表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

376/699

4.高校生に世界遺産はまだ早い

 上高地でのハイキングを終えると、安房トンネルを越えて奥飛騨温泉郷に到着した。

 ちなみに安房トンネルは有料道路。迂回する事も可能だが、車1.5台分くらいの車幅しかない安房峠を通る事になる。

 かつて安房トンネルが開通する前は、この狭く過酷な安房峠を走破する必要があった為、混雑する連休中は峠越えに5時間も掛ったらしい。


 それが今では安房トンネルで約5分。

 すっかり過疎った安房峠も40分程度で走破できるので、時代の進歩というものを痛感する。

 尤も、この発展さえ無ければ岐阜行きも回避できたのだが。


 さて、舞台は変わって岐阜県の奥飛騨温泉郷・平湯温泉。

 今回の修学旅行の実質拠点であり、此処で三泊四日の時を過ごす事になる。

 ちなみに、奥飛騨に大型ホテルは無い為、クラス単位で別の宿が手配されているらしい。


 これにも多くの生徒が難色を示していた。

 しかし、俺にとっては好都合。宿は狭く、そして人は少ない方が琴穂とのエンカウント率も上がる。

 まぁ……初日は何も起きなかったが、せっかくの好機なので急接近できるイベントに期待したい。



【2日目】



 修学旅行2日目、俺達の乗るバスは白川郷を目指していた。

 白川郷と言えばユネスコ公認の世界遺産。本日は此処でワールドクラスの文化財を学ぶ事となる。

 尚、行動を共にするのは1組から4組まで。5組から7組は2〜3日目のプログラムが逆に組まれている。


 これがあるから、琴穂と対極のクラスになるのは怖かった。

 改めてクラス分けには感謝したい。彼女と同じクラスで本当に良かったと思う。


 さて、その白川郷だが、結論から言うと何も起きなかった。

 当たり前だ。そこにあるのは驚くほど田舎な集落と、合掌造りと呼ばれる大昔の民家である。

 高校生からしたら退屈な内容だし、どうしても内容は薄くなってしまう。


「ショートコント、桃太郎!」


 と、そんな事を思っていると、田んぼだらけの長閑な集落に大声が響いた。

 思わず釣られて振り返ってみる。するとそこでは、京田と昴(サッカー部の友人)が何やらコントを始めようとしていた。


「いるよな、ああやって女子の気を引こうとするやつ」

「かっしーも何かやってよ〜。琴ちゃん笑ってくれるかもよ?」

「恵が何かやったら考えるわ」

「じゃあ脱いでくる」

「やめろ」


 盛大に滑る京田達を他所に、俺は恵と言葉を交わす。

 恵は基本的に無敵なんだよな。偏見だけどAB型っぽい感じがする。


 ただ、彼女の言う事は御尤で、何かやらないと何も起きないのは間違いない。

 現実は漫画やドラマとは違う。待っているだけじゃ都合の良いイベントは起きないし、自分で何かアクションを起こす必要があるのだ。


「ところでさ」

「なんだよ」

「かっしーはこの辺に来たことあるの?」

「白川郷は初めてかな。奥飛騨と明日行く高山は来たことあるけど」

「誰と?」

「……伊織と」

「っぷ〜! ウケる〜!」


 そんな言葉を交わしていると、恵は嘲笑いながら、俺の体を揺さぶってきた。

 先週までの不貞腐りっぷりは何処へ行ったのやら。彼女はすっかり元気になっていて、隙あらば俺を弄ってくる。

 堂上の言う通り、修学旅行で完全に元通りになった訳だ。


「けどさ、白川郷は初めてなんでしょ?」

「まぁそうだな」

「そっかぁ〜。ふふっ、じゃあ私と思い出作ろうよ」


 恵はそう言って俺にくっついてきた。

 大きな胸が当たっている……じゃなくて、あまり琴穂には見られたくない場面だな。

 まぁ、その琴穂は別行動中なので、ここは仕方がなく提案に従うか。


「まあいいけど。琴穂も苗場のほう行っちゃったし……って痛え!」

「そ〜いう余計なこと言わない!」

「ハイ」


 とまあ、最後は蹴られてしまったが、そんな感じで2日目は恵と共に過ごした。

 とは言っても、白川郷は夏や冬がメインの場所。秋の白川郷はイマイチ面白みに欠けるし、先程も言った通り何も起きていない。

 ただ恵は満足のようで、終始楽しそうに集落を探索していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 恵の嫉妬!可愛い!結局誰の恋が実るのかめっちゃ気になります [一言] 白川郷!高校一年の時に行きましたが皆楽しそうでしたよ!まあ地歴部の遠征で行ったので皆そういう奴ばっかだっただけの事です…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ