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二番煎じの転生者  作者: きゅうとす
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魔法と前転生者

魔法が使えました。


でも、魔素の謎は深まるばかりです。

承章1 始まりの村 アデル③


僕の名前は八神直哉。

どこにも居る普通の中学生だ。


今、ちょっとピンチだ。メリダさんの後からやってきた男に詰問されているからだ。


その男は村長のメイクンと言った。52歳の働き盛りで、僅か200名足らずの小さなアデルと言う村をこれまで無難に護ってきた。人手が足りないからと積極的に現場で指揮を取ってきたから、そのため住民からの人望も厚い。ただ、せっかちで単純なところは誰からも生暖かい目で見られていた事は本人は知らない。


「君は何者だ!どこから来た。何の目的が合ってこのアデルにやって来たんだね!アデルをどうするつもりなんだ!」唾を飛ばして詰め寄って来る。

「ちょっと待ちなよ、メイクン。」メリダさんが村長に口を挟む。

「あんたが顔だけでも見ておきたいと言うから連れてきたんじゃないか。そんな詮索をするなんてあたしを信用していないのかい?」


メリダさんは僕を見ながら村長の話を止めようとしてくれた。信用して貰えてるようで嬉しい。

「まあ、あたしも少しはナオヤのことを戻ってきたら聞くつもりだったけどね。」駄目じゃん。


なんて答えたら良いのか頬を掻きながら困っていると、メイちゃんがズバリと言ってしまった。「ナオヤお兄ちゃんって始まりの木から来たんじゃ無いの?」


メリダさんか難しい顔をして僕に問い掛ける。「そうなのかい?ナオヤ。」


今更隠しても無駄なようなので正直に言うことにした。「気がついたら大きな木の下に居ました。あれを始まりの木と言うのかな?なぜ、僕があんな場所に居たのか僕には分かりません。出身地や旅の目的なんて記憶に無いんです。どうするもこうも無くて、どうしたら良いか教えて欲しいくらいですよ。」


少し記憶喪失を装うことにした。だって神様に転生させて貰ったなんて誰も信じてはくれないだろうから。

「誰かを探して旅をしていた気がするけど、それまでの記憶が抜け落ちていて僕も戸惑って居るんですよ。」


そんな僕の告白に驚くというより困惑しているような村長とメリダさんだった。メイちゃんは自分の言ったことが当たっていたと何故か喜んでいた。


暫く黙っていた後に「う~ん、5年前の彼と同じだと言うのか!!」と村長が言うと、メリダさんは「あいつに傾倒していたあんたが警戒するのも分かるけど、ナオヤはあいつとは違うよ。あたしはそう思う。」


5年前に同じように転生して来た者がいたんだな。神様の言うとおりだ。彼と言うことは男で、村長が苦虫を潰すようなことをやらかしたんだろう。

「彼って誰です。教えて貰えませんか?もしかして僕の探している人なのかも知れません。」


赤くなったり青くなったりしていた村長の顔色が暫くして落ち着くと「彼の事はメリダにでも聞いてくれ。騙された当事者の儂からは言いたくない。」と言った。


とことん思い出すのも嫌な事があったのだろう。まあ、詳しくはメリダさんが教えてくれるだろう。

メイクン村長は捨て台詞を吐くと来たとき同様さっさと帰って行った。


「さて、それじゃあ食事の用意をしようかね。メイ、手伝っておくれ。まあ~ナオヤは後でゆっくり話をするとして客間で待っていておくれ。」そう言うとメリダさんは夕食の準備を始めようとして近くのたらいに入っていた水を見て言った。

「おや、メイったら用意が良いね。」

只の偶然だった。



客間はベッドと小さな棚があるだけの六畳間くらいの洋間だった。ベッドに腰掛け僕はインベントリーを開いた。そして、魔法を解明するためのアイテムを取り出した。

メイちゃんを助けた時に使ったあの蔦である。後で調べようと思ってしっかりインベントリーに収納しておいたのだ。表示は『魔法の蔦』である。

魔法の蔦を左手に取りあの時感じた力を意識する。腕全体に感じたものが集まって蔦に移動して行くのが分かる。蔦が生きている物のようにしなやかに動き、するすると20センチ程伸びた。「やはり」思わずにやけてしまう。そのまま蔦をベッド横に置いておく。


今度は腕の中だけを感じるようにして動かさない。反対の右腕も同じ感覚で捉えてみる。

両腕を感じていると肩から胸、腹、腰、足、頭まで同じ感覚になった。

神経が過敏になったような、何かが身体全体を包んでいる感覚を覚えた。

身体全体にある何かを左手に集めようとするとそちらに凝縮していくのが分かった。

「多分、これが魔素なんだろうな。凝縮させている意志に感応させる力が魔力。なら」僕は左手を広げて凝縮した魔素を手のひらの上に移動させた。

「炎の使い手ナオヤが命じる、炎よ発現せよ。」


魔素と思われる固まりが発光して炎になった。

「成功だ。」

やっぱり魔力と言うのは魔素を意志で操る力の事なんだ。と言うことは

「炎よ、炎の使い手ナオヤが命じる、魔素に戻れ!!」


手のひらの上の炎が消え何かが手のひらからうでの中に戻って来るのを感じた。

更に推測を進める。さっきは魔素の凝縮を意識したけど蔦のような紐状に出来ないか確かめてみる。

身体全体の魔素を左手の人差し指から紐のように出ているイメージをする。

人差し指から出ている魔素が何故か見えた。転生者だからだろうか?

そのまま近くにあった蔦に潜り込ませて、蔦が伸びてゆくように魔力を発揮させる。詠唱はしない。

するすると10センチ程伸びた。成功だ。

直接触れなくても魔力を発揮出来た。


今度は身体全体を広げるように薄く魔素を出してみる。魔素は部屋の壁を通り抜けてメリダさんの家全体を包むまで広がった。魔素が無い場所が何カ所かあった。大きなものはどうやらメリダさんらしい。近くの小さなものはメイちゃんだろう。どうやら地下もあるようでその隅に小さなものが居るらしい。ネズミだろうか。


ハッと気づいて鑑定を掛けてみた。腕時計のスクリーンが広がる。

「魔ネズミ:人家に住み着く魔力を帯びたネズミ。魔法は使わない。」


おお、やっぱり出来る。鑑定を掛ける対象に魔素が繋がって鑑定の魔法が発動しているんだ。昼間の鑑定でも僅かの魔素が出ていたんだろうな。

あれ、まさか人にも出来る?

メイちゃんと思われる所に向けて鑑定を掛ける。

「メイ:メリダの孫。父メーリングと母メディアの一人娘。水魔法の初級。8歳。 ・・・ステータス表示をしますか? [yes/no] 」


えーと、ね。どうしよう。

じゃあyesで。


メイ:村娘

HP:15

MP:15

SPP:5

SKP:5

・・・スキル表示をしますか? yes/no


ははは

やっぱりyesでしょうね

メイ:スキル

探索 レベル2

採集 レベル3

我慢 レベル1


子供だから余りスキルは無いんだな。薬草取りをしているからその関係のスキルはあるんだ。

SKPはスキルポイントを表して居るらしい。でも、自分のスキルは見れないんだから付与でき無いんだよな。うん、意味がない。

SPPはスピリチュアルポイントらしい。一体どうするものなのか分からん。


となると自分にも鑑定出来るのかな?

鑑定、自分

「八神直哉:地球からの転生者。14歳。前の転生者を調査している。

火魔法初級

木魔法初級

探査魔法初級

・・ステータス表示をしますか? [yes/no] 」


yesだ。

ナオヤ:二番煎じの転生者

HP:20

MP:10

SPP:1

SKP:1

・・・スキル表示をしますか? yes/no


yesだ。

ナオヤ:スキル

タイム レベル1

ストップ レベル1

インベントリー レベル1

鑑定 レベル1

プロテクト レベル1

遠隔 レベル1


やっぱり蔦の魔法は木魔法なんだ。納得したところでメリダさんから食事の準備が出来たと声が掛かった。



食堂に行ってみる。

メイちゃんとメリダさんはもう座っていた。僕の席はメリダさんの正面だった。

アセアセ、何を聞かれるのやら。


「さあさ、ナオヤも座って食べな。大したもんじゃないがね。」

テーブルには野菜こんもりのスープとオーク肉の炒め物とパンと飲み物が用意してあった。昼間と同じだった。

「ありがとうございます。いただきます。」と僕が言うとメリダさんは「変わった挨拶だねぇ~」と感心していた。


メリダさんから今日回ったところの感想を聞かれたので本屋で読みたい本があった事を言うとメイちゃんが横から口を出した。「ナオヤお兄ちゃんってば『この世の始まり』の童話を読みたがって居たんだよ!メイが持っているから貸してあげるね。」ニコニコ顔で言うのでお願いしますと頭を下げた。


「じゃああたしの持っている本で良かったら貸してあげよう。家から持ち出さなけりゃ良いさ。」とメリダさんが言ってくれた。おお、魔法使いの本だから期待出来る!


「で、ナオヤに質問だ。あんたはこれからどうする積もりだい?メイクンの言うとおりに直ぐに出て行くのかい?」

「出来ればもう少し居させて貰えるとありがたいですし、彼がこの村で何をしたのか知りたいです。それが今後の自分のするべき事を教えてくれるような気がします。」

真っ直ぐメリダさんを見詰める僕を見てメリダさんは笑った。

「良いさ、好きにおやり。 ・・・時にさっきおまえさん探査魔法を使ったね?」

やはりメリダさんは気付いたらしい。

「はい、あれが探査魔法だったんですね。」

「知らずに使うかね、驚きだね。」

「鑑定もしちゃいました。メイちゃんにですけど」

目をむいてメリダさんは「何だって!」と言った。

余りの勢いに驚いた僕は思わず「ごめんなさい、断りもなく」と謝った。やっぱり無断でするのはマナー違反だよね。


「いや、いや。 そうじゃなくてね、鑑定持ちだと言うことに驚いたんだよ。鑑定の魔法だけで食って行けるよ。大きな街まで行かないと鑑定持ちは居ないんだよ。」

僕はメリダさんの言葉で鑑定が希少な能力(スキル)だと知った。

「よっぽどの事が無い限り秘密にしておいた方が良いね。」メリダさんの言葉は僕の心に深く染み込んだ。


「後は彼のことだね。」

メリダさんは深いため息と共に話し出した。






いったい彼は何をやらかしたのでしょう。


メイクン村長が怒り狂う訳とは?

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