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転生の女神さま

えぇと……改稿のため、更新が遅れております(汗

おかしいな……(汗

『ラファエラ・ミドーさん、ラファエラ・ミドーさん……えぇと、【太田垣雷蔵】さん、聞こえますか?』


 優しそうな、女性からの問いかけ。


 その声に……俺は意識を取り戻していた。


 あれ? なんか俺、寝てた?


 意識の突然の覚醒に、俺は慌てて体を起こそうとした。


 いかん、いかん……そういえば俺、仕事中にぶっ倒れたんだった。


 わが社においてはなぜか経理部に置かれた情報システム課(まあ手が空いた時は手伝えという意味だろうが)において俺は、経理仕事もしつつ、また社内のOA機器の修理などと言う作業もさせられ、なおかつ消防設備管理や救急救命の講習も受けさせられ資格を取らされながらも充実した毎日を送っていた。


 ブラック? とんでもない! 給料に見合った仕事をしているだけですよ!


 創業初期のメンバーの生き残りの一人でもあり、年収はわりと良いです……といっても独身なので、阿保みたいな税金を取られているんだけどね。【俺一人で老人一人以上は確実に支えてます】ってレベルの。


 つまり、お国のために働いていると言っても過言じゃない俺ですわ。


 といっても……親族関係や交友関係にゴタゴタを抱え、不運まみれの借金まみれの災難まみれのバカみたいな生活であったんだけど。


 おかげで、年収にあったレジャーだの車だのオシャレだのにまったく縁がなかった人生だった。


 唯一の趣味は和洋問わず【医療系ドラマ】鑑賞………なぜ医療系限定かといえば、だってほら、【医療系ドラマ】って基本的に専門用語が並びたてられるし、そういうのを見ていると自分が頭がよくなったような気がするじゃないか。 外出する金もなかったことだし。


 まあ、おかげで、胎児の生態だの下気道切開によるバイパスだの帝王切開だの妊娠中毒症だのに対する知識があったわけなのだが。



 で、その俺が……オフィスの床の上で、突然ぶっ倒れた。


 周囲の社員が俺の名を叫ぶ声はよく聞こえるが……体は全く動かない。 ただ……耳を水道管に当てたような音が聞こえる。


 過去に受けた教育や講習のお陰か即座に理解したし、それは合っていたのだろう……脳内出血だ。


 体が全く動かせないし……自身の痙攣やうめき声を、まったく抑えることができない。


 周りの光景や肉体の変化は知覚できるが……それに全く干渉できない。


 ……意識を保ったまま、【この世界】から切り離されたような感覚を味わっていたはずだった。


 そしてそのまま俺は……意識を失った。 そのはずだった。




『【太田垣雷蔵】さん、聞こえますか?』


 もう一度かけられたその言葉に、俺はその声の主の名を思い出した。


 【転生の女神】、メグルさま。


 そして同時に俺は……『転生の女神の名を知っていた』ことを思い出した。


『あ、あれ?


 メグルさまに『また』会ったってことは……俺、『また』死んじゃったんですか?』


 そう問いかけながら俺は目を開けた。


 宙に浮いているのか、何かの上に寝転がっているのか、まったくわからないほどの浮遊感。


 熱に浮かされているような感覚の中、俺は目の前に『転生の女神』の姿を見た。


 古代ローマのトーガのような衣装を着た、金髪の若い白人女性。


 絶対いい人。 それがよくわかる表情であり、雰囲気をまとった神様だった。


 俺の言葉に、メグルさまは柔らかな笑みを浮かべた。


『いいえ、そうではありません。


 お久しぶりですね、【太田垣さん】、いえ、【ラファエラ・ミドーさん】。


 ふふふ……【ラファエラちゃん】と呼ぶべきでしょうか』


 そう言いながらメグルさまはいたずらっぽく笑ってみせた。


『まぁ間を取ってラファエラさんで。


 ラファエラさん、ここは貴方の夢の世界……あなたはまだご存命ですよ。


 今日はアフターフォローというか、経過観察の面談に伺ったのです。


 ていうか……スキル【早熟】ですか。


 最後にお会いして一年も経ちませんが……ずいぶん大きくなられましたよね』


 それは当然、【早熟】によって異様に伸びた俺の手足を指して言っているのであろう……そう言って、メグルさまは苦笑を見せた。


 その姿に……というか【存在】に、俺は哀願するように叫んでいた。


『お、お願いです、メグルさま!!


 俺の『お母ちゃん』を………【聖女】リーンを助けてください!!!!!!』


 それは、自分でも驚くほどの衝動だった。


 口をきいたこともない、ある意味親しく接したこともない存在の為に……俺は必死で頼み込んでいた。


 俺の意識と体が接続されていたら……土下座でもしていたかもしれない。 そんな勢いだった。


 その俺の言葉に……メグルさまは少しだけ沈黙を見せた。


『残念ですが、私は……【転生】という【自然現象】を司る【神】。


 人の生死に直接関わることは、できないのですよ』


『でも、でも………お、お願いです!! 【聖女】リーンを助けてください!!』


『………』


 俺の言葉に、困ったような表情を見せるメグルさま。


 それに焦れるかのように、俺は言葉を続ける。


『そ……そうだ!!


 何なら、俺の体に【聖女】リーンの魂を【転生】………』


『いけませんよ、ラファエラさん。 それは、あなたの死を意味します。


 私は【転生の女神】であって、【医療行為をつかさどる神】でも【死神】でもないのです。


 それにあなたには………【この世界】における、あなたにしかできない役割があるのですから』


 優しい、諭すような口調………それに俺は無言になった。


 正しくはそれは………圧力さえ感じる優しい光。


 目の前の存在は、まぎれもなく【女神】だった。


 優しく圧倒されながらも俺は、ナントカ言葉を継いだ。


『俺の………役割?』


『もちろん、【俺TUEEE】に【俺SUGEEE】ですよ。


 異なる文化の交流により、新しい文化を。


 隔たる格差の解消により、異なる世界間の平均的な発展を。


 ……いずれどこかの世界で、異世界間を渡り歩く【技術】が開発されますからね。


 その時の異世界間の衝突に備えて【格差】を解消する……少しずつ混ぜ合わせ、できるだけ【平均化】したい………それが【転生の女神】の望みなのです。


 対等な関係は、対等な実力によって生まれますから。


 ……まあそれは、ナイショの話なんですが』


 そう言って、メグルさまはもう一度悪戯っぽく笑った。


『し、しかし…………』


 それでも何とか食い下がろうとする俺。


 それに、メグルさまはもう一度微笑む。


『……そろそろ、ラファエラさんのお目覚めの時間ですか。


 ふふふ、仕方ありませんね………じゃあ少し、【ネタバレ】をしましょうか。



   【 聖 女 】 リ ー ン は 、 復 活 し ま す 。 』

『 !!!!!!!!???????? 』


 メグルさまの言葉に………俺は絶句していた。


 【ネタバレ】という言葉にも驚いたし、その内容にも驚いた。


 【聖女】asお母ちゃんが、復活するということ……それはさっき俺が、指の隙間からこぼしてしまった出来事だった。


 それが叶うということに……俺は驚きと喜びを隠せなかった。


 だが同時に……ある思いが脳裏をよぎる。


 そもそも俺の【前世】……色々と【取り溢してしまった】ものが多かったからだ。


 思わず俺はそれを問い返す。


『それは………【いつ】ですか!!?? それにそのための【代償】は……っ!!??』


 俺の問い詰めるような言葉に構わず、メグルさまは柔らかく微笑んで見せる。


『ふふふ………やはり用心深いんですね、【太田垣さん】。


 いえ、ラファエラさん。


 大丈夫、あなたの今回の人生………そう悪いものではないですよ?


 といっても……次に目を覚まされた時、少々驚かれると思いますが』


『………………………?』


『あなたはまっすぐ……自分の思うように生きていけば、いいと思います。


 では……』


 優しく言う女神様の言葉をそこまで聞いたところで……俺の意識は暗転した。

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