古龍戦
ドラゴン戦と言っても色々な戦い方があるのです。
苦労もある訳で・・・
転章1 世界探訪記 ビエト連邦~英雄の末裔Ⅲ
勇者八神直哉です。ビエト連邦から出られないのはまだ出る積もりが無いからでしょうか?
ドラゴン
それは未知の生命体だ。
蜥蜴や鳥の仲間のような外観をしている部分は多いというのに巨大で獰猛だ。普通の人には太刀打ちできない。
強靱な脚と同等に逞しく太い腕と体高と同じくらい長い尻尾と魔法や黒鉄すら弾く全身を覆う鱗。
巨体を浮かす大きくて軽い蝙蝠のような翼。
魔物と言われる事もあるがあれば魔法生命体と言うべき存在だろう。高等なドラゴンは人化したり、そのまま話したりするそうだ。
あんな怖い顔してどの様に話すというのか、とても不思議だ。
ドラゴンには色がある。理由は専門家にも分からないが赤、黒、白、緑、青、灰色など様々だ。そして使う魔法も様々だ。色と魔法の関係はありそうだが私には分からない。
ただ、ドラゴンが強いことは知っている。身をもって体験中だからな。
ドラゴンを倒すにはドラゴンから作った武器を用いるか、ドラゴンの弱点を突くしかない。幾ら数が多くても武器が通らないなら無意味なのだ。
目の前の暗灰色の巨大なドラゴンは古龍と呼ばれる種類だろう。此処に居るドラゴンの中で1番大きく強い。
それが暴れている。王城の中庭で暴れている理由なんて分からないが襲ってきたなら敵だ。
そこに居た騎士達のみならず、非力な衛士すら刃向かっている。
古龍だけで無く、所謂普通のドラゴン、グランドドラゴン、亜種であるレッサードラゴンを従えていた。
騎士達が立ち向かっているのはドラゴン以下の何とか剣が通じる相手である。数で押し切る為に一体に複数の者達が襲いかかっている。それでも倒し切れていない。
何とか拮抗している状態だが、良く守れていると言って良いだろう。
古龍には魔法が通じない。体表に届く前に消滅するか、弾かれてしまう。
普通のドラゴンになら何とか鱗を焦がせるだろう。普通の騎士の振るう剣などは弾かれて、何ら痛痒を与えられない。
弩弓ならば何とか食い込ませたり、鱗を剥がしたりする事が出来る筈だ。そんなものは無いからドラゴンの攻撃の合間に弱点を狙う。
目、鼻、口、耳、咽、掌、足の裏、尻尾の付け根、肛門、腹など、そして拡げられた翼だ。
英雄と思えたヴォルフ・フセスラフとダグラム・アーハノッシュの2人掛かりで狙っていた。
ダグラム様が地上を走り抜け、撹乱しながら攻撃する。
ヴォルフ師匠が空中を駆け抜けて注意を引き付けながら攻撃する。
それでも倒せない。
ダグラム様が持つ剣は魔剣クレモア、刃幅20㎝刃長2m弱の微かに緋色を帯びた剣。黒鉄すら断つと言われる特殊な剣だ。
鋼のフルプレートを苦も無く中の人ごと切り裂く。
師匠のヴォルフが持つ細剣は魔剣プリンピア、刃幅5㎝刃長1m超の白く輝く剣である。ヴォルフが振るうと剣が自在に曲がる。目を射る輝きを放つことが出来るらしい。
そんな2人でさえ古龍には嫌がらせのような攻撃しか出来ない。
やらねば殲滅させられる。相手が嫌になって逃げ出すための時間稼ぎとも言えた。
衛士、騎士が頑張りレッサードラゴンは倒し切った。グランドドラゴンは何とか瀕死状態。普通のドラゴンも逃げ腰になってきた。
衛士、騎士の奮戦の賜物だ。
しかし、“カサナイダ“を手に飾りベランダに飛び出したベネトン・アシュラムは蹲っていた。乱戦に手をこまねいていた。膝を震わせ怯えて居たとも言う。
ベランダの隙間から戦闘から外れて様子を窺っている魔法使いが見えた。ベネトンも知っている太っちょのハナウェイだ。ハナウェイ・コーリン、雷魔法が得意で臆病者。逃げ足だけは早いと揶揄されるが仲間思いな良い奴だとベネトンは知っている。
ハナウェイもベネトンに気づいた。ベネトンがハナウェイに手話で話し掛ける。
ワタシ ガ コウゲキ スル
ソコニ カミナリ マホウ ヲ ウテ!
ハナウェイが了解の合図を返して詠唱を始めた。
再びベネトンは古龍と2人の英雄の戦いを見詰める。決意を固めたせいか震えが止まった。
狙いは古龍が後ろを向いた時、その時は直ぐにやって来た。
ヴォルフ・フセスラフとダグラム・アーハノッシュが同時に攻撃した時、古龍が後ろを向いた。
ベネトン・アシュラムは天走で古龍の頭上に駆け上がる。
ベネトン・アシュラムに気付かない古龍の口が閉じられ、顎が引かれる。
その目の前にベネトンが落下して“カサナイダ“が古龍の左眼に突き刺さった。更にそこへハナウェイの雷魔法が炸裂して目玉が焼かれる。
練習してあったかのような見事な連携だった。
グギャアアアー
古龍が雄叫びと共に苦し紛れの龍息を放った。先程の動作は予備動作だったらしい。
辺りを焼き払う龍息は落下中のベネトンの半身を焼き、廻りで戦っていた普通のドラゴン達を行動不能に陥らせ、ダグラム・アーハノッシュを直撃した。
その後、意識不明に陥ったベネトンが気付いたのは戦いが終わった4日後だった。
古龍は逃げ帰ったと言う。10年後に復讐に来ると言い残して。
それからベネトン・アシュラムは包帯に巻かれたまま治療を受けつつ生き長らえたのだ。
王城を守り抜いた功績を讃えられてベネトン・アシュラムは子爵になった。その子リイア・アシュラムは内政に功績を挙げ、伯爵となり王政に深く関わる事となり宰相となった。
ダグラム・アーハノッシュも伯爵位を与えられ、妻子共々保護されたがある事件に関わった容疑でお家は取り潰された。
無事だったヴォルフ・フセスラフは失意からかその後行方不明となり、消息は掴めていない。内縁の者達の消息も不明だ。
ベネトン・アシュラムの欠損を治療出来る者も現れなかったが細々と治療は続けられたのは大恩を果たしたいとトリビュートが援助していたからに他ならない。
ベネトン・アシュラムが騎士時代に若き商人トリビュートの命を救った事があったからだと言う。
完全復活を果たしたベネトン・アシュラムが語った10年後は僅か3日後に迫っていた。
再び現代に戻りますが、まだ戦いは終わってないようです。
ナオヤはどう古龍と戦うのでしょう?
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