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24.明八四天王参上

「待たせたな柏原!」

「うわぁ本当に来たよ……」


 第2試合も終盤に差し掛かった頃、俺達は外で軽く体を動かしていると、紫の帽子を被った選手が絡んできた。

 胸には筆記体で「meijin」の文字。彼は明神大仲野八玉の主将・舞岡で、宣言通り明八四天王の紹介に来たようだ。


「お、なになに?」

「明八の主将じゃん」

「後ろに5人くらいいるぞ……」


 富士谷の選手達も舞岡に注目している。

 ゲームや漫画とは違い、現実では試合前に絡んでくる選手は非常に少ない。

 故に、この手の選手は注目を集めてしまうのだ。


「前置きはいいから、早く紹介しろって言いたそうだな!」

「ああ」


 早く帰って欲しいからな、と出掛かった言葉は何とか飲み込んだ。

 抵抗しても長引くだけなのは木田や土村で学習済み。ここは満足するまで語らせてご退場願おう。


「じゃ、遠慮なくやらせてもらうぜ。俺は主将にして明八四天王のリーダーを務める舞岡秀太。よろしくな!」

「そのリーダー必要??」


 先ずは舞岡が無難な紹介を披露する。

 彼は比較的普通の人間だ。明八四天王を自慢したがる以外に変な所はない。

 ちなみに選手としては俊足強打で、低めを掬い上げるバッティングに定評がある。


「んで、こっちが我らがデータ担当の奥村だ!」

「残念だったな諸君! たった今、此方で計算させて貰ったが……君達が勝てる可能性は39%だぜ!!」

「結構あるね??」


 やたらと電卓を叩いているのは奥村。

 体格が良く熱血武闘派っぽい容姿だけど、偏差値70超の明八でトップクラスの成績を誇る。

 選手としては強肩強打。足も速いが、正面の打球に弱くやらかしが多い。


「むむ、随分とポジティブだな! どうやら俺は君達を甘く見ていたようだ。43%に訂正させて頂くぜ!!」

「お、さんきゅ〜」

「まともに相手しなくていいから……。てか電卓でどんな計算してるんだよ」


 さりげなく電卓を覗こうとするも、奥村は咄嗟に隠してきた。

 絶対適当に叩いてるだけだろ。計算もクソもあったもんじゃないな。


「うーん、投げてみないと調子は分からないし、今日の試合はどうなるか分からないなぁ。柏原の調子も分からん」

「何も分からねーじゃねーか」

「後田は現代のソクラテスなのだよ」


 相変わらず何も分からないのは後田。

 彼は東京選抜にも選ばれた選手で、エースで6番と投打でチームの要を担っている。

 投手としては最速138キロのパワー系左腕。カーブとの緩急に対応できるかが鍵になる。


「クックック、随分と愉快な連中だな。この試合……少しは楽しめそうじゃないか」

「コイツは黒島な。かつては次期魔王候補として魔界を牛耳っていたんだが、現代に転生して甲子園を目指す事になったんだ」

「どんな設定だよ……」


 黒いマントを羽織った黒島は、右手で顔を隠しながら不気味に微笑んでいた。

 何かを拗らせているとしか思えない。これでも俺達より遥かに高学歴で、将来は偉い立場に出世するのだから世も末である。


「貴様らには封印されし第二の魔球も解禁して良いかもしれないな。尤も、エビルドライブを攻略できたらの話だが……」

「かっしー、流石の俺も魔球は打てねーんだけど」

「ただのスライダーだから安心しろ。てか練習試合で見たことあるだろ」

「クックック、あれを本気だと思わない事だな……」


 このエビルドライブだが、どうやらスライダーの事を指しているらしい。

 ちなみに第二の魔球はダークフォール、もといシンカーで、左打者には初回からガンガン使ってくる。

 だから微塵も封印されていないし、彼の発言は真に受けない方がいい。


「……」

「おっと、都築も忘れてもらっちゃ困るぜ。こいつは幼少期の事故で家族を失って以来、感情も失っちまったが実力は本物なんだ」

「そんな奴を茶番に巻き込むなよ……」


 ずっと虚空を見つめているのはファーストの都築。

 舞岡の説明通り、遥か昔に感情を失っているらしく、発言している所は誰も見た事がないらしい。

 選手としては例によって俊足強打。飛距離はチーム1を誇る。


「……」

「なになに、禁断の6人目は紹介しないのかって?」

「適当に翻訳するのやめろ。それ一歩間違えたらイジメだからな??」

「よし分かった、大サービスしようじゃないか!」


 舞岡は聞く耳を持たぬまま、意気揚々と話を進めていく。

 尚「四天王の意味知ってる?」という疑問については、今更なので言わない事にした。


「では紹介しよう! 禁断の6人目にして、明八四天王で最も恐ろしい男を……!」


 舞岡はそう言って最後の一人に視線を向ける。

 そして次の瞬間――。


「よーお柏原ァ! 久し振りだなァ!」


 小柄な選手が前に出ると、聞き覚えのある声が辺りに響いた。

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