27.肘の状態
お見舞いを終えた俺達は、東海道新幹線で新大阪に戻っていた。
早起きで疲れた琴穂は爆睡中。夏美も黙々と携帯を弄っている。
俺もワンセグで試合を眺めながら、ボケーっとした表情を浮かべていた。
「メール来た。さっきはごめん、来てくれて嬉しかったって」
「ふーん。てか病院って携帯使えんの?」
「あー……。誰かに打って貰ったんじゃね、知らんけど」
夏美からの報告に、俺は顔も向けず口だけで答える。
恵も落ち着けたようで良かった。恨まれたまま大会に戻るのは流石に気が重い。
部員にも元気だったと報告して、改めて士気を高めよう。
さて、日帰り弾丸のお見舞いだったが、兵庫に戻る頃には夕方になっていた。
結局、この日は俺だけ練習に参加できず。相変わらず肘の調子が悪いので、誤魔化すにはちょうど良い休暇になったが。
尚、本日の結果は下記の通りである。
【8日目】
(東東京)関越一高15-7浦環学院(埼玉)
(大阪)大阪王蔭5-2作誠学院(栃木)
(秋田)能城商業0-4新潟明誠(新潟)
(富山)真奏2-11都大蔵王(山形)
関越一高は打線が爆発して浦環学院に圧勝。
優勝候補の大阪王蔭も、栃木の名門を無難に下している。
新潟明誠は言うまでもなくナックラーが完封、真奏は2試合連続のミラクルとはならなかった。
翌日の大会9日目、この日は智殿和歌山の投手陣を想定して、140キロ前後の直球を中心に撃ち込んだ。
また、本日は俺も投球練習に参加する。これ以上は流石に誤魔化しきれない。
という事で、久々に全力の投球を行う事になった。
「っし、いい球きてるぜ」
何も知らない近藤は、俺の速球を手放しに称賛している。
ただ、やはり肘が痛むな。我慢できない程ではないけど、このまま投げ続けるとヤバそうなのは何となく分かる。
投球の質には影響なさそうなので、本格的に「プロ野球選手と甲子園優勝どっちを取るか」という選択になってきそうだ。
「うん、いいんじゃないか」
「状態はいいと思います」
「じゃあ次で3イニングくらい投げとくか?」
「いや、準々以降の事を考えたら、次も出来れば避けたいっすね」
「……そうか」
この投球を見た畦上監督も、口では納得している様子だった。
しかし、表情は釈然としない。俺の肘の状態に勘付いているのだろうか。
投球に違和感があるのか。或いは登板回避が不自然なのか。
恐らく両方だろうけど、どのみち大会も後1週間で終わりを告げる。
それまで誤魔化せれば問題ない。あと少しの辛抱だと思ってシラを切り続けよう。
【9日目】
(大分)別所大豊明6-4智殿学園(奈良)
(静岡)常花橘1-8東山大韮崎(山梨)
(岩手)安比大附4-5x明秀義塾(高知)
■お知らせ
今まで3日以内の更新を心掛けていましたが、仕事の関係で今後は難しくなる可能性が出てきました。
まだ蓋を開けてみないと分からない部分も多いので何とも言えないですが、ご承知の程よろしくお願い致します。
詳細は活動報告にて記載。




