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5.噛み合ってる?

富士谷A軍0=0

富士谷B軍=0

【A】京田―島井

【B】芳賀―駒崎

 1回裏、富士谷Bの攻撃は、1番セカンドの大川から。

 上背は無いが体に厚みがある右打者。聞くところによると俊足強打の内野手らしい。


 彼は正史でも富士谷に入学して、1年夏から4番打者として起用されている。

 恵イチオシの選手であり、今回も勧誘するに至ったようだ。


「(こいつサードも出来るんだっけ。じゃあ負けらんねーな)」


 マウンドにはレギュラー当落線上の京田。

 1年生内野手と直接対決できる事もあり、今日は気合が入っている。


 一球目、京田は小さな体を使って腕を振り下ろした。

 128キロのストレート。大川は初球からフルスイングで出迎える。


「ああ〜」

「力み過ぎー!」


 高々と上がったセンターフライで1アウト。

 パワーと思い切りはありそうだ。しかし出塁率を残せるかは非常に怪しい。


「お願いします!」


 次の打者は俺イチオシの中橋。

 俊足巧打の左打者。小技も上手く、投手も出来る器用さがある。


「(セーフティしたいけど今じゃないな。京田さんは守備上手いし、投げてる内はヒッティングしとこ)」

「(偏見だけどコイツ流し打ちとか好きそう)」


 一球目、京田は慎重にボール球から入った。

 その後は徹底した内角攻め。中橋の選球眼が勝りスリーボールワンストライクとなる。


「(内おおいな〜。また内で来るかな?)」


 五球目、またも内角のストレート。

 中橋はしっかり引き付けると、綺麗なスイングでセンター前に運んだ。


「これですよこれ、こういうのでいいんですよ」

「柏原、急にどうした……?」

「いや、今まで右打ちの脳筋と自動アウトばっかりだったんで、つい……」

「お前も右打ちの脳筋だけどな……」


 不覚にも畦上先生にツッコまれた。

 これで一死一塁。世代最強内野手の津上が右打席に入る。

 彼は見飽きたパワータイプの強打者。どうせ下品な長打を狙っているのだろう。


「(さーて、ホームラン狙うか)」

「(コイツもサード出来んだよな。ちくしょー、サード経験者多すぎんだろ……!)」


 落ち着いて構える津上に対し、京田は物凄く気合が入っている。

 一方、一塁走者の中橋はというと、少し大きめにリードを取っていた。


「(これは盗めるな。よーし、恵さんにイイ所みせるぞー)」


 一球目、京田はセットポジションから左足を上げる。

 それとほぼ同時か少し早いくらい、中橋は完璧なスタートを切った。


「(よっしゃ、完璧!)」

「(あ? 俺より目立つんじゃねーよバカ)」


 モーションを盗んだスタートに加え、投球はボールになるスライダー。

 しかし――津上は強引に打ちにいくと、打球は右中間に飛んでいった。


「(はあああ!? なんでそれ打つの!?)」

「(ッチ、これは入らねーな)」


 白球は右中間を越えた辺りに落ちる。

 実質エンドランになった事もあり、中橋は悠々とホームまで返ってきた。

 津上も二塁を落としてタイムリーツーベースが成立。先ずは富士谷Bが先制点を挙げた。


「(まあいいや、サイクル安打ねーらおっと。中橋は死ね)」

「(よし、何はともあれ先制点だな。津上は死ね)」


 中橋と津上は睨みあっている。

 この二人は本当に仲が悪い。恵監督は満足げだけど、せめて打順を離すとか出来なかったのだろうか。


 次の打者は先発投手の芳賀。打ち損じるもセンター前ヒットになった。

 無駄にデカいだけあってパワーはある。投手よりも野手のほうが向いてそうだ。


 これで一死一三塁。

 迎える打者は、もう一人のイチオシ選手・駒崎である。

 180cm近い長身の右打者。パンチ力には定評があり、正史では強豪校で中軸を任されていた。


 これで近藤にも競争を促せる。

 チャンスで代打を出せるようになるし、何なら近藤を守備固め要員にしても良い。


「(コイツはキャッチャーか……まあゴリの為に抑えてやるか)」


 初球、京田はスライダーを振り降ろした。

 フロントドアで入ってくる球。駒崎はいきなり強振すると、強めのライナーがサード方向に飛んでいく。


「(させるかぁ!!)」


 奇しくも三塁手だった近藤は、渾身のジャンピングキャッチで白球を捕らえた。

 三塁も踏んでライナーゲッツーが成立。暫定正捕手のゴリラが気合を見せた形になった。


「近藤のサードいいじゃないか。柏原どう思う?」

「守備専のサードは京田で間に合ってるので……。んじゃそろそろベンチ戻ります」


 さて、遊びすぎたしベンチに戻ろう。

 琴穂監督に手取り足取り采配を教えなくては。



 2回表は打者4人で無得点。持ち直した芳賀は力で捻じ伏せていった。

 ただ上位の2巡目には通用しそうにない。恵の事だから投手を替えてくるだろう。


「かっしー、ピッチャー替えよーよっ」


 2回裏、琴穂監督は唐突に投手交代を要求してきた。


「流石に早すぎない?」

「え〜、このままじゃ負けちゃうよぉ〜」

「じゃあ2巡目からね。大川まで回ったら田村さんに替えよっか」

「うんっ!」


 どうやら恵に感化されて、琴穂も勝ちにいきたいようだ。

 一巡は同じ投手で比較したいので、大川(1番打者)の二打席目から投手を替えよう。


 2回裏、富士谷Bの攻撃は、鈴木と渡辺の後輩にあたる中道から。

 勝負強い中距離打者らしいが、この打席はライトフライになった。


 続く戸田はライト前ヒット。彼は現時点では無名だが(以下略)シリーズの選手。

 8番打者は上野原。中学までは投手一本だった選手で、この打席は三振で終わった。


「(げ、またサードだ……!)」


 二死一塁。ラストバッターは卯月弟――もとい夏樹である。

 恵曰く、守備とミートが上手い器用な選手らしい。


 その前評判通り、夏樹は四球目をレフト前に運んだ。

 期待していなかった打者が繋いで二死一二塁。ここで打順は1番の大川に戻る。


「よしっ、ピッチャーこーたいっ!」

「手でTの字を作ってタイムって叫んでごらん」

「えっ……それも私がやるの……?」


 さて――向こうが勝ちに来ているので、此方も3番手の田村さんを投入させて頂こう。

 田村さんは最速143キロ。球種は少ないがスライダーはキレるので、地方大会レベルでなら十分な好投手だ。


 この投手を打てるか否かで、都内の強豪にも通じるかどうか見えてくる。

 俺は一塁側のベンチで、想い人と共に高みの見物をさせて頂く事にした。

富士谷A軍00=0

富士谷B軍1=1

【A】京田―島井

【B】芳賀―駒崎


☆新入生の簡易紹介(既出分のみ)


1.覚えて欲しい人


・津上 180cm78kg 右右 内野/投手

世代No.1とも名高い強肩強打の内野手。素行の悪さも超高校級。


・中橋 170cm 60kg 左左 外野/投手

俊足巧打の優等生。富士谷では珍しい技巧派の選手。


・芳賀 185cm90kg 左左 外野/投手

永遠の未完の大器。速球とパワーに定評あり。


・駒崎 179cm74kg 右右 捕手

富士谷待望の打撃型捕手。遠投にも自信がある。


2.出来れば覚えて欲しい人


・大川 167cm70kg 右右 内野

俊足強打の内野手。本来の歴史でも富士谷にいた。


・夏樹 169cm58kg 右左 内野

卯月夏美の弟。本来の歴史でも富士谷にいた。


3.たぶん覚えなくていい人


・上野原 186cm72kg 右右 投手/外野

外野コンバート前提で誘った投手。現状ではモブ。


・中道 174cm70kg 右右 内野

鈴木達の後輩。勝負強い打撃が持ち味。現状ではモブ。


・戸田 176cm68kg 右左 外野/内野/投手

バランスの良さに定評あり。現状ではモブ。


NEXT→6月10日(木)

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― 新着の感想 ―
[一言] モブの選手も磨けば一芸ありそうですね。 せっかくの一年生少しでもいいから、活躍の場あると楽しめそうです。
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