22.ワンサイドの予感
都大二00=0
国修館00=0
【都】折坂―岩田
【国】草薙―清水
都大二高の先攻で始まった第2試合は、2回を終えた時点で0対0の同点となっていた。
お互いに2安打1四球で3残塁。ちょうど打順が一周りし、3回の攻防は1番打者から始まる。
2巡目に入った打線が何に狙いを定めるか、個人的に注目したい回だった。
「(スライダーは入らない。高めのストレートに絞って、際どい球はカットしていこう)」
3回表、都大二高の攻撃は左打ちの髙取から。
マウンドには左腕の草薙。彼は最速140キロの速球が武器で、直球と高速スライダーでガンガン押していくタイプだ。
ただ2回まで見た感じだと変化球は入らない。となると、狙いはストレートになると思うのだが……。
「おおおおおおおお!!」
「ナイバッチー!!」
髙取は3球目の速球を叩くと、センター前に落ちるシングルヒットとなった。
やはり狙いはストレート。球種が少ないと、決め球の調子が悪い時に打つ手がないな。
続く打者も左打者の折坂。バントの構えは見せずにバットを握っている。
彼は本来なら4番を打つ選手なので、強攻しても全く驚かない場面だった。
しかし――。
「(……俺も生きる!)」
「ピッチ!」
唐突にバットを寝かせると、三塁線の絶妙な場所に転がした。
三塁手よりは投手の方が近そうなバント。草薙は自分で拾って一塁に投げようとする。
ただ、左投手は一回転しないと投げられないので、その分だけ送球が遅れてしまった。
「セーフ!!」
セーフティーバントが決まって無死一二塁。
上手く行き過ぎな部分もあるが、都大二高が絶好のチャンスを演出した。
「お、ここで大ちゃんっすね。コイツは打ちますよ」
「大ちゃんとクズ男って呼び合う仲なんだっけ?」
「ですです。よく覚えてますね」
「ここまでアンフェアな仲も中々ないからな……」
怪盗少女の音色が響く中、3番の大浦大輝が左打席に入った。
彼はU-15日本代表のセカンドで、同期の津上も太鼓判を押している。
一応、左vs左ではあるけど……草薙の方が劣勢なのは明らかだった。
「ボール!」
「ボール、ツー!」
一球目、二球目は共に変化球が外れてボール。
国修館も直球狙いを警戒している……が、それでカウントを悪くしたら本末転倒だ。
次の一球はストライクが欲しい所。しかし……。
「ボール、スリー!」
またしても変化球が外れて、3ボールになってしまった。
こうなってくると、次はストレートで入れざるを得ない。
後は見逃してくれる事を願うだけである。
「俺ならフォア覚悟で変化球を続けますね。大ちゃんはスリーボールでも甘い球なら逃しませんから」
「あー……待たないタイプか。お前とは逆だな」
「ええ、俺は意外と待てる男っすからね」
津上と言葉を交わしていると、草薙はセットポジションから左腕を振り下ろした。
放たれた球は――真ん中のストレート。大浦は迷わずバットを出すと、心地よいバットの音が鳴り響いた。
「わあああああああああああああああああああああああああ!!」
「ほら、言ったでしょう」
「ビンゴだったな」
大歓声が巻き起こる中、捉えた打球は一塁手の頭上を越えていった。
ライト線への長打になりそうな当たり。大浦は一塁を蹴って二塁に向かっている。
二塁走者もホームに生還したが、一塁走者は三塁でストップした。
「ないばっち大浦ー!」
「二高に来てくれてありがとう!!」
大浦のタイムリーツーベースで二高が1点先制。
ただ、個人的な意見を言わせて貰うと、ノースリーから打ちに行くのは賛成できないな。
もし俺が大浦と対峙した時は、動くボールで打ち損じを狙っても面白いかもしれない。
「(常盤くんは出さないだろうし、もう少し打ったら石井くんか井川くんかな?)」
尚も無死二三塁、ここで迎える打者は周回おじさんこと相沢である。
俺なら絶対敬遠する場面。しかし、国修館バッテリーは勝負を選ぶと、初球をあっさりレフト線に運ばれてしまった。
「あ~……」
「早くも決まったか?」
レフト線への2点タイムリーツーベースで3点目。
やはり相沢は都内だと最強クラスだな。周回して都内の投手を知り尽くしているだけはある。
「お、ピッチャー代わる」
「石井か。常盤は意地でも出さないつもりか~」
ここで国修館は投手交代。
エースナンバーの草薙を諦めて、同じく左腕の石井をマウンドに送った。
彼も最速138キロの本格派。左腕王国の看板は伊達じゃない。
ちなみに、春に富士谷を抑えた常盤も最速138キロの左腕だ。
石井と常盤の違いは持ち球と安定感。石井はカーブとの緩急で打ち取るタイプで、常盤は落差のあるチェンジアップで三振を狙うタイプ。
ただ、常盤は石井や草薙よりも好不調の差が激しいので、不調の時は四死球連発で試合を壊す恐れもあった。
「石井ー、落ち着いていけよー」
「走者は気にせず打たせろよ!」
尚も無死二塁、ここで迎える打者は強打者の湯元である。
4点目が入ると満塁弾でも同点止まり。こうなってくると逆転も難しくなってくる。
そう思った矢先、湯元は初球のストレートを綺麗に流した。
「わああああああああああああああああああああ!!」
大歓声に包まれながら、痛烈なゴロは三遊間に転がっていく。
どう見ても抜けそうなあたり。しかし、次の瞬間――俊足の宮城は逆シングルで捕らえると、流れるような動きでサードに球を放った。
「(げ! これ抜けないの!?)」
スタートを切っていた相沢は三塁へ滑り込む。
それと同時に、三塁手の渡井はグラブをベースに差し出した。
セーフなら致命傷になる場面。果たして、三塁審の判定は――。
「アウト!!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「よくサードに投げた!!」
三塁審は右腕を振り下ろすと、三塁側スタンドから割れんばかりの歓声が沸き上がった。
抜けてもおかしくない打球、かつ三塁はタッチプレーという場面で、逆シングルから迷わず三塁へ球を放った。
下手したら一塁に投げてもセーフだったかもしれない。
まさに「唯一の正解」でチームの危機を救った訳だ。
その後、後続も抑えて3回表は3点止まり。
準々決勝の第2試合は、元チームメイトの活躍でワンサイドゲームを阻止した。
都大二003=3
国修館00=0
【都】折坂―岩田
【国】草薙―清水




