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誰だって、時の流れには抗えないっていう-7

「ドキ! 男だらけのパンツレスリングだ」


「ほぉ、具体的には?」


「サトウチとヒロシが城門前で突然パンツレスリングを始める。あまりのキモさで注意を引き付けている間に、残りの俺たちが城内に潜入して姫様を助けるって寸法よ」


「質問していいですか?」


「ダメです」


「ダメなのかよ。質問したいことがありすぎるんだけど」


「まあもっと具体的に言うならだ。仮に姫様を助けた段階で捕まっても、サトウチとヒロシが暴れまわっているせいで兵士の伝達が遅くなる、ってことはだ? 姫様に『この者たちが予告状を出した者です。捕まったのですから外に出てもいいでしょう?』と言わせれば一介の兵士なら『そうですね』としか言いようがないだろう?」


 よくわかっていないのか、ヒロシとレイチェルとミナは首を傾げる。


 つまり、言いくるめられてしまうのは魔に通じる者がいるせいで、そいつらがいなければ何も問題がないということだ。何も知らない普通の兵士であれば、姫様の言葉に従うしかないだろう。パンツレスリングとかわかりにくいことを言ってしまったが、要は魔に通じる者の注意を逸らせればいい。


 俺だけじゃなく、レイチェルとセナを連れて行くのは、万が一魔に通じる者みたいなのが居た時、倒してしまえるようにするためだ。


「なるほどな、姫様の周囲に張っている魔の者とやらを、引き離すための作戦か……悪くはない。向こうも向こうで、お祭り当日となれば、何としてでも姫様を外に出さまいと躍起になっているだろうからな。怪しい人物が姫様を求めて暴れているとなれば……そっちに注意は行くだろう。その間に攻め込むというのは変な話ではない」


「さすがサトウチ、わかってるじゃん」


 この作戦の肝となる部分を理解し、サトウチは感心したのか笑みを浮かべて頷いた。


「だが俺は、パンツレスリングをしない」


「…………は? 何言ってんの? お前がパンツレスリングしなきゃ、誰がパンツレスリングするんだよ?」


 痛いほどの視線が俺に注がれるが、俺は何も気にしない。困るなぁ、俺がその程度で折れると思われては困るんだよなぁ?


「いいじゃんお前とかもう既にペドなんだからさぁ! そこにちょっとホモが加わってホモウチ君って言われてもいいだろ? な?」


「ペドとかホモってなんだ?」


 どうやらこの世界では一般的な言葉ではない様子。さりげなくレイチェルたちにこいつの正体を明かそうと思ったが失敗した。


「むしろ、姫様の周囲にいるだろう魔に通じる者とやらを倒す要員として、サトウチは城内に入ってもらった方がいいんじゃないか?」


 そこで、ヒロシがサトウチに糞みたいな援護射撃を始める。俺、そういう正論嫌い。


「わかってないなぁ! 俺は万が一ヒロシに危険が及んだ時にね? サトウチがヒロシを守ればいいんじゃないかと思ってね⁉」


「じゃあお前とサトウチでいいんじゃねえの? むしろお前よりA魂の宝具持ってる分、俺が向かうほうがいいんじゃないか?」


「わかってないなぁ! 君は本当に何もわかってない!」


「何がどうわかってないのか説明して。論理的に」


「君は本当にわかってない! わかってないよ!」


「言えよ」


 これは困った。いやだ、なんで俺が城門前で突然誰も求めていないパンツレスリングとか意味不明なことしなきゃいけないの?


 これは困った。俺がやるくらいならもういっそ世界滅んでくれていいレベル。ヒロシがわがまま言うから何か代案を考えないと……しかし、パンツレスリング以外に良い案なんてあるだろうか? いや、ない。


 どうすればいい……このままだと世界が滅ぶ、どうにかしてこの二人にパンツレスリングをやる気になってもらわないと――、


「おお?」


 どうするかひたすら悩んでいたその時、俺の視界にふと見覚えのある後ろ姿が目に映った。


「ん? どうしたんだセイジ?」


「いや……ちょっと」


 そいつは、俺たちと同じく宿屋の食堂で、落ち込んでいるのか背中を丸くしながら一人食事をとっていた。茶髪ロン毛で身長がサトウチと同じくらいに高く、豚のように丸々と太った体格のせいで存在感を放っている。


 そこまでなら似ている人はいくらでもいるだろう。だが、服装が明らかにこの世界の住人じゃない。なんというか、どちらかという、俺たちの世界の学生服を着用しているのだ。というか、俺の母校の学生服だった。


「いの……うえ?」


「え?」


 覗き込むように俺はその人物に語りかける。すると、ロン毛の男性は振り返ってその顔を見せた。そして、容姿が明らかになる。


 糸のように細い目が特徴で、どこか女の子にモテそうな可愛らしい顔をしたその男は、紛れもなく、俺も、ヒロシも知っている男だった。


「え? マジっすか⁉ せ、先輩⁉」


 井上いのうえ 隆二りゅうじ、俺が通っていた高校の後輩で、絶対に部活に入らなければいけないルールのある高校だったため、俺とヒロシが暇潰し目的で所属していた漫画研究会に所属していた後輩でもある。


「おいおい! 何で井上がここにいるんだよ!」


 井上の姿を目にして、ヒロシも席を立ちあがって目を見開く。


「いや! それこっちの台詞っすよ! どうしてこんなところに先輩たちがいるんすか⁉」


「まあ俺とヒロシがここにいるくらいだし、井上がここに居ても変ではないんじゃね? あれでしょ? シズカちゃんとかいう糞女神って俺たちのこと適当に召喚してるんでしょ?」


「そうだとしてもできすぎな偶然でしょう⁉ え、うわー! マジっすか⁉ え? 二人はいつからここにいるんですか?」


 ずっと一人で行動していたのか、井上はほぼ見えない目を輝かせて嬉しそうに俺たち手を握ってきた。めっちゃジメッとしてる。


「えーっと……誰?」


 突然立ち上がって感動の再開する俺たちについていけず、レイチェルが俺の背中をトントンと叩いてそう呟いた。


「うぇ⁉ 誰っすか、この美人⁉」


「え! び、美人? 本当? いやー……私も実は最近そうじゃないかって思ってたんだよね」


 井上の率直な言葉をぶつけられて、レイチェルはまんざらでもない緩んだ顔を見せる。気をつけろ井上、中身はお花畑だゾ。



――――――――――――――――――――――――――――



 それからとりあえず、どういった経緯を辿ってきたのか俺たちと井上で情報を交換し合った。井上は運よくこの王都付近に召喚されたらしく、ここ二ヶ月間くらいずっとダラダラと情報を集めながら、日雇いのバイトを探して過ごしていたらしい。


 この世界に来たタイミングは、どうやら俺たちとそんなに差はないとのこと。

今年もありがとうございましたー

来年もよろしくお願い致します!

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[良い点] 井上きた [気になる点] 井上じゃないか [一言] 井上待ってたよ、、
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