【勇者】2
若干下ネタ。
R-15のタグはこういう筆が滑った時の保険ですw
「本当ニャ!?
ラファエラが目を覚ましたってゆーのは……あ、本当ニャ!!」
続いて室内に入ってきたのは、猫耳族のンマットさんだった。
「(………ずれてるずれてる)」
よほど慌てて飛んできたのか……俺の内心のツッコミのように、ンマットさんの例の【猫耳カチューシャ】がずれて傾いてしまっていた。
構わず、ンマットさんは俺の体を勇者から奪うようにして抱きかかえた。
「良かった……良かったニャ!!
目を覚まして……本当に良かったニャ!!」
そう言ってその場でぴょんぴょん跳ねて、ベッドに座ったままの俺の体を大きく揺さぶる。
……なるほど、一年半もの間ただ眠っていただけの俺なので実感はなかったが……看護する側にとっては、俺がこのまま目を覚まさないかもしれないという不安があったようだった。
何しろ……生後の数分間の間に三歳程度まで成長するという裏技を見せた俺のことだ。
それだけに、今度はそのまま目を覚まさないというかくし芸を披露したとしてもおかしくはない。
その不安の裏返しが、今のンマットさんの喜びようであるらしかった。
ぴょんこぴょんこ揺さぶられながら俺はふと呟いていた。
「いやしかし……生後、すぐに、三歳、程度に、なったのも、驚いたが、今や、五歳、程度の、体だ。
……それは、スキル、【早熟】の、せいだと、しても……よく俺、餓死、しなかった、な………」
大きく揺さぶられて途切れ途切れになる俺の声。
それに、【勇者】が応じる。
「ああ、それはおそらく……【聖女】のクラスの【特殊効果】でしょう」
「【特殊効果】?」
「ほら、あちらの世界でも、いろいろ逸話があったでしょう?
例えば【聖人】や【修行僧】が、修行中……何か月も水や食料を口にせずに生きていたとかなんとか。
そういう【眉唾もの】の逸話が。
おそらくはそれに比類する【特殊効果】……例えば、食事をしなくても生きていけるなどの効果が、【聖女】にはあるんでしょう、おそらく。
【神の奇跡】の代理人ですから……それくらいのものがあっても驚きませんね。」
なるほど……【勇者】のその説明に、俺はストンと納得した。
そしてそのまま視線で【ステータスウィンドウ】を操作する。
なるほど……【勇者】の言うとおり、俺のジョブは【聖女】が選択されたままだった。
そして……ある疑問を思いつく。
俺はそのままそれを口にした。
「いやしかし……俺がまだ【聖女】のお腹にいたとき、【勇者】と【聖女】でなんか話をしていなかったか?
『食うや食わずの生活だったのに、日に三度の食事がありがたい』とか、なんとか……」
「……え?」
俺の言葉に、【勇者】の表情が、ふいに凍り付いた。
「他にも、家族一緒に食事してて、その時の会話とか。
例えば………そうそう、『そろそろ子宮と胃袋が接触しててもおかしくないから、あまり熱いものや冷たいものを食べると【ラフィ】がびっくるするぞ』とか……」
「ええっ!!
た、確かにそんな話をしましたけど………それって完全に【胎内】の記憶ですよね!!??」
「………あれ? 言ってなかったっけ?
俺、五か月くらいの頃から記憶があるんだけど。」
「!!!!!!!!!!」
俺の言葉に……【勇者】は大きく動揺していた。
その衝撃がどれだけ大きかったのか………その顔がみるみる【赤く】なっていた。
その赤面っぷりに、俺は勇者が何で動揺しているのか、すぐに理解した。
「あ、ああ……ごほん。
えぇと………大丈夫。
俺………夜はほとんど寝てたから。 だから、その、たぶん……」
俺の言葉に……【勇者】はあからさまに安堵した様子を見せていた。
要するに【勇者】は……【夜の営み】を俺に覗かれていたんじゃないかと心配したらしい。
妊婦相手にとか………どんだけ性欲魔人なんですかね、【勇者】は。
まあ確かに……妊婦相手の性交渉自体は、胎児や母体の過負荷にならなければ、一応ご法度ではない。
ただし……。
俺はもう一度咳払いをしてから、勇者に声をかける。
「一応言っとくと……男の『おしるし』は、雑菌扱いだからな?
子宮を収縮させる作用もあるし。
期間中は何リットルでも問題ないとか、エロマンガの間違った知識を鵜呑みにするんじゃねえぞ?」
『おしるし』というのはもちろん婉曲表現だ。 情熱の白、とでもいうべきか。
俺の言葉に……【勇者】は愕然としていた。
「えっ!!?? そうなんですか!!!???」
「エロマンガ読み過ぎだろお前!!」
………俺は思わず一喝していた。
と………俺の体を揺さぶるンマットの腕の動きが止まった。
「ん………何の話をしてるニャ?」
その頭の上には、傾いたままの猫耳カチューシャ。
きゃるぽろぴれりん(擬音)と純粋な表情で小首をかしげるンマット。
「「なっ何でもありません!!」」
………意図せず、俺と【勇者】の声が被っていた。
なんだか……非常に悪いことをした気がしてしまった。




