プロローグ(1)
……誰の声だろう。
明るくて元気な女の子の声。
「こーうめーい!」
と女の子が俺の名前を呼ぶ。
顔が見えない。だが自分の脳が、本能が、その少女を「美しい」と認識している。ここはどこだ…?
平原。見渡す限りに建物はなく、呼吸のたびに何とも言えない大自然の香りが鼻をくすぐる。
「小川があるよー!」
と楽しそうな少女。おいでおいでと言わんばかりのはしゃぎようにつられ、小川に入ってみる。
冷たい。当たり前の感覚だが、この感覚は嫌いじゃない。自分が生きている感覚を実感できることほど幸せなことはない。
「見て!こうめい!大きな魚!」
自分たちがいるすぐ近くを大きな魚が通りぬけていく。
「にらめっこしよ?」
と彼女を誘う。
彼女の顔を見てみる。見つめてみる。美しいと思う。
まるでモザイクがかかっているかのようにぼんやりとした彼女の顔。
目も、鼻も、口も、眉も。よく見えないが何故かそれを愛おしいと感じる。
俺は得意の変顔を披露する。
案の定、彼女は笑う。その顔がまた、綺麗だと思う。
しばらくして彼女はひとりで面白い形の石を探し始めた。
俺は一旦平原に戻り、ここはどこか考えてみることにした。
俺の家の近所か?それにしては緑が多すぎる。空には都会では見られないはずの鳥が飛んでいる。
そう、俺が鳥に意識が集中していた瞬間であった。
「助けてー!!」
彼女の悲鳴だ。俺は急いで声の聞こえた小川の方へ走る。
大きな体をした人。それに担がれるようにして見えなくなる彼女の小さな姿。
「………!」
俺は少女の名前を呼ぶ。なんという名前かはわからない。それでも名前を呼ぶ。呼ぶ。呼ぶ。呼び続ける。声を張り上げる。謎の悲しさに襲われ涙が出てくる。泣き叫ぶ。返事はこない。そして、黙る。考える。どうして自分は彼女の名前を呼んだ?なぜ自分は泣いている?その答えはすぐに見つかる。あの少女が、自分にとって大切な存在だったからだ。ならあの名前も顔もわからない少女が大切なのか。その答えはわからない。
「またこの夢か…」
俺の名前は「花江公明」16歳だ。変な名前だがよくある話で、俺の父親が大の三国志好きで「頭のいい人になってほしいから」という理由で三国志中の軍師孔明の名を俺にもつけたのだ。
この夢を見るのはこれが初めてじゃない。この人生で何度も見てきた、いや、見飽きた夢だ。
俺はこの夢以外の夢を見たことがない。「人の夢はその人が経験した印象に残っている体験が寝ている間に記憶処理の作用として見られる」なんてことをどこかの本で読んだ気がしたが、もしそれが本当なら、もっと現実世界を真面目に生きろよ俺……。
今は昼の二時半。部屋の片づけ中に居眠りをしてしまったらしい。
「もうひと頑張りするか…」
一人暮らしの男子高校生の部屋は散らかりやすい。きれい好きではないが、掃除は人生の基本である。
掃除を終えしばらくすると、ケータイに一通のメールが届いた。今時、用件を伝えるのにメールとは珍しい。
大半の人はSNSアプリを利用するものだと思っていたが、友達なんていた試しがないのでよくわからない。誰からだろうと思い、メールの送り主を確認する。
「……カミサマ……?」
何だこれは。どうやら俺宛に神様からメールが届いたのだ。なんてありがたいことなんだ。自分にはありがたすぎるのでありがたく削除させてもらうことにした。
初投稿です。
毎週火曜、金曜更新目指して今日もグータラ一狩りしてます誰か助けてください(泣)
今回はプロローグです!(1)とあるようにしばらくはプロローグが続きそうです…
これから主人公、花江孔明はどうなってしまうのか。
今回は異世界要素が全く含まれてなかったので、次回からは含められるように頑張ります。(含めるとは言ってない)
本当に、このサイトには面白い小説があふれてますよね…
私もそんな小説が書けるように頑張ります!
これからは何卒よろしくお願いします。