8.集まれ東京球児
2011年11月某日。
俺達が岐阜旅行を満喫していた裏側では、明治神宮大会(高校の部)の決勝戦が行われていた。
尚、結果は下記の通りである。
大阪王蔭000 010 000=1
都大三高500 323 22x=17
【大】横波、根市、柿本、根市―森沢
【都】宇治原、堂前―木更津
今日も都大三高の圧勝です。本当にありがとうございました。
ただ、お陰様で関東東京の選抜枠は1つ増える。流石に富士谷は無いと思うが、選ばれるであろう関越一高の躍進に期待したい。
さて、これで今年の公式戦は全て終了した。
間もなく練習試合も禁止期間に入り、高校野球も本格的なオフシーズンに突入する。
果たして、ひと冬越えて各校はどの様な成長を遂げるのか――。それは各々の頑張り次第である。
※
この決勝戦の数日後、俺と堂上は八王子市民球場に召集された。
理由は他でもない。U-17東京代表の顔合わせである。
という事で、選ばれた選手達(補欠含む)は一堂に会していた。
「おー、竜也じゃねぇか。準々決勝のとき以来だなー」
「俺は久しぶりだなぁ。同じ八王子市なのに全然会わないんだもん」
そう声を掛けてきたのは、宮城(国修館)と久保(八玉学園)である。
何れも中学時代のチームメイトで、シニア時代は東京屈指の二遊間コンビと言われていた。
「おうよ。そういや名二遊間も復活するのか」
「そうだねぇ。両方スタメン取れるかは分からないけど」
「っけ! コイツが八玉なんかに行かなきゃ高校でも組めたのによー」
「根に持つなぁ……」
二人が揃っているのを見るのも懐かしい。
転生は中学3年の秋から始まったので、お目に掛るのは正史以来である。
この二人以外にも、メンバーに選ばれている知り合いは多い。
試合前後によく絡んできた木田&木更津、すっかり総括おじさんと化した相沢、同じく転生者で元親友の周平。
そして――。
「よーォ柏原ァ! 遂に俺らのバッテリーも復活だなァ!!」
「はいはいそーですね」
東のキチガイ様こと土村康人も選ばれていた。
相変わらず声がクソデカい。お陰様で注目の的になっている。
「ふむ……コイツでも選ばれているのか。人選ミスではないのか?」
「あァん!? テメェこそ二番手の分際でよくノコノコ来れたなァ!!」
「二番手ではなく二枚看板だ。それに俺は野手でも結果を残している。当然の選出だろう」
怒鳴り散らす土村に対して、堂上は無表情で言葉を返していた。
相変わらず堂上は土村に強いな。面倒な時は代わりに相手をしてもらおう。
「集合!!」
「っしゃい!」
やがて主将の木更津が集合を掛けると、選手達は一塁側のベンチ前に整列した。
補欠も合わせて25名の精鋭達。東京選抜と謳ってるだけあって、どの選手も何処となく風格が感じられる。
「えー、私が監督の米原だ。先ずは集まってくれた事への感謝と、選ばれた事への祝福を捧げたい。これから君達は――」
正史では恩師だった米原監督(関越一高)の長そうな話が始まった。
途轍もなく長いので内容は割愛。また、今後の練習を含めたスケジュールも公開された。
【練習/壮行試合】
12月03日 練習(大田スタジアム)
12月04日 vs都東大学下級生選抜(明治神宮野球場)
12月11日 練習(上柚木公園野球場)
12月12日 vs東山大菅尾高校3年生選抜(多摩一本杉球場)
12月17日 練習(多摩一本杉球場)
12月18日 練習(上柚木公園野球場)
【遠征日程】
12月23日 出発
12月24日 練習
12月25日 vsキューバ選抜
12月26日 vsキューバ選抜
12月27日 vsキューバ選抜
12月28日 観光
12月29日 帰国
東京選抜のスケジュールは上記の通り。
また、12月以降は高校野球の練習試合禁止期間となる為、大学生や3年生で組まれたチームと試合をする事になる。
なんにせよ、これから戦う相手は全て格上だ。
都東大学、東山大菅尾の3年生、そして野球先進国のキューバ選抜。
この辺を軽く抑えられるくらいじゃないと、あの恐ろしく強い都大三高には通用しないだろう。
遂に始動したU-17東京選抜。
各校の主力が集まる中で、俺は登板機会を掴めるだろうか。
琴穂も十分にキメてきたし、宇治原に負けじと存在感をアピールしていきたい。