トリビュート商館
望みの奴隷は見つかるのでしょうか?
勇者なのにナオヤは奴隷を買うのでしょうか?
転章1 世界探訪記 ビエト連邦②
勇者八神直哉です。ここは寒いです。
ひしめき合う子供達。
何があるのか不安を隠せないからどうしても震えてしまっていた。
ざわめきが止まらない。
そんなところへ激しい鞭の音が響く。
ビシッー!!
途端にざわめきが止まる。
「あんたたち!静かになさい!」
メイドのひとりが鞭を振るっていた。
静かになったところでメイドがこちらを見て
「主人が参ります迄お待ち下さい。」と言った。
僕は超越賢者の説明をざっと聞き流す。20人近くが狭い部屋に押し込められていたので雑多過ぎた。
この中にもお目当ての人物は居なかった。
そこへトリビュートが戻ってきた。
「人間の奴隷の準備が整いましたのでこちらへどうぞ、ああそちらの獣人達の中にお好みの者は居りましたでしょうか?」と言う。
僕は黙って首を横に振った。
やれやれといった表情で部屋を出るので後を追う。
廊下を暫く行った突き当たりの部屋に案内された。
そこには3人の少年少女がいた。
トリビュートが紹介する。
「こちらから
ハンス 男 13才
デコメ 女 14才
ローグ 男 13才になります。」
ハンスは金髪で挑戦的な目つきをしていた。
デコメは小太りでやや背が低かった。
ローグは背が高い茶髪の少年だった。
どれもはずれである。
しかし、これだけ紹介されて見付からないとはという気持ちを悟られたのかトリビュートが
「お気に召しませんか」
と落胆した。
そのとき、超越賢者がまだ隠されている者がいると教えてくれた。
「他に商品にならぬ者達がいるのではありませんか?」と言うと
「確かに欠損者がひとり居りますが見ても使い物になりませんよ?」と答えた。
それでもいいと言うと先ほどの部屋に連れて行きましょうと戻る事になった。
先ほどの部屋でソファに座って居ると隣の部屋で何やらガチャガチャ音がしてトリビュートが戻ってきた。
「お待たせ致しました。」
メイドがカーテンを引くとそこには檻に入った獣人がいた。
*
ロキシー 狐人 女 12才 聖楽*
初めてスキルを持った奴隷に会ったのだった。
ロキシーは左目と左足が欠損して、声が出なかった。
理由は定かでは無かったが前の持ち主にやられたらしい。
聖楽のスキルは術者の意図する力を歌に込める事が出来る。体力を回復したり、スペックを上げたり、上位者になると敵の能力をダウンさせる事が可能になるのだと超越賢者は教えてくれた。
目的の奴隷では無かったがこのまま見捨てることが出来なかった。また、手間を取らせた事もあって最初の6人も合わせて購入する事にしたのだった。
ロキシーは欠損があるため金貨5枚、他の6人はひとり当たり金貨100枚で合計605枚だった。
ロキシーがスキル持ちである事は知られていなかったので安価だった。
奴隷契約はそれぞれが付けさせられていた隷属の首輪を一度取り外し、新しい主人の血を特定の場所に擦り付け、再度首輪をさせると完了である。
首輪に仕込まれた魔法で簡単に隷属させられてしまうのだ。
難しい顔をしているとトリビュートがこんなことを言ってきた。
「明日奴隷オークションがある場所で開催されます。同伴者を1名連れていけるのですがナオヤ様も如何でしょうか?
これだけの奴隷を購入して頂けるなら参加資格は充分にあると思うのですが。」
考えて込んで
「どれくらいの規模なんだ?」と訊くと
「ロシァ共和国各地から貴族様方に希少な奴隷を提供しているのです。
参加者はおよそ100人超でしょうか。各地の有名な奴隷商人が集まりますので、私どもでも手に入らない奴隷が見つかるかも知れません。
今回はひとりで行く積もりでした。」
護衛としてひとり同伴出来ると言うのでこれも何かの縁かも知れないとお願いする事にした。
奴隷達を連れて行くのに手を貸すと言われたが魔法を使うから大丈夫と言って商館の前に全員を連れ出した。
大丈夫という言葉に驚きはすれ、それ以上は何も言わなかった。
ロキシーは葵が背に載せて一緒に立つ。
僕の合図で全員が飛空艇クレイモアに転移した。
クレイモアでは僕たちの行動をフォローしていてくれたメジーナ博士が待ち構えていたのだった。
ロキシーを背中から下ろして座らせる。
「葵、頼む」と言うと分かっていたようで頷いて神聖魔法のリバイブを掛ける。
その時、セラも顔を出してきたので奴隷達も合わせて回復を頼んだ。
セラはリバイブを掛けている葵も含めて全員にエリアヒールを掛けてしまった。
二重の魔法の効果の為か、ロキシーの身体から強烈な光が放たれた。
光が薄れてロキシーの姿が見えるようになって、取り囲んでいた皆がその姿に驚いた。
ロキシーの欠損は無くなり、すらりとした背の高い成人した狐人となっていたのだ。
超越賢者によるとどうやら魔法の二重掛けによる特殊効果で進化したようだった。
ただの狐人でなく、二尾天狐となったのだ。尻尾が二股に増えていた。
「どうしたの?あれ?普通に声が出る!」
それからロキシーは自分の見に起きたことに驚き喜び、皆に祝福された。
こんなことはメジーナ博士も初見だったらしく酷く興奮して、ロキシーを預ける話をしたところ喜んで請け負ってくれた。
無論、他の6人も基礎教育をつけて貰う為に一緒だ。
取り敢えず奴隷達はメジーナ博士のサーバントに任せて別の部屋で落ち着いて貰う。
メジーナ博士を交えてみんなに今日合ったことを話す。そして、明日奴隷オークションに行くと話で今度はミューレイが同行する事になった。
護衛と言う意味では期待出来ないが、葵ばかり連れ回すのでは可哀想だったからだ。
セラが恨めしそうな顔をしていたが、セラを連れて行ったら全ての奴隷を買わされそうなので無理やり納得させた。
メジーナ博士に一応確認をする。
「ババロンまでの長距離転送は可能になったのかな?」
メジーナ博士がニヤリと笑って、親指を立てる。
「無論、このメジーナ様に抜かりは無いね。
子供達はサーバントに教育させるさ。
丁度今、メイドロボットの開発ね目処が付いたところだからババロンではメイドが世話にする事になるだろう。クレイモア共々私たちはここに残れるさ。」
流石はメジーナ博士だ。実行力はぴかいちだ。
これで心置きなく明日の奴隷オークションに行ける。
きっと明日は望みが叶うだろう。
予感は意外な形で叶ったのだった。
奴隷オークションで起こる出来事とは?
ナオヤは集めた奴隷の子供達をどうするつもりなのでしょう?
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これからも 二番煎じ を宜しくお願いします。
楽しんで頂けたら幸いです。
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