決死の至死獣・珊瑚龍(コーラルドラゴン)戦
俺の戦いはいよいよクライマックス!
全力で逝かせてやるぜ!
何人たりとも敵で無いことを教えてやる。
ふはははははははー!
転章1 世界探訪記 勇者家を買う⑦
勇者であり、家を買う行動を始めたら百薬斎セイとの決着となった八神直哉です。
ぐいっとプロテクトの範囲を拡げるとナオヤが雷熊杖を真一文字に振るう。
雷熊杖から雷撃が放たれると至死獣・珊瑚龍となったセイの回りで限りなく雷撃が誘爆していく。その数百に届かんとする程の数だった。
しかし、4大魔法属性の龍息を放つセイには目眩まし程度にしか効かない。ほんの僅かな隙を生んだだけだったがその間にナオヤは人型のヴェルダと如意金剛を呼び出し、構える。
如意金剛は金剛を錬金術で意志に従って大きさを変えられるように作り替えられたものだ。
元々の500㎏から1㎏まで変えることが出来る自在棒なのだ。今はヴェルダに扱いやすい100㎏程の重さとなっている。
大きさから言えば至死獣・珊瑚龍の方が少し大きい。10Mを越えたくらいだろうか。
しかし、大きいはずの至死獣・珊瑚龍が後ずさる。怯えが滲んでいた。
「さあ、覚悟を決めたか?セイ?」
その声はナオヤであってナオヤでないようだった。何故かやけに低く嘲りが含まれている。
ナオヤの問いかけに答えず至死獣・珊瑚龍が炎系の龍息を放つ。それはそれまでの龍息と事なりかなり絞り込まれたものだった。直径にして10㎝にも満たない。まるで炎のレーザーであった。
ヴェルダのプロテクトが輝く!それまでの龍息のように弾かれず、プロテクトの障壁を焼き尽くす。
バッバリーン!!
プロテクトが破られる?!
グァガァー!!
叫びながら直線的に至死獣・珊瑚龍がヴェルダに近づき、長い如意金剛の内側まで迫る。岩のような珊瑚の左腕がヴェルダに振るわれる。
眼前をヴェルダが紙一重で避ける。
珊瑚龍の右腕がストレートでヴェルダを狙う。
ヴェルダが首を左に振って紙一重で避ける。
再び珊瑚龍の左腕のショートフックがヴェルダの側頭部を狙う。
ヴェルダが躰を捻りながら如意金剛をやや短めに変えて珊瑚龍の胴を打つ。
珊瑚龍はショートフックの勢いそのままで躰を回し巨大な尻尾をヴェルダに叩きつける。
如意金剛と珊瑚龍の尻尾が相打ちになる。
そして、珊瑚龍とヴェルダが互いに吹き飛んだ!
グルゥルルルルー
低い唸りを上げる珊瑚龍。
ヴェルダの中ではナオヤが口から血を滴らせていた。
じり、じりと空中を互いに回り相手の隙を狙う。
ジュッ!!!
ヴェルダの縮地と珊瑚龍の急接近は同時だった。
刃物のように変化した珊瑚龍の両腕がヴェルダの両肩に食い込んでいた。
細く針のような如意金剛が珊瑚龍の胸の中心を貫いていた。
如意金剛を伝ってセイの血が流れ出る。
ヴェルダと如意金剛をナオヤが収納して空中に浮かんでいる。
珊瑚龍がボロボロと崩れ、海中に没していく。やがて堆く小山を造り出し、力を失った黒葉状の浮遊石と共にセイが落下した。
セイの近くにナオヤが降りる。
セイは胸に大穴を開けて絶命していた。
ナオヤはそれを確認して満足そうに頷くと不意に頭を振り、再びセイを凝視して叫んだ。
ああああ~ あ?
セイの近くでナオヤは嘔吐した。
ふと、誰かの気配がしてナオヤは目を上げてそちらを見た。
そこに現れたのは身体に包帯を巻き付けた細身で長身の女、幽鬼ファズマだ。
身長は170以上、ガリガリな癖に胸は大きい。
髪型は目が隠れるくらい前髪を伸ばし、後ろは背中に届くくらいの長さ。
髪色は黒っぽい赤、血のような赤。そこには前には無かったティアラのようなものがあった。
ナオヤは鼻水やら涙を袖で拭うとぶっきらぼうに言った。
「またあんたか?今度こそセイは逝ったぞ!」
その茫洋とした目で幽鬼ファズマは静かに言った。
「主の命です。生死如何に拘わらすその躰を取り戻せと。」
「僕が貴方を逃がすとも思っています?」ナオヤが幽鬼ファズマを睨み返す。
実際気持ちは最低でも体力もまだ残っていた。跳躍されても追い掛けることは出来ると思う。むしろ、今がアジトを見つけるチャンスかも知れない。
しかし、幽鬼ファズマの声は冷たかった。
「無駄です。貴方がたとえ勇者でも主の力に護られた私は掴まえられません。」
さっと幽鬼ファズマがセイを掴むと2人の躰が光って消えた。
「?」
ナオヤは幽鬼ファズマの跳躍の後を追おうと魔素の痕跡を探った。しかし何処にも無かった。
おかしい?
そこに今までいたファズマの魔素の波長は掴んでいる。
跳躍でない方法で消えた?!
ふと、上空を見上げるとそこには巨大な金色の剥き玉子に切れ目を適当に入れたような飛空挺が浮いていた。
大きさは大凡飛空挺クレイモアの三分の一程。空中に金色の靄のようなものを漂わせていた。
「なっ!?」
ナオヤには見たことの無いものだった。
ナオヤが驚いているとそれがすっと消えた。その消え方はその存在が薄くなるような今までとはまた違った移動方法を使った事を意味しているようだった。
呆然としているナオヤの耳に遠くから船の近づく音とナオヤを呼ぶ声がした。
安心と共に僕は崩れるように気絶した。
幽鬼ファズマの登場で物語は更に複雑になっていく。
疑問だらけの状況にナオヤも自分が分からなくなってゆく。
果たしてどうなっていくのか?
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これからも 二番煎じ を宜しくお願いします。
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