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未熟な転生者

ちょっとタイトルを変更しましたー。

正確にはタイトルを変更するのを忘れてましたーw

※作者は本職の医師や緊急救命士ではありませんので、以下に書かれた文章に対し責任を持ちません。

※実際の救命活動及び医療行為は、専門の講習や教育を受けたうえで実施してください。

「え? え? 【クラス】? 持ってるって……え?

 【聖女】の【クラス】? え? え?」

 ためらいまくる勇者の言葉に俺は……応じなかった。

 構わず俺は、自分のステータスを再確認してみた。

 その前に……。

「おい勇者!! 心臓マッサージを忘れんなよ!!」

 そう叫ぶのを俺は忘れなかった。

  名前 :ラファエラ・ミドー

  種族 :人間(転生者)

  状態 :良好

  クラス:(未設定)

  クラス:(未設定)

  クラス:(未設定)  ▽

   LV:01

   HP:05/09

   MP:10/13

   攻撃:  03

   防御:  03

   魔法攻撃:08

   魔法防御:08

   速攻性: 10  ▽

  ⊞早熟

  ⊞?????

  ⊞?????

  ⊞?????

  ⊞?????

  ⊞?????

  ⊞?????

  ⊞?????   ▽

  ⊟聖女

   ┗【回復魔法】(回復属性魔法)

     ┗【回復】(体力をやや回復)

     ┗【状態異常回復】(状態異常回復)

     ┗【完全回復】(体力を完全に回復)

     ┗【仮死蘇生】(【仮死】状態を回復)

   ┗【光魔法】(光属性魔法)

   ┗【聖女の心得】(回復魔法無詠唱化)

   ┗【大慈心】(回復魔法効果五〇%上昇)

   ┗【醸造】(発酵食品製作可能)

   ┗【揺るがぬ信仰】(状態異常耐性一〇〇%上昇)

  ⊟ギャンブラー

   ┗【戦略眼】(判定テーブルが五〇パーセント以下の時警告)

   ┗【天運】(幸運値上昇)。

   ┗【運天】(判定テーブルが五パーセント以下の時自動発動し、成功確率が倍になる)

  ⊞錬金術師

  ⊞テイマー

  ⊞商人

  ⊞錬金術師

  ⊞?????

  ⊞?????   ▽


 今一つステータスの見方が分からないが……ふむ。

 俺の名前は【ラファエラ・ミドー】と言う名前になったようだ。

 ミドー……【御堂】かな?

 それはいかにも【転生者】っぽい、画数の多い苗字……あれ?

 昔、AV女優にそんな苗字の人がげふんげふん。

 そしてステータスウィンドウのツリー化した項目をめくっていき……俺は目的の【魔法】を見つけた。

「お、【聖女】あった……やっぱりあった!

 【仮死蘇生】だ!!

 えぇと……こうやればいい……のかな?」

 そして俺は、ウィンドウを適当に操作した。

 その操作方法はなんと、視点による視点操作だった。

 そして俺は視点でウィンドウを操作して、自分のクラスを選択し、使用可能なスキルを編集する。


  名前 :ラファエラ・ミドー

  種族 :人間(転生者)

  状態 :良好

  クラス:聖女

  クラス:ギャンブラー

  クラス:(未設定)  ▽

  ⊟早熟

  ⊟?????

  ⊟?????

  ⊞【回復魔法】(回復属性魔法)

  ⊞【光魔法】(光属性魔法)

  ⊟【聖女の心得】(回復魔法無詠唱化)

  ⊟【大慈心】(回復魔法効果五〇%上昇)

  ⊟【醸造】(発酵食品製作可能)

  ⊟【揺るがぬ信仰】(状態異常耐性一〇〇%上昇)

  ⊟【戦略眼】(判定テーブルが五〇パーセント以下の時警告)

  ⊟【天運】(幸運値上昇)。

  ⊟【運天】(判定テーブルが一〇パーセント以下の時自動発動し、成功確率が倍になる)



「おい!! なんでいきなり【聖女】なんだよ!!

 【聖女】は【修道女】系の最上位エリートクラス……うおっ!!

 クラススロットが三つも……って!! なんで【聖女】と【ギャンブラー】!?

 どういう組み合わせだよ!!??」

 立て続けに突っ込む【勇者】。

 ……ていうか、勝手に人のステータス見るな!!

  警告:

  目の前の対象がスキル【鑑定☆☆】を使用しました。

  全ステータスが閲覧されています。

  スキル【鑑定☆☆】の取得に失敗しました。

 直後に、メッセージウィンドウが表示される……反応遅いよ!!

 突っ込み返したい気持ちはあるが、今はそれを無視した。

 やりたいことはただ一つ……【仮死蘇生】だ。

 そして【聖女】を死の淵から呼び戻すこと。

 そして。

 そして。

 俺は……編集したスキルを確定させた。

 その瞬間、俺の周囲の空気が、劇的に変化した。

 それは……なんというか、俺の周囲の半径数メートルのエリアが、そこだけ『荘厳な神殿』になってしまったかのような。

 研ぎ澄まされた空気、沈黙を余儀なくされる静寂、それが俺の周囲に満ちる。

 そしてそこに……暖かい光が、柔らかく満ちていた。

 【聖女】と呼ばれる存在……そのために設えられた空間だった。

 ……え? 俺の体……なんか光ってる?

 その変化に驚いてきょろきょろする俺……その俺の視界に、修道院長たちが跪いて頭を垂れる姿が入った。

 口々に祝詞みたいな言葉を口にし……【神】の名を口にする。

 なんだろう、この光景………例えるなら、夏の夜なんかに田舎のお祖母ちゃんたちが地域の小さいお堂に集まって地蔵和讃を唱えてるうちに、本物の地蔵菩薩が降臨したかのような。

 あるいは……昭和のヤンキーたちの抗争中に、YAZAWAさんが歌いながら登場したかのような?

「ほ……本当に……【聖女】のクラスを持ってたんだな、ラファエラ……」

 息を飲んで、心底驚いた様子で呟く【勇者】。

 その姿を横目で見てから俺は、スキルを選択する。

「【回復魔法】より、【仮死蘇生】を選択……よし!!

 行くぞ、【勇者】!!

 【聖女】から離れろ!!」

「あ……ああ!! 任せたぞ、ラファエラ!!」

 俺の言葉に喜色を見せながら、勢いよく【聖女】の体から離れる【勇者】。

 それを確認してから、俺は一つ、深呼吸をした。

 そのまま、俺は小さく苦笑する。

 【仮死蘇生】か……それはすなわち、『死に立てホヤホヤのものなら蘇生させちゃうぞ♪』という、文字通りの【魔法】なんだろう。 『神の奇跡』の大安売りだ。

 やれやれ……今まで【聖女】の緊急救命処置に四苦八苦していた俺の苦労は何だったんだ?

 そう思うと、俺の苦笑はますます大きくなろうというものだった。

 そして俺は……表情を改める。

 そのまま俺は、ベッドに横たわったままの【聖女】の体を見ながら……【仮死蘇生】を選択した。

 【仮死蘇生】を実行しようとした……その瞬間だった。

「よし、行くぞ!!

 【仮死蘇…】………ふわっ!! 何だこりゃ!???」

 迷わず【仮死蘇生】を実行しようとした俺だったが……同時に俺の視界に、メッセージウィンドウが表示された。

  【ギャンブラー】専用スキル【戦略眼】による自動警告。

  現在実行予定のシーケンスの成功確率は〇パーセントです。

  【ギャンブラー】専用スキル【運天】自動発動。

  現在実行予定のシーケンスの成功確率は〇パーセントです。

「なっ!???」

 その表示に俺は……動揺を隠せなかった。

 慌てて、【仮死蘇生】の実行を中断する。

 そして動揺を隠せないまま……表示されたメッセージをもう一度見る。

 成功確率が五〇パーセント以下の時に自動警告してくれるという【戦略眼】。

 それが指示したのは『成功確率〇パーセント』……つまり、絶対失敗するということ。

 自動発動した【運天】(判定テーブルが一〇パーセント以下の時自動発動し、成功確率が倍になる)にしても同様……〇には何を掛けても〇にしかならない。

 それに、俺は愕然としていた。

 思考することもできなくなり、その場に立ち尽くすことしかできなかった。

「……?

 どうしたんだ、ラファエラ。

 【仮死蘇生】をかけるんじゃなかったのか?」

 急にその場に固まってしまった俺に、不審そうに問いかける【勇者】。

「ど、どうしよう……勇者……成功確率が、〇パーセントだって……」

 俺はその時どんな顔をしていたのだろうか。

 少なくとも、俺の顔を見た【勇者】の顔は、蒼白になっていた。

「な、なぜだ!?

 【聖女】は【修道女】の最上位エリートスキル……まさに『神の奇跡の代行者』の筈だろ!?」

 少し遅れてから……我に返った【勇者】が、心の奥底からの咆哮を上げていた。

「お願いだ……お願いだ、ラファエラ!!

 リーンを、リーンを………死なせないでくれ!! 失わせないでくれ!!」

 すがるような表情で叫ぶ【勇者】……そこに【魔王】を討伐した男の【自負】など、微塵もなかった。

 その魂の懇願……しかし、俺はゆっくりと頭を振ることしかできなかった。

「無理だ……。

 多分だけど……俺と【聖女】の『レベル差』が、開きすぎてるからじゃないかな………」

 俺自身が驚くほどに……俺の言葉には、力がなかった。

 そして【聖女】を助けることができないという事実が、俺の心を想像以上にさいなんでいた。

 『レベル差』による、成功確率のマイナス補正。

 確信はなかったが……しかし、俺にはそうとしか思えなかった。

 そうとしか思えなかったし、また、少なくとも【勇者】が俺の言葉に愕然としてしまうほどに、その可能性が大きいことなのだろう。

 【勇者】は……いやいやをするかのように、力なく頭を振る。

「そ、そんな……『レベル差』って……俺たちは、【魔王】を討伐したパーティなんだぜ………?

 それにラファエラが追いつくなんて……そんなの、いつまで待たなきゃいけないんだよ。

 ………『今』なんだ。

 必要なのは『今』なんだってのに………」

 そしてそのまま、【勇者】は無言になっていた。 その姿に、誰も声をかけられなかった。

 重い沈黙……必然的にそれが室内に舞い降り、満ちていた。

 満ち溢れ……誰もがそれに押しつぶされてしまっていた。

 どれだけの時間が経っただろうか。

 その場にいた誰もが、それを答えられなかった。

 もしかしたらほんの一瞬だったのかもしれない……あるいは、かなりの時間が経っていたのかもしれない。

 それが分からなくなってしまうほどの、重い静寂だった。

 【聖女】リーンの死……それが、その場にいた全員に重くのしかかっていたからだ。

「わかった………じゃあ、こうするしかない」

 ふいに、苦い口調で【勇者】が呟く。

 急な発言に……その場にいた全員の視線が集まった。

 それに構わず、【勇者】は静かにつぶやく。

「『【アイテムボックス】起動。

 【収納対象】、リーン。

 【オプション】、時間停止。』」

 その言葉に、誰もが息を飲んだ。

 それは俺も同様だった………【転生の女神】に授けられた『この世界の常識』を持つ俺にとっても、それは常識を疑うレベルの発言だった。

 【アイテムボックス】というのは……その名の通り、【アイテム】を【収納】する【魔法】、あるいはその機能を持つ【魔法の道具】だ。

 つまり【アイテムを収納】する要領で、【勇者】は………生涯の伴侶の遺骸を【収納】しようというのだ。

 そして実際……【聖女】リーンの遺骸は、まばゆい光を周囲にはなってから……【この世界】から消えてなくなった。

 おそらく、本当に……【アイテムボックス】に収納されてしまったのだろう。

「ゆ、【勇者】!! やめるにゃ!! リーンはモノじゃないにゃ!!」

 【勇者】のその常識はずれな行動に、ラファエルを腕に抱えたままのンマットさんが猛然と抗議していた。

 また【修道院長】もそれに追随する。

「そ、その通りです!!

 【聖女】リーンの【聖骸】をそのようにモノのような扱いをなさるなど……いくら【勇者】様とはいえ、見逃すことなどできません!!」

 その場にいた全員に非難の声を浴びせ掛けられながらも……【勇者】は全く動じなかった。

 そして静かな口調のまま……言葉を続ける。

「ああ、モノじゃない。

 死体だ………ただし、『死後間のないままの』死体だ。」

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 勇者の力ない言葉に……俺を含めて、その場にいた全員が絶句していた。

 一様に、絶句と……非難の視線を【勇者】に向けていた。

 しかし。

 俺は………【勇者】の行動の真意に気付いていた。

 それゆえに……その発想と決断力に驚いていた。

 つまり。

 『死後間のないままの』死体……それはすなわち、『蘇生可能な状態のままの』死体、ということだ。

 それが意味するところは…………。

「……ラファエラ」

 衝撃を隠せない一同を完全に無視し、【勇者】は静かに俺の名前を呼んだ。

 俺が応える間もなく、【勇者】は言葉を続ける。

「本当に……【蘇生】できない理由は、【レベル差】なんだな?

「………おそらく」

「だったら……リーンの遺体を【時間停止】したまま保存しておき……その間にお前を鍛えるしかない。

 時間はどれだけかかるかは知れないが……俺は、お前を鍛える。

 それはリーンのレベルを超えるまで……少なくとも、【蘇生】の可能性が出てくるまで」

 【勇者】の、その発想。

 その発想は……『この世界の人間』には、思いつかないことだろう。

 【仮死蘇生】ができる人間を、【仮死蘇生】ができる人間によって、【仮死蘇生】させるという発想。

 それはすなわち、同じ時代に【聖女】が二人いるという……基本的にはあり得ない事態が前提になってくるからだ。 この世界において【蘇生】というのはそれほど希少な魔法なのだ。

 しかし、【日本人】なら誰もが考えつくことかもしれない。

 なぜなら……【日本人】がよく嗜む【ゲーム】などにおいて、【蘇生】というのは、ごく当たり前といってもいい事象だからである。

 また……【日本人】には、ある事に心当たりがあるだろう。

 それはすなわち……【人工冬眠コールドスリープ】。

 現時点で治療不可能である病の治療を未来に託す【冷凍睡眠】や、SFなどでおなじみの宇宙船などで長時間を眠ったままで過ごす【人工冬眠コールドスリープ】。

 それを【勇者】は【聖女】リーンに当てはめようとしているようだった。

 その概念を知る【日本人】ならではの発想だった。

 【勇者】は言葉を続ける。

「ラファエラ………すまん。

 これはラファエラにとって……つらい日々になるだろう。

 しかし……それしか。

 それしか、方法がないんだ。

 ラファエラ………俺に、ついてきてくれないか」

 その、静かな言葉………それに俺は応じる。

「……望むところだ」

 俺は静かに、【勇者】の言葉に応じていた。

 それは………自分でも驚くほどの、決意に満ちていた。

 そして俺はそのままふいに襲ってきた限界……睡魔に意識を刈り取られ、その場に昏倒していた。

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