11.最終決戦?
2011年9月25日。
本日はブロック大会代表決定戦の為、帝皇高校グラウンドを訪れていた。
「っしゃー! とっとと終わらせて合コンいこうぜー!!」
「陽ちゃんは金と時間の無駄になるから止めた方がいいっすよ」
「うるせぇ! お前は誘わないからな!!」
「結構っす」
京田は露骨に張り切っている。
今日は午後から御茶川大附の女子達と合流し、合体コンパニー……所謂「合コン」を行う予定だ。
メンバーは俺、鈴木、京田、堂上。異性に関心が薄い近藤と野本、束縛の強い彼女がいる渡辺は不参加となった。
ちなみに今日の相手は都立鷺谷高校。
偏差値は並程度だが校則が無いに等しく、富士谷と並んでお洒落な女子高生が多いらしい。
そういえば、開会式の時も「富士谷、鷺谷、小河のマネが可愛い」という噂を聞いた気がする。
しかし、これから行うのはミスコンではない、野球だ。
鷺谷は本来の富士谷でも勝てる程度の都立高校、苦戦する要素は万に一つも無い。
という事で、今日も色々な選手を試す事となった。
鷺_谷000 02=2
富士谷409 3x=16
【鷺】佐藤、須山、山下、佐藤―木村
【富】堂上、中橋、藤島―駒崎、近藤
試合は言うまでも無く5回コールドで快勝。また、今回初登録の藤島に登板機会が与えられた。
都立相手に1回を投げて2失点。この分だと、本戦では梅津(密かに怪我で離脱中)が登録される事となるだろう。
一方、野手陣は夏樹、大川、戸田あたりの調子が良かった気がする。
京田が合コンしている隙に、スタメンを奪おうという熱意を感じ取れた。
もう一つ、先週は無安打だった堂上が2本塁打。完全に調子を取り戻したようだ。
試合終了後、俺と恵は人気の少ない場所に身を移した。
「はい、これ今日の台本」
「まさかとは思うけど、カナブンデートの再来じゃねーだろうな??」
「大丈夫だって! てか、あれ考えたの鈴木だから!」
「犯人はアイツか……」
一応、恵から本日の台本を託された。
今日のミッションは、伊織を惚れさせた上で振って失恋させる事。
それが出来なかった場合、プランBとやらに変更するらしい。
「今日はカラオケだっけ? かっしー上手いの?」
「残念ながら上手くはないな。歌声で惚れさせるのは100パー無理だぞ」
ちなみに、合コンはカラオケで行われる。
本来なら居酒屋で行うべきだが……俺達は未成年なので仕方がない。
此方は野球部だから尚更だ。幸い、相手も進学校のお嬢様達なので、そこに関しては理解を得る事ができた。
「カラオケといえば、そっちも先週行ってきたんだろ? 琴穂どうだった?」
「あ、やっぱ気になる? え~、どうしよっかな~」
そういえば、先週のマネージャー達は、ショッピングの後にカラオケに行ったらしい。
俺の天使は何を歌ったのだろうか。去年の祝勝会は居なかったので、地味に気になる部分である。
「んー……1曲目は波乗りかき氷だったよ~。あんまり上手くなかったけど、照れながら歌ってて超かわいかった~」
「絶妙な選曲も含めてどちゃくそ可愛いな……」
畜生、伊織と会うくらいならそっちに行きたかったな。
照れながら歌う琴穂を眺めたかった。もっと言うなら、俺に向けて歌って欲しかった。
「他は?」
「秘密! あとは自分の耳で確かめて!」
「そんな勿体ぶる情報でもねぇだろ」
「(かっしーの好きない○ものがかり練習してたからね……それは言えないよ)」
残念ながら2曲目以降はお預けとなった。
仕方がない。目先の課題を全部片付けてから、オフシーズンにでも誘ってみよう。
「……ちなみに夏美は??」
「絶対に聞くと思った~! それがさー、なっちゃんと亜莉子ちゃんが中々に歌おうとしなくてさ~」
「譲り合う姿が容易に想像できるな……」
「だから私が怪盗少女入れて歌わせたった」
「それはそれで見てみたかったな??」
「最高だったよ~! めっちゃ下手だったし半泣きだったけど、あれはどのーえに見せたかったな~」
それは一歩間違えば苛めだぞ、とまでは言わなかった。
しかし、女子会は楽しそうだな。本当に混ざりたかったまである。
「じゃ、今日は合コンがんば! 本当に恋に落ちたらダメだよ~」
「落ちるかよ。ちなみに、そっちはまた女子会すんの?」
「そうだね~。今日は映画観に行って~、スイーツ食べて~、時間あったらバッセン行ってみようかな~?」
「ああ……一生のお願い使うからそっちに行きたい……」
そんな感じで、俺は嫌々ながらも合コンに臨む事となった。
元妻との最終決戦。その舞台は、すぐそこまで迫っている。