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100.小休憩

富士谷000 00=0

都大三000 00=0

【富】柏原―近藤

【都】堂前―木更津

「ットライーク! バッターアウト!」


 5回裏、二死無塁。

 8番の荻野を見逃し三振で打ち取り、この回は三者三振で切り抜けた。

 最後は151キロのストレート。暑さで汗こそ止まらないが、球速が落ちる気配はない。


「ナイピッチ竜也」

「調子良すぎっしょ〜」

「やっぱベンチに彼女が居るからか!? くそー、俺にも彼女が居ればホームランの1本くらい……」

「陽ちゃんには無理っす。二重の意味で」

「あぁん!?」


 内野陣に励まされながら、俺は三塁側のベンチに引いていく。

 取り敢えず前半戦はプラン通り。出来れば先制もしたかったが、堂前から点が取れないのは想定内。

 後は良いところで堂前に打順が回れば、ワンチャン代打での交代も期待できる。


 ちょうど6回裏の攻撃は堂前から。

 最速で交代するならこのタイミングだが、果たして三高はどう出てくるか――。


「お、宇治原だ」

「相変わらず音やべぇ」


 そう思ったのも束の間、ブルペンでは宇治原が投球練習を開始していた。

 5回裏から始めていたのだろうか。既に捕手を座らせて投げ込んでいる。

 グラウンド整備間は演奏が無いだけに、心地良いミットの音が響き渡っていた。


 やはりというべきか、三高サイドも継投を視野に入れているようだ。

 163キロ投げる投手が居れば当然か。持て余す方が勿体無いまである。


「正直どっちの方が楽かな?」

「堂前だろ! あんな速い球打てねーって!」

「けど宇治原さんは高低アバウトっすからね。いつか甘い球は来ますよ」

「宇治原くんの方が四死球は見込めそう」


 選手達の意見は賛否両論だ。

 精密機械と読心術の合せ技は凶悪だが、宇治原の1マイルはシンプルに速過ぎる。

 ただ、やはり欠陥があるという部分で、個人的には宇治原の登板に期待したかった。


「竜也っ」

「お、どうした」


 ふと、そう声を掛けてきたのは琴穂である。

 帽子を被った姿もクソ可愛い。じゃなくて――何か用だろうか。


「疲れてない? だいじょーぶっ?」


 琴穂は少し心配そうに俺を見つめてきた。

 うーん、この天使。可愛いし気遣いもできるし、控え目に言っても理想的な記録員だな。


「余裕」

「そっか! 三振のペース早いから大丈夫かな〜って!」

「そんなに多い?」

「もう8個だよっ」


 どうやら5回を終えた時点で、既に8奪三振を記録していたようだ。

 相手は全試合20得点超の強力打線。そう考えると、自分の出来も中々に凄まじい。


「ちなみに堂前は?」

「9個!」

「少しペース落ちたな。それでも凄い数だけど」


 一方、堂前は5回を終えて9奪三振。

 3回終了時点で7奪三振だったので、2巡目に入り多少は当たるようになってきた。

 ただ、相変わらずクリーンヒットはゼロ。攻略の糸口は掴めていない。


 この堂前と宇治原をどう攻略するか。

 堂前が続投するなら、やはり奇跡の一発に賭けるか、球威が落ちた所で畳み掛けるのが理想的だ。

 140キロ前後まで落ちればだいぶ楽になる。握力が落ちれば変化球の精度も下がるだろう。


 宇治原なら四死球で走者を貯めて、甘い球をコンパクトに打ち返したい。

 特に彼の場合、高低の制球がアバウトなので、浮いた甘い球は何処かで必ず投げてくる。

 この浮いた球を叩けるかが、宇治原攻略における大きなキーポイントだ。


 逆に守備に関しては……今までとやる事は変わらない。

 木田以外は出塁させない。それでいて、木田をシングルに留めて得点の芽を潰していく。


「お、整備終わりそう」

「……礼しに行くか」

「がんばっ」


 そんな事を考えている内に、5回終了のグラウンド整備が終わろうとしていた。

 この中断で流れがどう変わるか。先ずは富士谷の攻撃、絶望の下位打線から試合が再開される。

富士谷000 00=0

都大三000 00=0

【富】柏原―近藤

【都】堂前―木更津


【重要】一時休載のお知らせ

大変申し訳ないのですが、一週間ほど休暇を頂けたらと思います。

次回の更新は2月10〜12日あたりの予定です。理由については活動日誌の方に記載します。

ご理解とご協力の程、よろしくお願いします。

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