24.耐球開始
西東京大会2回戦
2010年7月9日(金) 八王子市民球場 第3試合
都立富士谷高校―東山大学菅尾高校
スターティングメンバー
(左から守備位置、背番号、名字、学年、投打、身長、体重、出身地)
先攻 富士谷
中 ⑧野本(1年/右左/175/64/日野)
遊 ⑥渡辺(1年/右右/171/62/武蔵野)
右 ⑨金城(3年/左左/180/78/府中)
左 ①柏原(1年/右右/177/72/府中)
一 ③鈴木(1年/右右/177/70/武蔵野)
投 ⑦堂上(1年/右右/178/75/新宿)
捕 ②近藤(1年/右右/170/70/府中)
二 ④阿藤(2年/右右/170/58/八王子)
三 ⑤京田(1年/右右/163/53/八王子)
後攻 東山大菅尾
二 ④奥原(2年/右左/176/68/嬬恋)
遊 ⑥林(3年/右右/174/70/福生)
左 ⑦堀江(2年/右左/175/70/名古屋)
三 ⑤小野田(3年/右右/178/92/川崎)
右 ⑨山本(3年/右左/182/78/春日井)
捕 ②仙波(3年/右右/176/72/苅谷)
投 ①大崎(3年/右右/180/75/立川)
一 ③小寺(2年/右右/169/76/豊橋)
中 ⑱板垣(2年/右左/186/79/熊谷)
夕焼けに染まる空の下で、アップ、キャッチボール、トスバッティングをこなした。
一塁側、富士谷の応援席を見上げると、制服姿の人間で一杯になっている。吹奏楽部もフルメンバーであり、学校側の本気度が窺えた。
一方、三塁側はというと、保護者とメンバー外の部員、それから少数の吹奏楽部くらい。
恐らく、消化試合としか思われていないのだろう。
サイドノックは先攻の富士谷から。
初戦では演奏されなかったシートノック曲・シロクマが球場に響き渡る。
俺は外野陣のノックに入り、軽く汗を流した。
続いて東山大菅尾のサイドノック。
選手達は、ライトブルーに縦縞のユニフォームを身に纏っていて、何となく恵が好きそうな配色な気がする。
シートノック曲はランナー。動きはとても軽快で、守備だけならコールドレベルの差を感じた。
サイドノックのお陰で、グラウンド整備に時間は掛からなかった。
薄暗くなった空の下、白い照明がグラウンドを照らし、電光掲示板はいつもより輝いて見える。
17時40分、大勢の応援を味方に付けて、試合開始が告げられた。
東山大菅尾の先発は大崎さん。
180cm75kgとバランスのいい体格の右腕で、球種は以前語った通り。
この投手の球数を稼ぎ、いかに消耗させるかがこの試合の鍵になる。
1回表、先頭打者は野本から。
出塁は期待してない。球数さえ稼げればそれでいいのだが……。
「ットラーイク! バッターアウト!」
4球で空振り三振。そう簡単に稼げたら苦労はしない。
だから耐球作戦は好きになれない。結局、一定の打力がなければ成立しないからな。
続く渡辺は6球を稼いでセカンドゴロ。
孝太さんは4球目を捉えてレフト前ヒットとなった。
『4番 レフト 柏原くん 背番号 1』
二死一塁、計14球を稼いで俺に回って来た。
いきなり長打が打てるとは思えない。球数を稼いで、狙えたら単打で繋ごう。
一球目、大崎さんはチラチラと走者を気にした後、クイックモーションで球を放った。
外角低めの力強いストレート。際どいコースだが、審判の腕が上がった。
二球目、再びクイックから。
体に向かってくる球。思わず背中を向けたが――。
「ットラーイク!!」
大きく曲がった白球は、内角ギリギリに収まった。
フロントドアのカーブか。敵ながら素晴らしい制球力だな。
さて、追い込まれた。
次は同じコースにストレートか、外に逃げるスライダーか。
3球目、大崎さんが放った球は、外に外れそうな遅い球――いや、入ってくる……!
「ファール!!」
咄嗟に当てた打球は、一塁側ベンチの方向に飛んでいった。
今度はバックドアのシンカーかよ。一番近い球から一番遠い球、俺の好きなリードだな。
4球目、体に近いストレートは見逃してボール。
続く5球目は外角いっぱいのツーシーム、これは手を出してファール。
孝太さんのツーシームよりは曲がらない。これなら当てるのは難しくないな。
ここまでは全て内外交互。次は内角で来そうだな。
クイックから放たれた6球目――予想を裏切る外のスライダーに、俺はついバットを出してしまった。
「ットラーイク!! バッターアウト!!」
くそ、見逃せばボールだったな。
基本的には内外交互、粘られたら同じコースか。ありきたりだが、定石かつ厄介なリードだな。
まあいい、初回で20球は稼げた。単純計算なら180球ペース、悪くはない出だしだろう。
富士谷0=0
東山菅=0
(富)堂上―近藤
(東)大崎―仙波