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二番煎じの転生者  作者: きゅうとす
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ヨシュアの事情と葵の事情

何やら 勇者(メサイア)について良からぬ事を ヨシュアは語る。

一方、目覚めた葵は・・・・



転章1 世界探訪記 勇者(メサイア)家を買う22


サイロン領の領都リシテルでダンジョン攻略を始めた勇者(メサイア)八神直哉ナオヤ)です。


食堂に転送されて唖然とするヨシュアだったがあちらこちらを見回して何やら納得したようだった。

「あんた、ナオヤだったが?勇者(メサイア)って事だな?噂通りだぜ!」

なにがだ、ヨシュア!!とてもその噂が気になる。言え!

思わず僕はヨシュアに詰め寄った。その後小一時間ほと問い詰めて聞き出した勇者(メサイア)の噂の全てを訊きだして天を仰いで嘆くしか無かった。


曰く、勇者(メサイア)は2M(メトル)を越える大男らしい。いや、違う!むちゃボインな大女だ。曰く、勇者(メサイア)は女とみれば声を掛けまくるナンパ野郎らしい。いや、女が寄ってくるキザ野郎らしい。勇者(メサイア)はとんでもなくチート野郎だ。運だけで飛空挺クレイモアを見つけ出したラッキー野郎だ。勇者(メサイア)は騙すのが上手くて卑怯者の屑だ。勇者(メサイア)は金貨を創り出せて幾らでも積んで人を雇ういやらし奴だ。あちらこちらで人に迷惑を掛けることをやらかす野郎が勇者(メサイア)なんだ。勇者(メサイア)の魔法は人外の破壊力があると言う噂だ。勇者(メサイア)は龍を好んで食べるらしい。特にレッドレッサードラゴンがお好みらしくグランドドラゴンには見向きもしないとか。勇者(メサイア)はエルフと何やらエッチなことを画策している。勇者(メサイア)はエルフの里の遺跡を盗んだらしい。勇者(メサイア)は殺しても死なないらしい。勇者(メサイア)は北の国で巨獣を飼い慣らしたらしい。勇者(メサイア)は飛空挺クレイモアで侵略国を撃退したが莫大なお金を要求するガメツイ野郎らしい。メリカ国王様は勇者(メサイア)に脅されているらしい。勇者メサイアは冒険者が嫌いだから冒険者ギルドに滅多に現れないと言う噂。勇者メ(サイア)は根暗でぼっちだそうだ。





八つ当たりじみた怒りにまかせて適当にサーバントに食べ物を用意させてテーブルに沢山並べてみた。和食、洋食、中華有るだけの種類を用意してみた。多分魔族は食べたことが無いんじゃ無いかなと思ったがその通りだった。特に和食は驚いたようだった。米の料理はメリカ国では見ないし、米の栽培地はエルランディアの下流域にしかない。

初めてなら驚くだろう。麦を使った粥や炒め物は既にあるが米その物を食べる文化はエルランディアの一部にしか無いからだ。米を育てているエルランディアでさえ米は人の食べ物では無く砕いた物を飼料として使っていたのである。

誰も食べようとなんてしない。

彼でさえ諦めたのでは無いだろうか?日本と同じ食材を探そうとしても異世界なのだから近い植生の食べ物はあっても全く同じにはならないのも道理というものだ。


がっつくヨシュアになぜダンジョンに魔族が入ったのかを訊いても分からん!の一点張りだったが、入ったと覚しき男はヨシュアの縁故らしい。2年ちょっと前に何か魔族の国で事件があってその後にその男は引き籠もって何かに打ち込んでいたらしいが数ヶ月前に出国して、ここサイロン領に来たらしい。魔族には珍しい赤髪で目立っていたために後を追うのはそれ程大変では無かったと言ったが領都リシテルに入った途端道筋が途絶え、やっと見つけたのがガラドア遺跡のダンジョンだったと言う。

ヨシュアの出自については話してくれなかったが使いうる魔法についでは結構教えて貰えた。魔族が魔法のスペシャリストというのは本当らしい。ヨシュアの魔法属性は水であったが熱絡みの属性変化ということ技術(テクニック)で氷を飛ばしたり、熱水を出すことが出来ると言う。しかも上級だけで無くエクストラも一部使えるのだ。調子に乗せたら秘法も使えると言った。言ってはいけなかった事らしく詳しくは教えてくれなかったが。

水魔法が使えるお陰で途中の街などには寄らずに野宿するのにも困らなかったらしい。一人旅をしていたらしいが他にも何人か出国した男を追っているようで手掛かりが無ければもう少しで戻らなければならなかったらしい。だから僕と同行出来ることがかなり助かったと言っていた。


ヨシュアと食後を楽しんでいるとサロメがやって来て葵が回復したと教えてくれた。

予定より大分早いが大丈夫なのだろうか?取り敢えずサロメにヨシュアの相手をさせて置いて葵に会いに行くことにした。サロメに感激するヨシュアとヨシュアに警戒感マックスなサロメを一緒にしておくのは気が引けたが、ヨシュアを一人にして余計な詮索をされるよりはましだろう。


転送で葵の部屋に入る。葵は僕に気付くといきなりベッドサイドに飛び降りて土下座をした。

「申し訳ござらん!ナオヤ殿にセラを頼まれていたのに守り切れませなんだ。悔やんでも悔やみきれません。」

頭を床に擦り付けながら低頭平身で葵は謝った。謝る声には涙も含まれているのかかなり震えていた。身に着けていた和装めいた寝服が汚れるのも構わないその姿に僕は取り敢えず葵をベッドに寝かせて躰を休ませようとした。

僕の話が伝わらないらしく土下座から頑なに動こうとしないのでそのまま仕方なしに話をすることにした。僕にも責任があることを説明する。

「済まなかったと思う。(メシア)の敵に為りうるのは『彼』だけだと思い込んでいたよ。メリカ国王と謁見した折りに仲間として葵もセラも有象無象の貴族に知られていた事を気にしないでいたんだ。国王様からの通達で僕の仲間であるセラや葵に手を出されることを考えていなかったよ。

妬みや嫉みが君達に向かうとは思っていなかった。今回の件に絶対領主は係わっているはずだからね。でないとガラドア遺跡ダンジョンに入れないはずさ。でも、少なくても領主の関係者は係わっていると思う。」

不思議な顔をして葵は顔を上げて聞いている。


「ヨシュアと言う魔族と知り合って良からぬ話を聞いている。もしかしたらもっと別な事が関係しているかも知れない。」

魔族と言う言葉に葵は驚いている。

「だからね、葵がそんなに責任を感じる事は無いんだと思う。言ってみれば僕の浅はかさが招いた事でもあるんだよ。」

ふらりと立ち上がった葵は言葉も無く僕に震えながら縋り付く。

「いいえ!ナオヤ殿に責任などある筈が無いでごさる。拙者がもっと気を付けていればこんな事にならなかった筈でござる。セラ殿を奪われた責任は拙者にあるでござる。・・・実は、某の父上が計ったでござるよ。」

ん?聞き捨ての成らない事を聴いたようだ。

「待って?葵の父上ってあの覆邑おおいおお)殿の事か?」

僕は少し考え込んでしまった。あの魔物は葵の父を取り込んで自己同一化を図っていた。娘の葵でさえ偽者と見破る事が出来なかったのだ。

「あの大火で逃げ果せるとは思えないが再び葵の前に姿を現した事から何か絡繰りがあるのかも知れない。あの時葵を無理矢理引き留めたのは酷すぎる事実から護る積もりだったんだけど。」

僕の言葉に葵が言葉を選びながら縋り付くような後悔するような言葉を呟く。

「実際、分からないのでござる。父上はあの日の事を知らない様子で久し振りに逢ったかのような口振りだったでござる。・・・父上の温もりに間違いは無かった・・筈でござる。」苦しそうに言葉にしたのだった。










葵の語ったことは 信じがたい事だった。



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