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19.都立最後の生き残り

西東京大会5回戦

7月24日(日) 八王子市民球場 第2試合

都立富士谷高校―都立福生高校

スターティングメンバー


先攻 都立福生

捕 ②入谷(3年/右右/170/65/福生)

遊 ④正津(2年/右左/169/58/福生)

投 ⑥中里(2年/右左/180/68/立川)

一 ③森川(3年/右右/181/82/立川)

左 ①桐山(3年/右右/178/67/あきる野)

右 ⑳水口(1年/右右/177/74/武蔵村山)

中 ⑧福島(3年/右右/168/61/羽村)

三 ⑤大山(3年/右右/175/83/昭島)

二 ⑭佐々木(2年/右左/168/60/羽村)


後攻

中 ⑧野本(2年/右左/178/70/日野)

遊 ⑥渡辺(2年/右右/174/68/武蔵野)

三 ⑮津上(1年/右右/180/78/八王子)

投 ①柏原(2年/右右/180/76/府中)

右 ⑨堂上(2年/右右/180/80/新宿)

一 ③鈴木(2年/右右/179/75/武蔵野)

左 ⑱中橋(1年/左左/170/60/八王子)

捕 ⑫駒崎(1年/右右/179/74/小金井)

二 ④阿藤(3年/右右/171/62/八王子)

 結局、第1試合は都大三高が8回コールド勝ちを果たした。

 スコアは20対11。都大三高が主力投手を温存した事で、3時間近い乱打戦になってしまった。


 一方、他球場では12時30分開始の試合が崎始まっていた。

 市営立川球場は八玉学園vs朋桐。昭島市民球場は国秀院久山vs都立分国寺。

 尚、後者は正史通りなら国秀院久山が勝つ為、残る都立は富士谷と福生の2校のみ。

 つまり――この試合こそが、都立の頂点を決める頂上決戦だった。





 俺達はグラウンドインすると、何時ものアップ等を淡々とこなした。

 先発の俺は途中で外れてブルペンへ。本来は堂上が先発する予定だったが、不気味な福生を警戒して俺が先発するに至った。


 ノックの動きを見ていると、福生もそれなりに鍛えられている事が分かる。

 決してワンマンチームという訳ではない。センターラインは去年の富士谷より動けている。

 やがて両校のノックが終わり、グラウンド整備が始まると、その時が来るのを黙々と待ち続けた。


「ベンチ前!!」


 審判の掛け声と共に、俺達はベンチ前に整列した。

 続けて「集合!」と叫ぶと、選手達は雄叫びを上げてホームに並ぶ。


「これより、都立富士谷高校と、都立福生高校の試合を始める。礼!」

「「おっしゃす!」」


 13時40分、予定よりだいぶ遅れて試合開始が告げられた。

 俺はホーム球場のマウンドに上がる。ふと客席を見上げると、一塁側の富士谷応援席は生徒達で埋まっていた。

 一方、福生の三塁側も満席に近い。勝てばベスト8なので、生徒やOBが駆け付けたのだろうか。


「1回表、福生高校の攻撃は、1番 キャッチャー 入谷くん。背番号2」


 1回表、福生の攻撃は入谷さんから。

 3人の好投手を纏める正捕手が、右打席に入ってバットを構える。


「(とりあえず森川に言われた通りやってみっか)」


 入谷さんは都立の選手にしてはミートが上手い。

 初球、フロントドアの高速スライダーから入ってみる。


「ットライーク!」


 入谷さんは背中を向けるが、主審の右腕が上がってストライク。

 続けて外一杯のストレート。入谷さんは唐突にバットを寝かせてきた。


「ットライーク! ツー!」

「(二高の投手よりも速いな。こりゃ簡単には打てねぇわ)」


 入谷さんはバットを引いて見送った。

 今度は最初からバントの構え。バスター狙いだろうか。


「ボール!」


 三球目、外スラは見送られてボール。

 続けて駒崎は対角線、内角高めのストレートを要求してきた。


「(前に飛ばさなくていい。とにかく当てる……!)」


 四球目、内角高めのストレート。

 外す気持ちで厳しく攻めると、入谷さんはバスター打法でバットを振り抜いてきた。


「ファール!!」


 打球はバックネットに飛んでファール。

 その後、五球目と六球目もファールで粘られた。


「(先頭は確実に切りたいっす。バスターは縦変化に弱いですし、ここで一球使いましょう)」


 七球目、駒崎の要求はスプリット。

 先日の事もあるので、初回の先頭打者は確実に切りたいのだろう。

 俺は首を縦に振ると、セットポジションから腕を振り抜いた。


「ットライーク! バッターアウッ!!」

「(これがスプリットか〜! まさか初回から来るとは……)」


 入谷さんはバットを振り抜くも空振り三振。

 駒崎は白球を前に溢すと、落ち着いて拾ってタッチした。


「スプリットきたわ。1球目ね」

「うっす」


 続く打者は正津。入谷さんと言葉を交わしてから左打席に入る。

 彼も1ボール2ストライクまで見送ると、四球目は当てただけのバッティングで粘ってきた。


「(東山大菅尾戦の再来ってそういう事かよ……)」


 そして――俺も福生の狙いに気付いてきた。

 恐らく福生は待球している。俺が故障持ちなのを見越してだろう。


 ただ、控え投手が弱かった東山大菅尾とは違い、富士谷は後ろに堂上が控えている。

 俺が交代せざるを得なくなっても、残りのイニングは堂上が投げれば問題ない。

 つまり――富士谷には待球があまり効かないのだ。


「ットライーク! バッターアウッ!」

「(ああ、ボールだと思ったのに……!)」


 もう一つ、待球という作戦自体、一定の打力が無ければ成立しない。

 そう簡単にカットできるのなら、プロ注目投手と当たった高校は、必ず待球を実行しているだろう。


 結局、続く中里は三球目を打ち上げてファールフライ。

 狙いが分かれば話が早い。待球している間は、此方も楽させて頂こう。

福_生0=0

富士谷=0

【福】中里―入谷

【富】柏原―駒崎


NEXT→7月24日(土)

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れさまです。 富士谷の場合、ドラフト指名されそうなダブルエースが突出しすぎているので目立たないけど、都大会レベルなら十分エース級な投手がごろごろいるんですよね。そう、去年の三番手の…
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