を丸めてしまった。

 今、此処にいる相沢は、紛れも無く都大二高の選手だ。

 つまり――彼は最低でも2回は人生をやり直している事になる。


「まさか……周回できるのか?」

「その通り。ただし、柏原くんはたぶん出来ないし、俺も今回が最後になりそうだけどね」


 俺には出来ない……か。

 まあいい、話を聞いてみよう。


「再び八玉学園に入学した俺は、一塁手として入学した上で、送球の改善にも努めて、最終的には三塁手としてレギュラーになった。

 この間、柏原くんのように、史実とは進路を変えた転生者にも接触した」


 どうでもいいけど急に説明口調になったな。

 準備の良さと言い、これが初めてではないのだろう。


「卒業後、やがて同じ相手と結婚したが、俺は浮気しなかった。しかし――同じ時間と場所で、嫁に刺されて死んだ」

「浮気しなかったのに殺されたのかよ……」

「なんてことはないよ。本当は嫁も浮気していて、俺は邪魔になったから殺されたんだ」


 そこまで語ると、相沢は再び笑みを見せた。


「そして俺はまた転生していた。一方で、二周目で接触した転生者は、史実と同じ高校に入学――つまり、転生前の状態に戻っていた」

「進路を変えたら再転生できないって事か」

「近いけどちょっと違うね。まあこれを読んでよ」


 相沢はそう言って、2枚の紙を差し出した。


【転生の仕組み】

転生対象者には、キーとなる【日時】【死因】【場所】が設定されていて、三条件が完璧に合致すると転生が起きる。

この条件は個人毎に固定されていて、合致すれば何度でも転生が発生する。


【歴史の収束について】

歴史は修正を嫌う為、些細な変化を与えた程度では、史実と同じように収束される。

逆に言えば、根本的な解決に向けて抗った事柄に関しては、少なからず歴史に変化が起きる。


「つまり俺は『浮気した嫁に殺される』という未来に対して、見当違いの抗い方をしたから、同じ末路を辿る事になった。

 そしてもう一人の転生者は、恐らく【死因】の解決に向けて抗ったから、同じ末路を辿らなかった」


 相沢はそこまで語ると、再び天然水に口を付けた。


「柏原くんの死因は知らないけど、進路変更は未来を大きく変えるからね。仮に【死因】【場所】までは意図的に狙えても【日時】がズレて再転生できない可能性がある。だから止めたほうがいいよ」


 なるほどな。俺は過労死という未来を変える為に、進路そのものを変えている。

 富士谷高校卒として、再び伊織と出会い、同じ会社に就職する事は可能だが、それだと周りからの扱いが変化して、死期が前後する恐れがあるのだろう。


「じゃ、今日はここまでにしよう」

「まて。敵である俺に、ここまでサービスする狙いは何だ? それと、お前は一体……」

「ふふ、興味は持ってくれたみたいだね。けど一日で覚えるのは難しいし、続きは今度にしようよ」


 相沢はそう言って、再びA4用紙を手渡してきた。


「今日のまとめ。言いそびれた補足も付いてるから、よく読んでおいてね」

「お前、本当に準備いいよな……」

「その理由も何れ分かるさ。じゃ、また来週会おう」

【相沢メモ①転生者の人数について】

一周につき5人。6人目以降の転生者は順番待ちとなる。

尚、この順番については、必ずしも死亡した年齢順という訳ではない。

(例えば、20歳で死亡した人間より先に、30歳で死亡した人間が転生する場合もある)


【相沢メモ②転生の仕組み】

転生対象者には、キーとなる【日時】【死因】【場所】が設定されていて、三条件が完璧に合致すると転生が起きる。

この条件は個人毎に固定されていて、合致すれば何度でも転生が発生する。


【相沢メモ③歴史の収束について】

歴史は修正を嫌う為、些細な変化を与えた程度では、史実と同じように収束される。

逆に言えは、根本的な解決に向けて抗った事柄に関しては、少なからず歴史に変化が起きる。


【相沢メモ④人生周回を終えた元転生者について】

転生期間に行った行動は全て無かった事になり、干渉しない限りは史実通りの動きをする。

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― 新着の感想 ―
[一言] 転生者の数は1周につき5人っていうルールを相沢がどうやって知ったかにもよるけど、 恵の存在に気づいてないなら実は6人って可能性もあるな・・・ 恵も恵でお父さんがいるなら極端な進路変更も無いだ…
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