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二番煎じの転生者  作者: きゅうとす
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魔獣襲来

のんびり荷馬車の旅の僕の前に立ちはだかる事件とは


承章2 混乱都市 バパルカ⑤


僕の名前はナオヤ、八神直哉。前転生者の彼の足跡を追って今は、バパルカ目指して旅の途中だ。


荷馬車の旅は順調だ。

藁を敷いてあっても尻は痛くなる。時たま歩いて付いていける程のスピードだからかなり遅い。

荷馬車の御者をしているイーベンがこれから行くバパルカの貴族について説明してくれる。


ラサメア辺境伯爵は元冒険者であった。それも名の知れたSSクラスの冒険者である。

その腕を買われて15年程前に辺境の森の魔物から国を護る伯爵となったのだ。現役を退いて10年以上ではあるがその腕の衰えはほとんど無いと言われているのだ。

イーベンが知るラサメア辺境伯爵の二つ名は“刃斬卿“であり、ラサメアに斬れぬもの無しと恐れられていたという。

ラサメア辺境伯爵の身長はほぼ2メートル、体重100キロを越え、細マッチョな体格をしているので誰もがラサメア辺境伯爵の前では萎縮してしまうのだと言う。

まあ、まず会える訳が無いけどねとイーベンは笑った。



道すがら僕は様々な魔法を試している。マップと連動出来るように高所からの視点を得られないか、得るとしたらどんな風にすれば良いだろうと考える。

鳥の視点を得られないかと魔素で鳥を包んでみた。鳥の波長に合わせてみたが、鳥を操る事が出来ても視覚を共有出来なかった。

魔素に視覚を与えられないか工夫してみて魔素を目の形にしても見る事が出来なかった。

目に魔素を集めて視覚を強調する事で望遠鏡を覗いたみたいに見ることが出来た。

レーダーを使って見る事が出来ないか視覚の意識を載せて魔素を飛ばしてみた。意識が拡散して異物の存在を感じやすくはなった。初めての魔物であっても強い弱いが分かるようになった。

視覚の意識があると存在感知が強まるようだった。また、普通より遠くまで感知出来るようだった。


でも、視覚を飛ばすことは出来なかった。

もっと魔法のヒントが欲しい。魔法の経験が欲しい。

魔法は奥深い。


レーダーの性能アップは出来ないだろうかとパルス的に飛ばした魔素の波長を長いものに変調している内に、最初の波長に合わせて次を2倍の波長にしてみたところ、魔素が届く範囲が格段に広くなった。どうやら魔素が強調しあっているらしい。


魔素の届く限界を見定めようとしている時、遠くで戦いが起きているのを感知した。

魔素の反応から3キロ程離れた小森の中で誰かが魔物のようなものに襲われているようだった。

イーベンにその事を伝え、『瞬足』のスキルを使って現場へ向かった。瞬足のスキルは足の強化魔法と同じで通常の2倍ほどの速さで走る事が出来る。

おおよそ5分弱で近くまで来た。50メートルくらい離れたところからその魔物は見えた。


高級そうな黒の馬車が転倒していて、馬車を背に大男がその魔物と戦っていた。

大男の大刀が魔物の振るう黄色っぽい鞭を打ち据える。ギャン!と言う金属同士が当たるような音をさせてひっきりなしの魔物の攻撃を防いでいる。

僕はレーダーで捉えていた魔物に魔素の塊をぶつけた。

体内に進入させて内部から破壊しようと考えたのだ。

ぶぅうおん~と言う感覚と共に魔素が弾かれる。

魔素が防がれるなんて初めてだ。

魔物はまるで3つの頭を持つ巨大な蜘蛛のようだった。脚の数も8本でなくもっとあった。

一つの身体から無数の触手が伸び、うねうねしていた。脚も身体も暗褐色をしていて無数の体毛で覆われているようだった。その高さおおよそ3メートル。

魔素はこの体毛が分解発散させたらしい。


馬車の周りには魔物にやられたらしい人達が数人倒れていた。

僕は森の中に魔素を伸ばし、蔦魔法を発動させた。数本の蔦を寄り合わせ筒を作る。小石を魔素で包み込み、銃弾を作る。直径5センチもあると銃弾とは言えないかも知れない。

蔦の筒に石の砲弾を入れて蓋をした。

蔦魔法の筒を魔物に向ける。魔素を蔦の中に流し、砲弾を回転させながら加速させた。

ぎゅぅおん~と音をさせて魔物の頭部にめり込む。

蔦筒から見えない魔素糸を通して砲弾を破裂させた。

砲弾は見事に魔物の頭部を破壊し、魔物は動かなくなった。

大男は暫く構えを解かなかったが、魔物が動かないのを確かめて、僕に声を掛けてきた。

「助かった!今のは何の魔法だ?」

僕はしれっと「木魔法の一種で僕のオリジナルです。」と答えておく。

魔物を遠回りしながら倒れた馬車の方に近づく。

大男も慌てて馬車に駆け込んだ。馬車を覗き込むと老齢の執事らしき男が倒れていた。


回復の術者が魔法を掛けているが回復が足りない。顔色は土気色だ。助からないだろう。

ふと気づいた事があった。プロテクトの魔法は他人にも掛けられるのだろうかと。

執事の体に触れて魔素を傷口近くに行き渡らせる。

プロテクトと心の中で唱える。

傷口辺りから入り込んでいた木の破片が押し出されて来た。木の破片を異物と認識したようだ。上手くいった。


回復の術者が傷口を塞ぐ魔法ヒールを掛ける。執事の顔色が目に見えてよくなってきた。

大男が驚きながら「何をやった?」と聞いてきた。オリジナル魔法だが効いて良かったと言うとそんな魔法があるのか?と呆れた顔をした。


その時、みしっ!みしっ!と言う音をさせて森の中からまた、同じ蜘蛛のような少し小ぶりな魔物が木々を押し倒しながら姿を現した。

よく見ると魔物のお尻から虹色に見える糸が延びていた。あれは魔糸?

魔糸らしきものは森の中に続いていた。


僕は魔物を迂回して森の中に走って入って行った。

少し開けた場所に魔法陣を操る男がいた。

小石を拾って投げつける。カン!と言う音と共に魔法陣の作る防御壁に防がれた。やはり直接的な攻撃は効かないらしい。

魔法陣に魔糸を何本も伸ばす。弾かれてなかなかアクセス出来なかったが一ヶ所だけが繋がった。

男は蜘蛛の魔物を操るのが精一杯なのかイライラした目でねめつけてくる。

魔糸に依る魔法陣の解析で魔獣の名前が“アジュラ“と判った。魔素(マナ)の流れを強制的に逆流させて逆召喚をしてやる。

目の前の黒衣のフード男と馬車のところにいる大男が驚いたのが分かった。


「貴様~!! 何をした!」

召喚術を破られて逆上した男が杖を振りかぶって襲って来た。

遅い動きを見切って男の後頭部へ剣の柄を叩き込む。

即座に倒れた男をインベントリーの中のロープで縛る。


男を放置して先ほどの場所に戻ると大男が言った。

「お前が何かしたのか?魔物が消えたぞ!」

質問には答えないで

「森の奥に召還師らしい男がいた。倒して縛ってある。」と簡潔に答えた。


その時になってやっとイーベンの荷馬車が到着した。

「おお~い!お~い!」

そののんびりした声に緊張の糸が切れた。



馬車の一行で生き残ったのはブール・ラサメアと妻のノストリーア・ラサメア、執事のセトラス、神官のバラッカだけだった。

助かったのはつまり、これから行く積もりだったバパルカの伯爵の長男とたまたま同行していた神官と言う事だった。

ナオヤとイーベンが自己紹介するとブール一行は凄く感謝した。

日も暮れかかって来ていた都合上、少し戻って小森の手前で野宿をする事になった。


倒れた馬車の処理や魔物にやられた護衛たちの処理、召還師の対応などのため、生きていた馬で神官のバラッカがバパルカまで先行して連絡することになった。


土魔法で簡単なかまどを作り、アイテムバックから鍋と精肉されたホーンラビットやら野菜を出し、水魔法を使ってスープを作る。

更には、メリダさんに貰ったパンを提供した。

イーベンは携帯した干し肉と水で夕食の積もりだったらしい。

そう言えばイーベンにアイテムバック(本当はインベントリー)持ちなことを言ってなかったな。ははは。

最後には人数分のハーブティーも出してノストリーアに凄く喜ばれた。


食事も過ぎ落ち着いた頃ブールからやはり僕の魔法について聞かれた。ブールからすれば規格外な魔法らしい。

そこで僕の魔法理論を説明して僕は普通の魔法より無属性魔法が得意な事を説明した。

ブールもイーベンも余りよく分からなかったらしいが、ノストリーアは納得したらしい。ノストリーアは風魔法が得意なのだが、何故風魔法で風が吹き、攻撃が出来るのか分からなかったのだと言う。


寝ずの見張りをブールとセトラスが買ってくれたが僕独りで大丈夫だと言うと驚かれた。

あれだけの戦闘をした後なので疲れていない訳はないが警戒用の魔法があるのだと説明すると納得したのか各自が休む事になった。

気丈に起きていようとするセトラスを休まさせるのが大変だった。大怪我をしたのだから休ませない訳にはいかない。

イーベンもずっと御者をしていたのだから疲れていたと見えて直ぐに寝入ってしまった。

野営地を囲むように何本かの細い杭を打つ。杭どうしを結ぶように綱を渡し、その綱を自分の近くに打った杭に繋ぐ。

最後に鈴を付ける。杭と腕時計を魔糸で繋ぐ。綱に沿って魔糸を通して終わりだ。

腕時計は僕の魔力に自動で反応するので寝ていても魔糸は切れない。

イーベンの警戒柵の魔法版だ。これで僕も休むが出来る。

ついでに腕時計のアラームを夜明け時間に合わせて置く。


次の朝は昨日の残りものを使って軽く食べる。

小森の中に入って昨日の確認をしているとバパルカから衛士を連れて神官のバラッカが戻って来た。

自分には必要が無く、ほおって置いて大丈夫そうだったので一声掛けてイーベンと一足先にバパルカに向かった。

バパルカでは必ず訪ねて来るようにとブールに念押しされてしまった。

イーベンには生暖かい目で見られてしまった。


道すがらイーベンに念押しのように注意を受けた。気を抜くとラサメア伯爵家に取り込まれるから仕えるような言質は与えない方が良いとまで言われた。

確かにブールもその妻のノストリーアも善人のようだが自分の利益を求めない訳では無いのだから。

イーベンは僕の友達として忠告してくれていた。まあ、先に利益供与しているけど、あははは。


そんなこんなで昼過ぎ頃にバパルカの城塞が見えてきた。


これから未曽有の事件に巻き込まれる事も知らずにのんびりと荷馬車にイーベンと僕は揺られていたのだった。


バパルカでの彼の影


きな臭い彼の足跡とは


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