覇王(ラグナロク)ゾルダ乱入
いよいよ魔物暴走と対決ですが
何か様子が変なようです。
いったい如何したというのか?
しかも乱入者登場?!
転章1 世界探訪記 勇者家を買う⑬
勇者であり、家を買う行動を始めてやっと2つ目バフォメの拠点を建てようとアナンダ辺境伯領で魔物暴走退治している八神直哉です。
「と言う風に勇者ナオヤ様には自由に魔物暴走スタンビートに斬り込んで頂きたい。
抑えきれなかった魔物はこの陣に近付かせないように我らが対処致します。」
アナンダ辺境伯黒騎士ズーラは当然のように言い放った。
詰まり、自分たちは守りに徹するからナオヤ達に魔物暴走を殲滅しろと言うことである。無論、メリカ王から依頼された内容も魔物暴走に対する依頼なのだから間違っていないが、辺境伯領の騎士が何もしないと言うのはどうなのだろうか。
因みにアナンダ辺境伯騎士団には黒と白があり、黒騎士が騎馬に乗るフルプレートの剣騎士であり、白騎士が魔法を主に攻撃手段とする魔術師団なのだそうだ。
ナオヤに宣言した黒騎士団長はズーラと言う太っちょ髭面の年配の騎士であった。
苦笑いをしながらナオヤは答える。
「分かりました。僕達が打ち漏らした魔物はお願いします。まあ、僕達だけで恐らく大丈夫ですけどね。」
ナオヤは自分が川の中まで入っていって魔物を殲滅、両脇に逃げ出す魔物を掃討するのに葵とミューレイに任せる予定だった。
ナオヤの後に回ってしまった魔物はセラに魔法陣魔法で集団に戻して貰う積もりだ。
アナンダ辺境伯騎士の一人が急ぎ足でズーラの前にやって来て報告した。それによると魔物暴走の先頭が間もなく1㎞程までやって来ているという。
「では勇者どの、お願いしますぞ」
と言ってアナンダ辺境伯騎士団の元へ行ってしまった。
行くかと小声でナオヤは呟くと走り出した。その姿はあっと言う間に小さくなり見えなくなった。
5分程で魔物暴走の先頭に到達したナオヤはスピードを落としゆっくり歩き出した。
既にスキル『空間把握』『気配遮断』『身体強化Ⅲ』を選択済みであり、しかも軽くプロテクトを掛けていた。手には無形を持ち長剣の形に変えていた。
大型の魔物には魔法でミニファイヤーボールを延髄に掛け、斃したらそのままインベントリーに収納してしまい、小型の魔物は長剣で首筋か足首を切り払い、無力化して行く。
あっと言う間に魔物の群は数を減らしていった。
遠目からそれを見ていたアナンダ辺境伯領騎士達には何とも不思議な光景だった。ナオヤが魔物の群れに斬り込んでいく側から大型の魔物が倒れ消えていくのだ。ナオヤが剣を振るう度に魔物が斃れ、死屍累々となる。逃げ出したり戻ろうと混乱した魔物は川から離れてしまえば小柄なオレンジ色の冒険者とグリーンのフルプレート騎士に斃されてしまうか、白い服の神官めいた者に魔法陣で戻されてしまう。
魔物暴走が勇者と言う龍に飲み込まれていくかのように見えた。
最初は一進一退のように見えて次第に魔物暴走が下流に押し込まれていく。見ている目の前でナオヤ達がどんどん離れていく。そして、そこには小型の魔物の死体が重なって残るのみであった。
そんなナオヤが突然川の中程で立ち止まった。気付くと魔物暴走の流れは止み、逆流し始めており、ナオヤの周りから魔物が逃げていた。
そしてナオヤの目の前10M程先には太さが1M以上ありそうな大きな白蛇が鎌首を持ち上げていた。そして、その目は紅く睨めつけるように輝いていた。チロチロと二枚舌を出しながら白蛇はナオヤに問い掛けていた。
「我は水龍様の眷族の蛟なり。お主は勇者であろう?何故に我らを邪魔するのじゃ?」
それは声では無かった。頭に直接響くテレパシーのようなものであった。だからナオヤにしか聞こえなかっただろう。
無表情でナオヤは答える。立ち止まったナオヤに気付いて川から離れた所からミューレイも葵もセラも討伐を止めて見詰めていた。
「水龍様?蛟?どんな関係があるのかは知らないけどお前達魔物が魔物暴走して川を遡って襲って来たから止めたまでだ。お前達水系の魔物こそ何故魔物暴走めいた真似などしているんだ。」
暴走していない魔物の群れだったからこそナオヤはそう訊いた。
白蛇のような蛟と言う魔物は周りを見回すように首を振り答えを返してきた。
「我は呼ばれたのだ。この先に我を呼ぶ者がいる。この者達は同じように誘われて集まって来たのであろう。」
魔物を呼ぶ者?
ナオヤには何の事か分からなかった。ただ、この先にはアナンダ辺境伯の屋敷があるだけだ。そこに魔物を呼び寄せる事が出来る者が居るのだろうか?
「どんな目的があるのか分からないけどこれ以上上流に向かうなら退治する。沢山の魔物には迷惑をしているんだ。」
蛟は暫くナオヤを見詰めていると
「なら、我のみ行こう。他のもの達には戻らせる。それなら良いだろう?」
と言い出した。
ナオヤの目的は魔物暴走の殲滅である。必要が無いなら魔物を斃す理由が無い。魔物から取れる素材は得られなくなるが。
「分かった。大人しく魔物達を大森海まで戻せるならそうしてくれ。無用な殺生はしたくない。」
ナオヤは折れた。蛟と言う水龍様の眷族の魔物が何をしたいのかは興味がある。アナンダ辺境伯が何か画策して居るのは分かっていたが魔物暴走が収まれば何の問題も無いだろうと考えたのだ。
バシャッ!
蛟が水の中に隠れると逃げ惑ってナオヤから離れようとしていた魔物達が進行方向を変えて下流に向かって歩き出した。先ほどまでの慌てっぷりは無く、仕事帰りのサラリーマンのような疲れた歩き方だった。 何しにここまで俺は来たんだっけ? とか言い出しそうな雰囲気だった。
その姿にナオヤが安心して見詰めていると突然光が走った。
光線というよりは光の束と言うべき光は魔物の最後尾から先数百M程を縦に薙いで消えた。魔物を吹き飛ばすだけで無く川の水をも蒸発させた熱量で爆発を誘発させる。
突然のことでナオヤは呆然と振り返った。真っ直ぐ前の遠くに馬に乗った見たことのある男がいた。派手で趣味の悪い服の趣味は父親譲りだろうか。アナンダ辺境伯爵ロードウィクの息子ジャンジャルだった。何かをこちらに向かって叫んでいた。となりには黒木師団長ズーラと白騎士団員達が立ち並んでいる。
先ほどの光魔法は彼では無かった。ナオヤは少し上を見上げる。そこには八葉の浮遊石に乗った黒衣の男達がいた。小柄な男の周りには重そうな形の杖をそれぞれ所持していた4人の大きな男がいた。
小柄な男は2つの変わった形の杖を両手に持っていた。剣を2つ合わせた横に半月状の刃が付いている。そこから魔素の痕跡が見えた。
どうやらさっきの光魔法はこの男が放ったものらしい。
男は異様な雰囲気を纏っていた。魔素を纏っているわけでは無く尋常でない熱量と魔素の臭いのような物を漂わせていたのだ。
「暫くぶりだな!勇者!!」
低音で辺り一面に響き渡る良い声だった。聞き覚えの無い声だったが向こうはナオヤのことを知っているようだった。
「この姿じゃあお初にお目に掛かるってとこだな。分からんのも無理はねえ。」
この口の悪さ・・・何だか思い出しそう~
「不死者にして覇王のゾルダ様だ!!忘れたとは言わせねえ!」
ああ~、忘れてた。
無言で見上げたがナオヤは思い出していた。2度も再戦しながら斃し切れていなかった相手だ。
「懲りもしないでまた現れたのか?」
呆れた小声でナオヤが呟く。
「うるせえ!お前のせいで魔体が完全じゃないが出でこざるを得なかったんだ。お蔭様でこのちっこい体になってしまったわ。
しかし、勇者対策したこの体ならお前を殺せる筈さ!」
どうやら耳は良いらしかった。
20M程は離れているのに聞こえるなんてあんまり話したくないなとナオヤは思う。
小声で腕時計に話し掛けて仲間に指示を出す。
セラはゆっくりとアナンダ辺境伯爵家長主ジャンジャルに向かって歩いて行く。ナオヤと葵とミューレイは川の反対側に出で覇王ゾルダに近付いて行った。ゾルダは特に動かずナオヤの行動を警戒して注視しているだけだった。
乱入者ゾルダも気になるけど・・・
セラは因縁の相手と対決出来るのだろうか?
決意してセラは前に進む。
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いつも読んで頂き有り難う御座います。
二番煎じ は益々戦いがヒートアップ!
みんなの戦いにわくわくして下さい。
ただし、ナオヤは強すぎて・・・
応援よろしくお願いします。
批評批判、誤字脱字指摘、コメント待ってます。
センキュー!!!!
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