奴隷オークション開始
いよいよおまちかねの奴隷オークションです。
どんな奴隷が出てくるのでしょうか?
転章1 世界探訪記 ビエト連邦④
勇者八神直哉です。ビエト連邦は寒いです。
ややふざけた感じのラピッドと言う兎人の司会で始まった奴隷オークションであるが、進行は真面目にするらしい。
ナンバーを読み上げ略式の紹介と提供商会が告げられた。
最初の奴隷は人間の男だった。筋肉ムキムキで拳闘奴隷と言うやつだった。
「No.1 マクド 人間 20才 戦争奴隷 ソリュシャン商会」
ボディガードや戦闘で使えると言う謳い文句である。
値段は金貨500枚から始まり550枚で落札された。
落としたのは東を治める貴族のようだった。
落札は舞台上面に金額と落札者ナンバーが表示されるのだ。光魔法の応用で示される結果はまるでテレビ画面のようだが、半透明で空中に浮かび上がる様子は流石に魔法何でもありと思う。
次は老人だった。
「No.2 バアル 人間 42才 借金奴隷 ライラ商会」
魔法使いで上級者だった為金貨250枚から始まり350枚で同じような魔法同盟と思われる男が落札したのだった。但、借金の金貨500枚の残り100枚は別払いになるらしい。
きっとギルドでただ働きさせられるのだろう。
僕も試しに300枚を提示してみると表示に僕のナンバーである99と300が現れ、参加しているなと気分が高揚して来た。
その際、350を提示した魔法同盟の男がこちらをちらりと向いたのが過ごし気になる。
こんな調子でオークションは続き、8人目が出てきた時に大きなどよめきが起きた。
オークションに入る時から超越賢者ガライヤパスを起動していたが、ようやく目的の人物を見つけた。
だが、その人物はとんでもなかった。
「No.8 サロメ 人間 14才 性奴隷 カルマ商会」
その女の子は舞台右袖から全裸で現れゆっくりと歩いていた。今までの奴隷が曲がりなりに服を着ていたのにである。
暗い青紫の髪に漆黒の瞳、髪の長さは肩程なのに後ろ髪は尻まで届いている。
陶器の白磁のように肌理の細やかな身体は輝かんばかりの白。それも脱色の白でなく、白と言う色を丁寧に塗ったかのような白だった。
かたを出し、今が盛りとばかりに上を向く乳房は歩く度に重く揺れていた。
横向に歩くから見えるか見えないか微妙な角度で下腹部の陰影が大衆に晒される。
恥ずかしげもなく堂々と歩くから裸であることを知らないのかと思えてくる。
舞台中央で正面を向いた時にざわめきは最高潮になった筈だが、悲鳴と息を飲む音で会場は水を打ったかのように静かになった。
それはその少女の右半身がケロイドで醜く歪んでいたからだった。
頭から頬に掛けてと右乳房、右肘から先が無かった。
腰はほとんど無傷なのに足はまたケロイドがひび割れのように這い回っていた。
サロメが欠損している腕で髪をかき揚げるような仕草をすることでその状態で酸のような薬液から身体を庇ったのだと分かった。
ケロイドの筋が右半身を舐めまわしたかのように見えているのだ。
何故か僕は美しいと思ってしまって見とれていた。
左手が腰に当てられポーズしてみせる。
ギラギラしたその目は会場の全てに挑戦しているかのようだった。
ゴクリと唾を呑むと共にラピッドの紹介が入った。
「さる貴族様からの払い下げです。読み書き堪能、礼儀作法教育済み、夜のお相手仕込み済みです。
半身の欠損その他を差し引いてもお買い得ですよ。
では指し値1000から、有りませんか?」
ラピッドが如何に盛り上げようと咳一つとして盛り上がらない。
ラピッドは諦めたように価格を下げ始めた。
その様子は自分の給金を下げられているかのように次第に元気が無くなり、最低落札価格である半値の500となってしまった。
これで声が掛からなければお流れである。
ラピッドの評価も最低となり、もう司会もさせて貰えなくなる。そんな覚悟をラピッドが決めた時声が掛かった。
37番、オオウマ商会が連れてきた相手であった。
誰もが信じられない思いだったろう。当の本人さえ驚きの表情を浮かべていた。
他に提示が無さそうなのでラピッドが決定を言おうとした時、僕は550を提示した。
嬉しそうな表情にラピッドはなり、驚いたのは先程の男だろう。他に買い手など就かないと言う判断だっただろうからだ。
最低価格での落札を目論んでいたに違いない。提示価格が目に見えて小さかった。
男は555を提示した。
僕は560を提示した。
男は565を提示した。
僕は570を提示した。
限界だったのか、悩んだのか少し間が空いて男が600を提示してきた。
もう限界だろうと言う意図が見え見えだった。
勿論、僕は必ず落札しなければならない。
700を提示した。
会場にどよめきが走る。
それもそうだろう、如何に美人と言え欠損の修復は上級聖者でもなければ出来ない。
その費用たるや金貨1000枚は最低となってくる。
詰まり、
サロメを落としても1700枚以上掛かるのだ。
最初の提示価格からして異常と言える。
費用対効果を考えても男が対抗するとは思えなかったが750を付けて来た。
もはや意地なのか、妨害なのか分からない。
僕はすかさず1000を提示した。
どよめきが起きた。
そして僕が落札した。
係りの者が僕を呼びに来た。対応が良く分からなかったのでトリビュートに同行して貰った。
行きながらトリビュートは
「良かったのですか?」と訊いてきた。
「探していたのは彼女さ」と答えると驚きながらも頷いた。
控え室のような場所で所持者のカルマ商会の会頭であるカルマと握手を交わす。
カルマは満面の笑みを浮かべている。
それもそうだろう、提示価格を下回る覚悟でいたのに提示価格で買って貰えたのだから。
サロメの隷属の首輪が外され、僕の血を付けられた隷属の首輪が再度着けられる。
サロメは舞台で見た憎しみの目をして居らずどこかぼんやりとしていた。
正常な受け渡しがなされ、カルマ商会の者達が出て行くと代わりに見知らぬ男達が入ってきた。
頭が薄くなり掛けた小太りの男とボディガードの2人だった。いや、もう一人侍がいた。
怪訝な顔をしているとトリビュートが言った。
「何の用ですかな、オオウマ殿」
「何のようだと?」オオウマ氏は怒っているようだった。
「儂の邪魔をしおってからに!!その奴隷をこちらに貰おう。無論、ただでじゃ。」
無理難題をふっかけて来たので断るとオオウマの用心棒がいきなり僕に襲いかかってきた。
僕を始末して手に入れる積もりらしい。
一緒に居る侍は別にして大した相手では無いので同時掛かりの剣先を躱して発頸のように2人のボディガードの間から相手の腰に手を当てて、内部でファイヤーボールを爆発させる。
僕を中心に2人が左右に壁まで吹き飛ぶ。
ゴアァ!
グワァ!!
変な声を上げて倒れた。
わき腹の内部はぐちゃぐちゃだろうが血は出ていない。
でも、既に戦闘不能だ。
やや屈んだ姿勢で静止した僕の隙を突いて侍が抜刀して来た。
やや下から切り上げるように伸びてきた剣速はそのままだと躱しきれない。
すかさず身体強化Ⅲを発動してバックステップして逃れる。
躱されたのを知って刃先が反転しそのまま突き出された。
伸び上がった姿勢の筈がそのまま神速で喉を狙ってきた。
摺り足での縮地だろう。初めて見た。
頸を振って避ければ横薙に斬られるだろう。僕は得意の間合いに入る。
避けながら縮地で接近したのだ。
身長差が殆ど無い中腰の侍の横を抜けながら刀を持つ手首と顎を掌底で打ち抜く。
刀を吹き飛ばされ、脳震盪を起こした侍が、崩れ落ちた。
スーツ姿の少年など簡単に処理出来ると見損なったのだろう。
5分と掛からずにボディガードと侍を倒されたオオウマ氏が僕の目の前にいた。
「それで?どうします?」
僕は唖然とするオオウマ氏に問いかけた。
さて、オオウマ氏はどうする?
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何時も読んで戴いてありがとうございます。
オークションって気に入らないと襲って奪うんでしょうか?
何やら裏があるようです。
ブクマありがとうございます。
批評批判、誤字脱字指摘お願いします。
これからも 二番煎じ をよろしくお願いします。
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