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第二章 死を覚悟した男のあがきと糞ガキ

 突然だが、俺はテンプレートが大っ嫌いだ。


 勘違いしないでほしいが、俺はテンプレートが悪いものだとは思っていない。むしろ、なくてはならないものだと思っているし、実際俺も、そのテンプレートに頼りまくって生きている。


 だが、テンプレートの多くは効率化や、量産を目的としていることが多く、そこから生まれる新たな発見は少ない。


 つまり俺はそれが嫌なのだ。テンプレート化されたものに工夫を加えて新しいものを生み出しても、そこから大きな変化はなく、想定の範囲内でとどまることが多い……おっと、難しいことを言っているように思えるがこれは案外単純な話だ。


 つまり何が言いたいかって言うと。どんな状況でもふざけ倒したい。ただそれだけ。


「くく……くはははは! まさかこうも簡単にことが運ぶとはな! やはり私の考え通り……人間なぞ大したことはない! 我が第二十六小隊だけでも充分にこの程度の村は制圧できる!」


「隊長。捕らえた人間は殺さないので?」


「魔界も人間との戦いで消耗している。労働力が必要だ……この人間どもは家畜として魔王様に献上する予定だ。こいつらのこれからを考えると同情する……死ぬまで働かされ、死ぬ間際になれば食料としてぐちゃぐちゃに解体されるのだからな」


 俺のすぐ近くで物凄く物騒な話をしている。今の話を聞くに、媚びを売りまくって魔族に取り入れば最悪助かると考えてたけど無理そう。


 ちなみになんで俺が村の中に入って建物の物陰に隠れているかというと、なんとか俺が助かるための方法はないかと、一か八かの突入を試みたからなのだが、早速一つの可能性を潰されてちょっとビビり始めている。


「ふははははははは! 全ての人間が魔族の手中に落ちるのも時間の問題だな!」


 魔族の数はざっと三十くらいだろうか、捕まっている村人たちも同じくらいの人数だが、恐らくほとんどに戦う力がないせいで抵抗出来ないとみた。


「くそ……魔族め」


「誰か……誰か助けにこないのか?」


「レイチェルさんは……まだ戻らないのか?」


「いや……レイチェルさんでもこの数じゃ、サトウチさんだって手出し出来なかったのに」


 村人はもれなく全員表情を暗くして必死に助けを待っている。その気持ち凄くわかる。俺もむしろ助けて欲しい側だから。しかし、普通に考えれば助かる見込みはないに等しい。


 故に、普通じゃダメなのだ。そう、普通の助け方ではもう助からない。



「はい注~~~~~目~~~~!」



 勢いよく建物の影から飛び出し、俺は魔族たちからも村人たちからも丸見えの正面に立つ。


「超強いチート能力を持ったイケメン爽やかボーイが助けに来てくれる薄い展開だと思った? ざんねぇぇぇぇえん! 俺でしたー」


 俺の姿を見た瞬間、村人全員が「誰だこいつ」と言いたげな怪訝な表情を浮かべ、魔族全員がすぐさま武器を構えて俺に向ける。当然の反応だ。


 ちなみにだが、普通じゃ助からないから、奇をてらったような行動しているわけではない。


 なんかよくわからんが、時間さえ稼いでくれたらヒロシが「なんとかしてやんよぉ! うーひょひょぉー」とか勇ましいことを言っていたので、どうせ黙ってても死ぬのだからとこうして身体を張って時間稼ぎをしているのである。


 途中、敵の軍門に下ろうとも考えたが、どうやら無理っぽいので諦めた。


 さて、魔族とはいえ軍を語るのであれば、普通の方法で時間を稼ごうとしても多分稼げない。危険分子はすぐさま排除するのが世の常だ。なのでぜひ、ここからは交響曲第9番「新世界より」第4楽章でも聞きながら俺の雄姿を見届けて欲しいと思う。


「何者だ……?」


 早速、隊長と呼ばれていた黒い長髪の魔族が俺を警戒して声を掛けてきた。


 それに反応して俺はすかさず皮肉った笑みを浮かべる。


「何者だと思う?」


「少なくとも貴様は人間。我々の敵だ……なら、誰が現れようが関係ない! やれ!」


 予想外の展開、しかし――、


「俺にばっかり……気をとられていていいのかな? 背中が…………――ガラ空きだぜ?」


 これでもかというくらいカッコつけながら、俺は首をくいくいと後ろを気にするように動かしてそう吐き捨てる。


 すると、魔族の連中は「しまった!」と危機を感じた様子でこぞって背後を振り返る。しかし、背後には村人たちがいるだけで何もいない。ちなみに、マジで何もない。


 だがこれでいい。少なくとも今ので、魔族の連中も言葉で騙すことができるのがわかった。正直今ので騙せなかったらどうしようかと思ったところだ。


 どれだけ時間を稼げばいいかはわからないが、これでヒロシがなんとかしてくれなかったら俺はあの世であいつを探し出して絶対殺す。


 つまりあいつはこの世とあの世で二回死ぬことになるだろう。


 とにかく、普通のやり方では時間は稼げない。だから俺は今まで培ってきた、人を煽る力、媚びを売る力、騙す力、気持ちよくおだてる力等々を駆使して……この連中を騙しきる。


 もう全てがビックリするくらい嘘の、嘘から始まって嘘で繋ぎ、煽りで引っ掛ける俺の糞みたいな『実際のところ命の危機にハッタリは通じるのか選手権~失敗すると即死亡~』が始まった。


「ふははははぁぁぁ引っ掛かったなアホォがぁぁ! お前たちは唯一俺を倒すことの出来たチャンスをたった今失ったんだよこのマヌケがぁああああああ!」


「き、貴様あぁぁぁあ!」


 そして俺は、魔族の連中が背後を振り返っている間に、目の前にパチンコ台を見せつけるようにセットする。すると魔族たちは背後を振り返った瞬間にいつの間にかセットされていた向こうからすれば得体の知れない物体を目にして、してやられたと言わんばかりに悔しがっていた。


「残念だったな……お前たちはもう俺には勝てない。俺の魂の宝具『CRガチムチ番長5』はあまりの重さにセットするのが大変だが、セットしてしまえばもう止めることはできねえ!」


「魂の宝具だと……? 貴様、女神シズカールが呼んだ来訪者か⁉」


「だったらどうした? 魂の宝具がセットされた今、お前たちに勝ち目はない。とは言っても俺はこの世界に来たばかりでまだお前らのことも良く知らんし、女神に呼ばれたからって人間側に着くとも決めてない……」


 予想外の言葉だったのか、その一言で魔族だけじゃなく、村人たちも「な、なんだよ……こいつ味方じゃねえのかよ⁉」とどよめき始めた。

本日の更新はここまでです!

準備が間に合わず、連続投稿大変失礼いたしました!

LV999の村人とあわせて今後とも、俺⁉イン・ザ・ファンタジー、略称【俺ファン】をよろしくお願いいたします!

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