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【余談】夜のニュース

 2012年7月29日。

 富士谷が優勝を決めた日の夜、東京NXでは高校野球特番が組まれていた。

 

 リトルブルーボックスの「太陽の場所」のメロディーと共に、オープニングムービーが流れていく。

 やがて"サビ始まり"が終わり、提供の画面が表示されると、男女二人のキャスターが映し出された。


「こんばんは」

「こんばんは!」

「いや〜、今日も暑かったですねぇ」

「そうですねー。気温もそうなんですけど、今日の試合……部屋で見てても熱気が伝わってくるくらい凄くて!」

「分かります分かります。高校野球ってこんなに面白いんだ……って思わされる試合でしたもんねぇ」

「ええー。じゃあもう、早速やりましょうか!」

「はい……本日は、昨日の東東京大会に引き続き、西東京大会の決勝戦が行われました」

「甲子園春夏連覇を狙う都大三高と、西東京大会連覇を狙う都立富士谷高校。果たして、栄光の優勝旗は何方の手に渡ったのでしょうか。ダイジェストでご覧ください!」


 ここで映像が昼間の神宮に切り替わる。

 両校がホームを挟んで整列した後、投球練習を行う柏原の横顔が映し出された。


「富士谷高校の先発はエースの柏原。今日もキレのある球を武器に、都大三高の打者を寄せ付けません」


 奪三振の場面が幾つか流れ、堂前の投球シーンに切り替わる。


「一方、都大三高の先発、堂前も圧巻のピッチング。5回までに9三振を奪う好投を披露し、0対0のまま試合を折り返します」


 堂前の奪三振シーンも幾つか流れると、場面は富士谷の攻撃へと移っていった。


「試合が動いたのは7回。富士谷は連打で一二塁のチャンスを作ると、ここで迎える打者は柏原!」


 7回表、柏原のヒットシーン。

 ただ、センター篠原、セカンド町田の好連携により、ホームへ際どい球が返されていく。


「……惜しくも都大三高の好プレーに阻まれ、得点とはなりませんでした」


 タッチアウトで歓声が上がる。

 画面は7回裏、木田がツーベースを打つシーンに切り替わった。


「その裏、都大三高は無死二塁のチャンスを作ると……7回途中からマウンドに上がっている宇治原がこの当たり! 際どい打球でしたが、これが値千金のタイムリーヒットとなり、都大三高が1点をリードします」


 続けて宇治原のポテンヒット。

 木田の鮮やかなホームインの後、8回まで得点が埋まったスコアボードを挟んでから、走者を二人置いて「さくらんぼ」が演奏されるシーンに切り替わった。


「後が無い富士谷高校でしたが、セーフティバントとデッドボールで二死一二塁とします。ここで迎える打者は今日先発の柏原。デッドボールの判定が取り消された、その直後の球でした」


 ここで大歓声が沸き上がり、打球はレフト線ギリギリへ。

 臨時代走の津上がホームインした後、9回表の「2」がアップで表示された。


「都大三高も諦めません。木田のソロアーチで即座に追いつくと……!」


 木田のソロアーチ、からの三連打で塁が埋まると、柏原と荻野がアップで映る。


「更に連打で無死満塁とし、迎える打者は今日8番の荻野! しかし、ここは柏原に軍配が上がり、トリプルプレーで富士谷がピンチを凌ぎます!」


 続けて問題のシーン、スクイズ失敗でのトリプルプレー。

 同点のスコアボードが表示された後、10回以降は両投手がピンチを凌ぐシーンがダイジェスト形式で放送された。


「14回表、堂上のツーベースでチャンスを作ると……ここで迎える打者は今日好投を続けていた柏原!」


 ここで宇治原と柏原がアップで映される。

 宇治原が球を放ると、柏原は鮮やかな流し打ちを披露した。


「これが決勝点となるライトへのタイムリーヒット! 都大三高は満塁のチャンスを作るも反撃及ばず、見事に富士谷が西東京大会連覇を果たしました!」 


 木田の空振り三振、宇治原のセンターフライで試合終了。

 最後に畦上と柏原の優勝インタビューが一部切り抜きで放送された。


「前任の瀬川さんが育てた選手に勝たせてもらった……とかしか言いようがない試合でした。良い状態でバトンを渡してくれた瀬川さんと、頑張ってくれた選手には感謝しかありません」

「今大会は苦しい展開も多かったですし、優勝できた事も嬉しいんですけど……何よりも、自分は西東京で野球ができて本当に良かったと思っています」


 ここで、映像はスタジオに戻ってきた。


「という事で……都立富士谷高校の皆さん、おめでとうございます!」

「いや〜、いい試合でしたね。実は僕、現地で東京高野連の方とお話したんですけど、今年は特にレベルが高かったって仰ってましたよ」

「やっぱそうですよね! 私、165キロなんて初めて見ましたもん!」

「ですねぇ。その宇治原くんを攻略した富士谷もお見事でした」

「……さて、東京NXでは一回戦からダイジェストを放送してきましたが、それも今日で最後になります」

「レベルが高かった東西東京大会。甲子園での活躍にも期待が掛かりますね」

「それでは、エンディングムービーと共にお別れしましょう!」

「では、また来年!」


 男女のアナウンサーが手を振ると、今大会のPV風エンディングムービーが始まった。

 メロディーは太陽の場所。これは今年の東京NX高校野球のテーマソングであり、試合中継の間もCMの度に流れていた。


 中里(福生)のピッチング、吉原(佼呈学園)のピッチャー返し、宮城(国修舘)のギリギリ届かなかったセンターフライなど、神宮球場での名場面を中心に編集されている。

 東京NXは1回戦からダイジェスト放送はしているものの、リアルタイムで中継しているのは開幕試合と準々決勝以降のみ。

 地方球場の素材が足りないのは仕方ない部分もあった。


 明神大仲野八玉の猛打と乱守、比野と都大亀ヶ丘のナイターになった投手戦と、場面が次々と切り替わっていく。

 準決勝の相沢(都大二)の同点ツーランや、力投を続けるも力尽きる勝吉(都大亀ヶ丘)は、なんだか画になっているようにも見えた。


 やがて舞台は決勝となり、宇治原の165キロや木田の同点アーチ、柏原の投打における活躍等が、テンポの良いサビに合わせて流れていく。

 最後は野本のファインプレー。そしてマウンドに集まる富士谷ナインがアップで映り、東京NXの高校野球特番は終了した。


・余談「東京の高校野球といえば……」

高校野球特番といえば「熱闘甲子園」ですが、東京では「JCOM」と「東京MX」も取り上げています。

2012年の時点ではJCOM高校野球の放送地域が少なく、開幕ゲームと準々決勝以降を地上波で放送していた東京MXが一般的でした。


しかし、2017年から2018年あたりで勢力が入れ替わります。

東京MXが準決勝からの放送になった一方、JCOM高校野球は東京全域に広がった他、2020年からはバーチャル高校野球への映像提供も開始し、東京の高校野球といえばJCOMという風潮になりました。 


たぶん閑話は以上となります。

最終章は7月8日、西東京大会の開幕と共にスタートしますので、ご承知の程よろしくお願いします。

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