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ラフィの【成長】

投稿直前に誤字脱字訂正して投稿したら……訂正されてないほうがアップされたw

このサイトでは、よくあるんですよね……訂正が反映されないのって。

訂正に訂正を重ねているときなんて、もう訳が分からなくなりますw

なので……よそ様の作品で誤字脱字を見つけた時、鬼の首を取ったような報告をなさる方がいらっしゃいますが、そういう事情も考慮されたほうが良いと思います。


………まあ私、感想をもらったこと、あまりないんですけどw

 その後の数ヶ月を、俺はリーンさんのお腹の中で過ごした。

 過ごした、と言っても俺は胎児であるためにお腹の中で過ごさざるを得なかった訳だが。

 退屈は退屈だけど……さすがに『ちょっと息抜きに外出』という訳にもいかないしな。

 その間に判明した状況を述べようと思う。


 その前にまず……自己紹介といこう。

 俺は……ラノベなんかでよくある、いわゆる【転生者】と言う奴だ。

 日本において【前世】を過ごした。

 俺の素性や死因については……まあ、【転生の女神】が同情して裕福な家庭に転生させてくれるという程度のものだ。


 そしてこの世界に転生……したのは良いが、未だに俺は母親の胎内にいた。

 つまり、転生したのにまだ生まれていない、ということだ。

 だが、既に俺には【自我】という物が芽生えているようだ。

 ……でなければ、このように状況を観察したり理解したり説明したりすることができないだろう。

 まぁ……自我とは何ぞやという問いもあろうが、そこは各自ネットで調べるなり自分に問いかけるなり学校の哲学科の教授に聞いてみるなりして欲しい。


 俺的には、生存本能があってそのための行動ができ、かつそのための行動を状況によって【自制】できれば犬猫だろうが蛇蝎だろうが自我があるということになる思うのだが。


 で。

 俺は今、リーンと言う名の母親の胎内にいる。

 へその緒を通じて酸素や栄養分を供給され、羊水と言う緩衝材に守られ、子宮と言う防御壁に梱包されている。


 正直、狭い。

 温度は、三七℃ぐらい……これが気温だったら発狂していただろうが、感覚としては少しぬるめのお湯につかっているような感じだ。


 視力はまだ発達しておらず、真っ暗なままで何も見えない。


 しかし耳はすでに完成しており、母親の声はおろか周囲の音や会話までもよく聞こえる。

 そして周囲の会話を精査するに……俺は五カ月を超えているらしい。


 このころには胎児はすでに人の形をしているはずなので……俺もきっと人の形をしているのだろう。

 もう少し前なら……目が顔の真ん中に一つ、鼻が頭の上にあり、掌には水かき、背骨からは真っすぐ生えた尻尾が伸びているという、時折マタニティ教育で新人パパが嘔吐するような姿をしていただろう。

 まあ、視力もないし周りも真っ暗なので確認することはできないが。


 だが。

『(ステータスオープン)』

 声帯どころか呼吸器自体が水没しているため声にならないが、俺はそう言って(いるつもりで)口を開いてみた。

 すると……俺の目の前には、RPGなどで見慣れたウィンドウが表示された。



  名前:--

  通称:ラフィ

  種族:人間(転生者)

  状態:胎児

   LV:--

   HP:--/--

   MP:--/--

   攻撃:--

   防御:--

   魔法攻撃:--

   魔法防御:--

   速攻性:--


 ウィンドウの中に書かれているのは……うん、思い切り日本語だ。

 そう言えば転生の女神は【ゲームによく似た世界】に転生、とか言っていた。


 『ゲームによく似た世界ってwwwテンプレ転生ものかよwww』という俺の突っ込みは、『そうですよ』の一言で瞬殺された。 あと、『逆にゲームのほうが参考にしたはずですよ、開発者が異世界からの転生者だったんですねー』という解説も。


 その説明に俺は、すとん、と納得したものだった。


 なるほど、【異世界転生】には【サクセスストーリー】がつきもの。

 なれば逆に、地球において【サクセスストーリー】を持つ者は【異世界】からこちらに【転生】したのかもしれない。


 世界で一番お金持ちである、あのパソコンのオペレーションシステムを開発した会社の創設者さんとか……リンゴが大好きなメーカーの創設者の人とか。

 他にも、歴史上重大な発明発見をした人とかも。


 なるほど、そういう人たちって、特に子供のころに【世界の常識】から外れた言動を見せたという逸話があるな……そしてそれは【異世界転生もの】で定番の、【周囲を驚かせる】というエピソードを思い起こさせる。


 子供なのに大人を言い負かす、子供なのに大きな木に登る|(そして落ちる)、子供なのに革命的な発明発見をする、子供なのに起業したりする、子供なのに画期的なアイデアを出す等々……いわゆる【立志伝】や【偉人伝】と【異世界転生もの】の共通のファクター。


 なるほど。

 どうやら【異世界転生】というやつは、地球から他の世界への【人材】の完全なる【一方通行】ではなく、【相互通行】……【異世界】と【地球】は、昔からある程度の人材の【交換】が行われているのだろう。

 そしてそれが科学技術の発展や、常識の変革に大きくかかわっているのかもしれない。


 それに……もしかしたら、過去の著名な宗教的主導者で、十字架を背負って丘を登った人や、海を割った人や、生まれてすぐに『天上天下唯我独尊』と口にした人なんかも、もしかしたら異世界からの転生者だったのかもしれない。 だって、なんかやってることが『チート』や『魔法』っぽいし。


 だから【転生の女神】が言ったように、【異世界もの】において……地 球 産 の R P G の よ う に ス テ ー タ ス を 確 認 で き る と い う の は ま っ た く も っ て 普 通 の こ と な の か も し れ な い。


 また逆に、歴史的な【発明王】とか【天才】とか言われる人が、 実 は こ っ そ り 『 ス テ ー タ ス オ ー プ ン ! 』 と か 言 っ て い た と し て も 不 思 議 と は 思 わ な い 。




 さて、その、俺の目の前に表示されたステータス画面。

 網膜投影されているのか視神経に干渉しているのか不明だが、異世界ものの定番【ステータスウィンドウ】はいま俺の目の前に表示されていた。

 けど……うん、世に異世界転生モノは数あれど、【状態:胎児】ってのは世界初じゃないかな?

 そして名前がないどころかレベル一でさえない、と……世に異世界転生モノは数あれど、現時点でおそらく俺は、最弱な転生者であることは間違いない。

 で、ステータス表示を続ける。


  ⊞早熟

  ⊞?????

  ⊞?????

  ⊞?????

  ⊞?????

  ⊞?????

  ⊞?????

  ⊞?????


 【?????】ばかりで不明だが……これはゲームで言うところに、キャラクターの特殊技能や才能を示す、いわゆるスキル一覧だろうか。

 まあなんにせよ、まだ母親の胎内にいるにもかかわらず俺がこうして自我を持ち、思考を巡らせているのは、言葉の意味からもこの【早熟】と言うスキルのおかげだろう。

 ……いやしかし……いくら【早熟】と言っても……まだ生まれてさえいないのに、自我の芽生えは早過ぎね?

 まあもしかしたら、本当は誰しも母親の胎内ですでに【自我】を持ち、【前世の記憶】をもって思考を巡らし、例えば出産と共にその記憶を失うのかもしれない。

 けどまあそれを言い出したら俺が母親の胎内にいるというのも、状況証拠の積み重ねだけの判断でしかないのだが。


 で。

 母親の名前がリーンというのは前述したが、俺の父親の名前はまだ不明だ。

 これは別にリーンさんが不義理な女性であったり、不幸な女性であったりするわけではない。

 周りが【勇者】という通称でしか呼ばないからだ。 ……敬称なのかな? リーンさんは【あなた】って呼ぶけど。

 つまり、俺の父親は【勇者】という仕事においてゆるぎない実績を残しており、【勇者】と呼ぶしかない、あるいは【勇者】と呼ぶにふさわしい、という事なのだろう。

 実際、【勇者】の最大にして唯一の業務、【魔王討伐】はすでに達成されたらしい。

 ……そうなるともはや【勇者】ではなく【元勇者】と言うべきなんだろうけどな。

 けど周りはそれでも【勇者】と呼ぶ。

 そこには尊敬という感情が揺るぎなくあるのだろう。


『(やれやれ、ずいぶん立派な人間であるのだろうが……俺がその次の世代であることを忘れないでいただきたいなぁ。

 往々にして、偉人の子供は大成しないと相場が決まっているというのに……)』


 俺はリーンさんのお腹の中、苦笑しながらそう(つぶやけていないけど)つぶやいていた。

 つまり、俺は【先代の遺産を食いつぶすロクデナシ】という人生を約束されたようなものだ。

 やれやれ……【転生の女神】め、裕福な家庭に生まれ変わらせてくれるのは良いけど、二代目の苦労とか悲哀は要らないんだけどな。


 あ……そうそう。

 裕福と言えば、この【勇者】。

 周囲の会話から察するに、結構な資産を持っているらしい。

 それは世界の半分たる【魔王軍】のトップを討伐できるほどの戦闘力に基いた【討伐した魔物からの収穫物】による収入をはじめ、なんでも【今までこの世界にはなかった商品】の販売、また国王から拝領した領地の経営などでかなり潤っているようだ。

 ……どこかで聞いたことのあるような話である。

 まさしく……【勇者】as俺のお父ちゃんは、昨今のネット小説にあふれる【テンプレ転生者】なのだろう。

 まあ未だ目蓋の裏どころか実際に目視したこともないので何とも言えないが……状況的にはそう(・・)なのだろう。


 だって……リーンさん以外に嫁さんがあと二人いるし!!


 日本で言う中学生だか高校生だかの年齢で、異世界で魔王を倒すほどの戦闘力を持ち、結構な資産家で、嫁が三人もいるとか……どこのなろう系主人公か。

 これで性奴隷がいないのが不思議なくらいである……まあ嫁が三人もいるのだから不要のはず、だ、よね?


 で。

 今日も今日とてリーンさんのお腹の中にいる俺である。


 そして、リーンさんは今日も聖女(as聖母)のお仕事をしていた。

 聖女のお仕事……それは【修道院】で神に祈りをささげることと、神の教えを説くこと。

 そして、併設された【施療院】と呼ばれる施設で、さまよえる子羊たちの魂と肉体を癒やすことである。

「まあ! 聖女リーン!? お休みになっていてくださいませ!!

 信者の皆様へのお勤めは私たちで行いますので!!」


 少し慌てた様子の声が俺の耳に届き、俺は目を覚ました。

 中年以上と思しきオバサンの声だ。

 明らかにリーンさんより年上であるはずなのに、明らかに敬意以上の気持ちのこもったバカでかい声をリーンさんにかけていた。 それはお腹の中で午睡を貪っていた俺が目を覚ますほどの。


「くすくす……そんなに気を使わないでください、修道院長。

 私とて神のしもべ……私にも、相応の役割というものがあります。


 それは即ち、信者の皆様へ心と体の安らぎを届けること。

 神の光の届かないところにも光を至りわたらせること。

 そのために私は【光魔法】や【回復魔法】というものを授かったのですから……」


 聞く者すべてに安らぎを与えそうな、安らかで温かい口調。

 それに……【修道院長】と呼ばれていた人物も、落ち着いた様子で応じる。


「……神の御意でございましょう。

 神は【聖女】にふさわしいリーンさまにこそ【聖女】の力を授けられたのですわ。

 その御意と【聖女】リーンの慈悲に……私は、感謝の祈りをささげることしかできません」


 そう言って、修道院長は【聖女】asお母ちゃんにその場で跪いた(ような気がした)。


「それに……【あのひと】にも言われたのです。

 少し運動した方がお腹の子にも良いらしい、と。

 ラフィも元気に育ってくれているようですし……うふふ、最近よく、私のお腹の中で元気に暴れているのです。

 この子が退屈しないよう、外の世界をいろいろ見せてあげたいということもあるのですよ」


 ……それはどうも、ご丁寧に。ありがとうございます。

 リーンさんのその言葉に、俺は思わず苦笑した。

 苦笑しながら……リーンさんの優しさに、思わず感心するのだった。


「(やれやれ……お父ちゃんだけではなく、お母ちゃんまでもが【偉い人】か。

 プレッシャーが半端ないなあ……けど、頑張らなくちゃいけないな。

 【こういう人たち】に囲まれて、俺は育てられているんだから……)」


 俺は妙に、殊勝な気持ちになるのであった。

 と……その時だった。


   ♪てれれれってってってー♪


 世界のどこかから、どこかで聞いたことがあるようなBGMが俺の耳に届いたような気がしたような気がしたような気がしたりなんかしちゃったりしちゃったったった。

 そして俺の視界に……【メッセージウィンドウ】が勝手に立ち上がった。

 ……いや。

 立ち上がりやがった、というべきか。


  『スキル【早熟】が発動されました。

   クラス【聖女】を取得しました。

   【回復魔法】を取得しました。

   【光魔法】を取得しました。

   【聖女の心得】(回復魔法無詠唱化)を取得。

   【大慈心】(回復魔法効果五〇%上昇)を取得。

   【醸造】(発酵食品製作可能)を取得。

   【揺るがぬ信仰】(状態異常耐性一〇〇%上昇)を取得。』


 はああああああああ!!!???

 突然発生したその現象とその内容に……俺は思わず絶叫(できてないけど)していた。

「まあ……今日もラフィが元気に暴れていますわ」


「おやおや……それはようございました」


 外の世界では、聖女asおかあちゃんと修道院長が、呑気にそんなことを言っていた。

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