ドラゴンヘポカリパ戦
ドラゴンヘポカリパは強敵でしょうか?
ナオヤ達に掛かれば難しいものではありません。
転章1 世界探訪記 ビエト連邦~英雄の末裔Ⅵ
勇者八神直哉です。ビエト連邦から出られないので出られる条件を整えよう。
ドラゴンヘポカリパが得意そうにぐへへへへと不気味に笑う。
鳥肌が立ったが大きな隙が見えた僕が大声で合図を出す。
「今だ!!」
「ハイサンクチュアリ!」
強化された葵のサンクチュアリが瘴気の沼を大きく覆って展開される。
ぐべっ?
不審そうに周りを見渡す
「サークルウインドシールド!!」ミューレイが風魔法で瘴気を沼ごと丸く閉じ込める。
あがっ?
立ち上る風に目をむく。
2人とも僕の『魔法はイメージ』を良く理解して殆ど無詠唱で魔法が行使出来るように成ってきている。
最後に
「マルチファイヤーボール!」
僕のスキルである空間把握と超上空での火魔法で上空へ向かう空気の流れを強制的に作る。
ひゅ~ぅ
と間の抜けた音がしてドラゴンヘポカリパの回りの空気が瘴気ごと上空へ抜けてゆく。
そしてその代わりに満ちてゆく神聖魔法の聖気。
ドラゴンヘポカリパの回りが聖域に換わっていくのだ。
空気が抜けて行くにつれ、ドラゴンヘポカリパの身体から水分が奪われていく。みるみるうちにドラゴンヘポカリパはナーガヘポカリパに戻っていく。
やはり、瘴気と沼の水を飲み込んで体型だけをドラゴンに見せかけていたようだ。
グワワッ!
苦痛を感じているのか身を捩りながらおかしな鳴き声を立てる。
ドラゴンヘポカリパが暴れて瘴気の塊を飛ばす。暴れた体が風の障壁から抜け出そうだ。
「ミューレイ!もっと強く!!
風の障壁を破られるぞ!」
僕の声にミューレイが魔力を強める。突き出した手が両手になる。
「ダブル!!」
一方向に紡いでいた風の流れが逆方向に紡ぐ風の壁が増え二重になる。
「ミューレイ、もっとだ。もっと強く。」
僕の掛け声にミューレイはチラリとこちらを見て、眉を上げて抗議する。
「トリプル!!!」
そして、風の障壁は更に三重になった。
更に風の音がぎゅるぎゅると絡むように複雑なものに変わり、光が激しくなり眩しく輝く。
完璧にドラゴンヘポカリパが閉じ込められている。
焦ったドラゴンヘポカリパの影がが中から風の障壁を叩き壊そうと暴れまくるが無駄に終わり、聖気に身体の瘴気を奪われ、上空に吹き飛ばされて次第にドラゴンヘポカリパが細っていく。
瘴気を奪われ始めるとあっと言う間にその身が崩れて消えてしまった。
残ったのは巨大な光の円筒だけだった。
合成魔法トリオンが発動したのだろう。思いも依らない強大な力に3人が唖然とする。
魔法を解くと光が徐々に治まっていきゴトリと何かが地上に落ちる音がした。
バスケットボール程の大きさの丸い半透明な珠が残されていた。
どうやら是がナーガヘポカリパの正体だったらしい。
3人が近づき、しげしげと眺めていたが、取り敢えずナオヤがインベントリーに収納しておく。
カラカラになった元瘴気の沼には何も残らなかった。
ひび割れた大地があるだけだ。
近隣の魔物も退治したので当分街道沿いの村々も安心だろう。
一度飛空挺クレイモアに戻り、ナオヤだけがリイア・アシュラムの処へ報告に戻ることにした。
→♪
ゴトリと半透明な珠をメジーナ博士の目の前でインベントリーから取り出す。
「ん?んんん?」
メジーナ博士の反応は意外なものだった。
「ナオヤ君、これをどこから手に入れた?」
メジーナ博士な半透明な珠の事を知っているようだった。
「これがナーガヘポカリパの正体ですよ。合成魔法トリオンが発生したらナーガヘポカリパが消えてこれが残りました。」
状況をメジーナ博士に説明するとメジーナ博士は意外なことを言い出した。
「これはババロンの物だよ。正確には倉庫のバンビが管理していた“龍玉“と言う珠だよ。自然に存在する魔素を吸収して自然聖霊を生み出す珠なんだ。魔素溜まりを解消するために創られたものさ。ナオヤ君が言うような神話的悪神のナーガヘポカリパになんか成らない筈なんだが。」
そう言ってメジーナ博士が龍玉を調べている。
「ん?これは?」
何かをメジーナ博士が見つけて呻っている。
どうしたのかとナオヤが訊くと
「どうやら追加で機能を付加した者が居たらしい。
此処を見たまえ。」
メジーナ博士が指し示す龍玉の一部分に金属片のような物が射し込まれていた。
「この金属片が瘴気を魔素とと一緒に取り込むようにしていたようだ。
それにしてもババロンの持ち物に加工が出来るなんて何者だ?
倉庫から落ちたんだろうか?
それとも倉庫から持ち出されたんだろうか?
倉庫が見付からない事と言い、余り良い予感がしないな。」
ナオヤもメジーナ博士に同感だった。
兎に角、瘴気の沼の事は解決したのだからアシュラム邸のリイア・アシュラムに報告はしておこう。
ナオヤだけがアシュラム邸に転移してリイア・アシュラムと会見する。
そこで事の経緯と瘴気の沼が消え去った事を報告した。ただ、龍玉の事は黙っておく。
如何にもほっとした表情を見せてリイアは金貨の袋を取り出してナオヤに渡した。魔物も減り、原因となっていたらしい瘴気の沼も消えたのだから報酬もそれなりに大きい。リイアにとって依頼した時点で解決するのは当然と考えて用意してあったのだろう。
資金が増えるのはナオヤにとっても嬉しい。遠慮せずに受け取る。
古龍がいつ現れるか分からないので明朝早くからアシュラム邸を訪れることを話してナオヤはアシュラム邸を辞したのだった。
明日こそがドラゴン退治の本番なのだ。ナオヤにとってはナーガ・ヘポカリパなどドラゴンと呼べない前哨戦でしか無かった。
ただ、合成魔法トリオンが発動する事は想定外だった。
リイアから夕食の誘いがあったがナオヤは辞退する。むしろリイアを誘いたいくらいだ。貴族の食事とはいえ、調味料不足のこの世界にあってはババロンの食事に勝るものは無いからだった。
メジーナ博士が時々使う化学調味料は反則ものだった。リイアが知ったら世界がどうなるか分からない。
古龍との戦いの前にはロシァ共和国議長、かつての王様との会見もあるそうなのでナオヤとしては頭が痛い。
この世界の格式張った儀礼に疎いのできちんと対応出来る自信がないのだ。
ナオヤには古龍よりもロシァ共和国議長バーナー・ドショー・エレメンタル三世のほうが強敵であった。
明日こそ本戦ですよ。
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ちょっと短めでした。
古龍戦はじっくりと攻めたいですね。
何時も 二番煎じ を読んで頂きありがとう御座います。
ブクマ、批評批判、誤字脱字指摘
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これからも宜しくお願いします。
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