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12.デジャヴ?

都大二高0=0

福__生4=4

【都】田島―岩田

【福】桐山―入谷

 緑溢れる多摩一本杉の地では、ブラスバンドの音色と少数の歓声に包まれていた。


 2回表、都大二高は二死三塁の好機を作るも、センターへのライナーを好捕されてしまった。

 2回表も無得点。依然として福生の4点リードが続いている。


「今のセンター上手かったね〜」

「ああ。センターラインとファーストはしっかりしてる。両翼とサードが穴だな」


 ここまで見た感じだと、福生はセンターラインとファーストは守備が上手い。

 一方で、サードは横への動きが鈍く、両翼はフライの追い方に「都立らしさ」が垣間見えていた。


「ットライーク! バッターアウッ!」

「田島くんも立ち直ったね」

「ああ。ってか福生の下位がショボい。この辺は実に都立らしいな」


 2回裏、田島は8番9番を連続三振で切り抜けた。

 1番の入谷さんはセンター前ヒット。2番の正津はセカンドゴロとなり、2回裏は無得点で終わった。


 福生の打線は中軸が抜けている他、1番の入谷さんも巧打力に長けている。

 2番、6番、7番もそこそこだが、後ろの二人は扇風機だった。



 3回表、先頭の田島は空振り三振。

 打順は1番に戻り、1年生の大浦大輝が左打席に入る。


「お、大ちゃんっすね。こいつは打ちますよ」


 唐突に声を掛けてきたのは津上だった。

 辺りを見渡すと、京田や鈴木や堂上など、他の選手達も客席に座っている。

 どうやら、電車で多摩一本杉まで来たようだ。


「日本代表で二遊間だったんだっけか」

「です。大ちゃんとクズ男って呼び合う仲でしたね」

「お前それ嫌われてるからな??」


 さて――この大浦大輝だが、U―15日本代表の二塁手である。

 正史では他県の強豪でレギュラーになり、都大三高の宇治原からホームランも放った。

 つまるところ、彼も対都大三高の兵器として補強された選手なのだ。


「おお!」

「いったー!」


 大浦は三球目を振り抜いた。

 打球は低い弾道で飛んでいくと、ライトポール際ギリギリに入り込む。

 ライトスタンドへのソロアーチ。スーパールーキーの活躍で都大二高が1点を返した。


「桐さん、切り替えましょう。5回まであと少しっす」

「予定通り予定通り。3点までなら全然オッケーだぜ」

「おう」


 マウンドの桐山さんに、中里と森川さんが声を掛ける。

 うっすらと内容が聞こえたが、継投を前提とした起用なのだろうか。


 続く折坂はセンターフライ。

 二死無塁となり、転生マスターの相沢を迎えるが――。


「ットライーク! バッターアウッ!」


 相沢にしては珍しい空振り三振でスリーアウト。

 低めに変化球を集めてから、ノビのある高めのストレートを振らせていた。


「いい投手っすね。けど八玉実践のエースと似てるんで、俺らなら楽に点取れますよ」


 津上は腕を組みながら語った。

 桐山さんのストレートは140キロ前後。縦スラっぽい変化球が決め球で、キレのあるストレートでも空振りが奪える。

 正直、非常に良い右腕だと思うが――今日攻略した栗林さんと似ている投手だった。


 これなら全く打てないという事はない。

 制球もアバウトだし、同じ縦スラ使いなら去年の横山さん(都大二高)の方が上だ。

 問題は二高が勝った場合の田島、そして福生のリリーフ投手陣である。



 3回裏、4回表、4回裏はゼロが並んでいった。

 立ち直った田島は4回まで8奪三振。桐山さんは走者を出しつつも、要所を抑える投球でホームを踏ませない。


 そんな中、都大二高に絶好の好機が訪れる。

 5回表に右失と四球が続き、無死一二塁で大浦の打席を迎えた。


「タイムお願いします! ピッチャーとファースト交代で!」


 そこで福生ベンチも動いてきた。

 今季からエースの桐山さんを諦めて、長らくエースだった森川さんをマウンドに送る。

 細身の右腕から体格の良い右腕へ。ツチノコからツチノコへの継投だ。


「ごめん、5回持たなかった」

「気にすんなって。この方が()()()みたいで縁起良いしな」


 二人は言葉を交わすと、お互いに守備位置を入れ替わった。

 マウンドには背番号3の森川さん。足場を慣らして投球練習を開始する。


「森川さんも140キロくらい出てそう〜」

「キレよりも重みがありそうっすね。あと制球もコッチのほうが上っす」


 津上の分析は当たっている。

 投球練習だけ見ても、桐山さんの時よりミットが動いていない。

 そして――。


「あ、これ華恋ちゃんが投げてたやつ!」

「スローカーブか。球速差あるから大城より緩急を感じるかもな」


 持ち球の一つとして、スローカーブを披露していた。

 三塁側からだと他の球種は判別つかないが、この球だけはハッキリと分かる。


 球威があり、緩急があり、制球にも破綻がない。

 プロに行くような派手さは無いが、彼は紛れもなく「好投手」と呼べる選手だろう。


「ってかアレだね〜。この展開、去年の三高戦を思い出すなぁ〜」


 ふと、恵は言葉を溢した。

 先発は故障明けの好投手。初回にホームランで4点を先制して、5回のピンチで本来のエース格に交代する。

 言われてみれば、これは富士谷が都大三高にやった試合運びだった。


「確かに、少し似てる部分があるかもな」

「でしょ! 絶対富士谷リスペクトじゃん!」

「んな訳ねえだろ……展開なんて簡単に真似できねえよ」


 とは言ったものの、選手起用は参考にする事も可能である。

 継投、打順、控え選手の使い方など。これらはプロ野球チームや名門校のマネする監督も多いらしい。


 継投策自体はよくある采配。恵は自意識過剰もいい所である。

 しかし、この試合が富士谷vs都大三高の再現になるのであれば――都大二高は此処で負ける。

都大二高001 0=1

福__生400 0=4

【都】田島―岩田

【福】桐山―入谷


NEXT→7月16日(金)

1日だけ休載日失礼します……!

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[一言] 前書きの都第二のスコアがずれてます
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