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大切なもの

作者: 道草 甘菜

私には大切なものがある。


大好きな人とお互いに交換した、キラキラしたなにか。


それは、小さな箱に入れてリボンをかけて、棚に飾ってある。


それをくれた人は、遠くへ行くから、待っていて欲しいと言ったきり、連絡が無い。


その人が出かけてしばらくすると、箱は少し重くなったような気がした。




それから2年ほど経ったある日、その人はいきなり私の前に現れた。


そして、海外へ行くから荷物を取りに来たんだと笑いながら言った。


その人の胸元に、私があげたキラキラしたなにかが光っていた。


手早く荷造りをして、その人は、元気でね、と言って笑った。


また遠くへ行ってしまうのか。せめて見送るくらいしよう。


ベランダからその人の後ろ姿を眺める。




その人に駆け寄る人が居た。


そして晴れやかに笑いながら、キラキラしたなにかを交換した。


その人の胸元にあったはずの私のキラキラは、いつの間にか地面に転がっていた。


ああ、そうか。


さよならだったのか、あの言葉は。


ふと思い立って、棚にしまっていた箱を取り出した。


リボンを解いて蓋を開ける。


そして、驚いた。


キラキラしたなにかは、もうキラキラしてなんかいなかった。


黒くくすんで、ひどく醜かった。


こんなものを、どうしてこんなに大切にしていたんだろう。


そう思いながら、地面に転がっている私のキラキラに目をやった。


そこにはもう、キラキラなんて存在しなかった。


分かりたくもないのに、腑に落ちてしまう。


こんなに簡単に分かってしまう。


あの人は、もう私なんて見てないんだ、と。


私の大切なものが消えてしまったのを、ただ受け入れようとして、震えながら、体を丸め、唇を噛んでいる。


大切なものって、どんなものだっけ。


もう、思い出せなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 相手の気持ちは言葉にしなくとも、はっきりとわかります。
2018/08/27 07:46 退会済み
管理
[良い点] コンパクトな作品ながら、しっかり一つのストーリーに仕上がっていて、良かったです。 切なげなムードが漂っているところも印象的でした。
[一言] 失恋の切なさがとても伝わって来ました。「キラキラしたもの」って実は風前の灯だったりするんだなと、色々考えさせられました。 文章の書き方がとても軽快で良かったと思います。
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