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二番煎じの転生者  作者: きゅうとす
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今後の予定と魔法陣

彼を追うか


王都へ行くか


それは問題だ。

承章1 始まりの村 アデル⑨


僕の名前は八神直哉(ヤガミナオヤ)

どこにも居る普通の中学生だ。でも、そろそろ決断の時が迫って来た。


僕の左手首には神器『腕時計』がある。これに向かって話しかけると神様とお話が出来ちゃう優れものである。一応はなんだかんだと夜中にこっそりと連絡を取ってはいたけれど、今回はちょっと長くなるかも知れない。だって今後の行動指針に関わる事を相談するからだ。


始まりの木から現れた人は僕で3人目。メリカ共和国を作った王祖のアデル、5年前の出生不明な転生者の彼、そして彼を調べる為に来た僕八神直哉。

始まりの木からの特別な人物だと『冷蔵箱』の完成や『プリン』レシピの譲渡や『ハンコ』考案と言う出来事で証明してしまった感がある。5年前に失踪した意味不土塁作成にして失敗冷蔵庫、残念プリンの彼は王都からの使者に応じなかった事になるから、実質僕がアデルに続く特別な人間と知らされてしまっている。隠す積もりもなく普通の人が出来ない事をしてしまえば目立つに決まっている。今更逃げるにしても逃げにくい事は確かだ。

このガライヤの世界に来て10日目で冷蔵箱を作り、次の日にはプリンのレシピを渡し、夜にはハンコを教えたのだ。村長のメイクンさんの信頼を得られたのは良かったが、王都への連絡をされたから、今後をどうするか決められる猶予はおおよそ4週間後となるだろう。それまでに行動しないといけない。


「もしもし、神様。ナオヤです。聞こえていますか?」スマートフォンでもしているような呑気な僕の問い掛けに神様の声が頭の中に明瞭に聞こえた。

ちゃんと聞こえているよ。君の悩みも分かっている。

答えは“君の好きにすると良い“だ。まあ、女神ガライヤから頼まれたからとか言うと御使い様に祭り挙げられるか、嘘つき呼ばわりされて挙げ句の果ては消されてしまうかも知れませんけどね。正直過ぎるのは考えものだね。

王都に行くのはとても危険で彼の足取りを追うのも出来なくなる恐れがありますね。

「なんですかぁ~、それじゃあ逃げ出した方が良いって言うことの1択じゃあないですか!選択の余地なしですかぁ?」僕の叫びも虚しい程簡潔な答えだった。


それとガライヤからの伝言ですが、『今のところ彼の居場所を突き止められませんわ。彼の世界線は追えますが、居場所を特定すると何処へ向かうか分からなくなり、目的を絞ると居場所が曖昧になるようなの。5年前から時系列で追ってみるから暫く連絡取れそうもないわ。』と言う事です。

僕はまるで彼は量子のようだと思ったが、女神ガライヤからの確定情報を得られるまでは魔素を増やし、使える魔法を増やす努力をするしかないなと思い定めたのだ。


次の日から僕とメイちゃんが行く場所が変わった。始まりの木の西、沢の向こう側に行くことにしたのだ。

始まりの木の森の外は普通に魔物が出てくる。ホーンラビットを始め、灰色狼(グレーウルフ)灰色小熊(グレーベベア)など魔法が使える大人でも手こずる程の魔物が居る。これらの魔物を魔法を鍛える為に魔法だけで倒すのだ。無論身体を鍛えるから魔素も増える筈だ。

緑蔓草の実、角キノコ、盗廚火草、消え入り草など変わった薬草が採れるそうだ。いずれも強い魔力の影響を受けて効き目の高い薬草が生えているということだった。メイちゃん独りなら無理だが僕が一緒ならと言う事でメリダさんから許可も貰った。その際、メリダさんから一本の短剣を渡された。

『錆び付いて見える短剣』だそうだ。短剣としての機能より魔法を増幅する力があるという説明だった。うん、ちょっと胡散臭い。


メイちゃんが緑蔓草の実を摘む近くで僕は魔物が出ないか見張っていた。レーダーの魔法は改良されて言わば波長変調方式のパルス魔素放出レーダーになった。前は紐状の魔素を鞭のように走破させて途切れた所を感知していた。

魔物によって魔素は異なる波長の魔素を持っている事を経験上知っている。魔法を盛んに使っている魔物の魔素は強く放出されているのでかなり遠くからでも感知出来るのだ。魔物に依る魔素の波長を途切れた紐から感知してレーダーとして活用していたのが今まで。

魔素を波として認識出来る事を知って、魔素を変調出来るのではないかと考えた。

電波の変調方式としては、送信電波の周波数を周期的に変化させる周波数変調(FM)が代表的である(周波数変調連続波レーダー)。目標からの反射波が受信される時には送信波の周波数が変化していることから、その周波数差(ビート周波数)を測定して、距離を測定するのだ。

魔素で同じ事が出来る筈、感知は魔力をそう言うふうに扱えば良い。魔力の扱い易さは意志に従うのでどんな風にして感知しているのかを考える必要が無い、魔力の感知方法はブラックボックスで構わないのだ。

波長変調方式のパルス魔素放出レーダーでメイちゃんに近づくホーンラビット数匹と少し離れた所にいる灰色小熊(グレーベベア)を同時に感知していた。感知が出来ればその姿を朧げに描く事が出来るので魔素の紐を繋ぐ事が出来る。凝縮した魔素の塊を同時に放出する為に『錆び付いて見える短剣』を横殴りに振るった。魔力をコントロールして着弾と同時に炎の属性を発揮させる。ホーンラビット3匹と灰色小熊(グレーベベア)の体内で魔法が発現して全部の魔物が倒れた。メイちゃんの居場所を確認しつつ、獲物をインベントリーに収納する。灰色小熊(グレーベベア)は少し離れているのでメイちゃんに一声掛けて走って行く。灰色小熊(グレーベベア)は沢の岸と森の境目で倒れていた。辺りを警戒しつつインベントリーに収納する。

戻ろうと視線を巡らせた時視界に青紫の鳥を高い木の上に見つけた。どうやらメシュメシュと言うお祝いなどで出される貴重な鳥のようだ。音を立てないように気配を出来るだけ消して木の下までゆっくり近づく。上を見上げるとまだ、止まっていた。どうやら木の中の虫を(ついば)んでいるようだった。

魔素の紐をゆっくりと木の幹の上を這わせるように伸ばして行く。メシュメシュを視認しながら足元まで近づけると端をメシュメシュに向けた。何かに気づいたようにメシュメシュが啄むのを止めて周りを見回す。息を呑む。再びメシュメシュか啄み始めた所で凝縮させた魔素の塊を魔素を通して当てた。ボシュと言う音と共にメシュメシュの頭が水球に包まれる。頭を振りつつ飛び立とうとするが水球に溺れてメシュメシュが落下してきた。バサバサと木の枝を落としながら近くに落ちた。同時に水球も爆ぜる。思わず笑みを浮かべてメシュメシュをインベントリーに収納する。


こんな狩りを午前中にした後でいつものように道具屋のメイトウに売りに行く。「相変わらずどんな魔法を使ったのか分からない獲物ですね~」と半分呆れながらメイトウが処理をしてくれた。メシュメシュは羽をむしり、内蔵を取り除く処理までしてくれてあった。うん、素晴らしい仕事ぶりだ。


毎日何らかの獲物を持ち込むので魔物を使った道具も増えてきた。灰色小熊(グレーベベア)は傷も無いので敷物としてかなり高く王都の方で売れたそうだ。メシュメシュの羽毛の枕は村長のメイクンが喜んで買ったそうだ。自分が捕った魔物か役立っているのが嬉しい。

逆に王都からの道具も見たことの無い物が増えた。

メイトウに珍しい物はないかと訊いた所光る石を出してきた。魔石である。拳大の無色で紡錘形の石。メリダさんの所有するものより一回り大きい。透明度も高く置いた布まで見える。幾分得意げに見せるので何かあるのかと尋ねると「魔法陣が刻まれている」と言う。遠見の魔法を発動出来る魔法陣だと言うことで実演して見せてくれた。魔法石の両側から魔法を通すと封じ込められた魔法陣が起動して魔石の上に見たことのあるようなスクリーンが現れ、道具屋メイトウの店の外が映った。

僕はメイトウの言い値通り金貨5枚を払った。これで遠見の魔法が使えるようになるかも知れない。

また、魔法陣と言う新しい玩具も手に入れた。家でゆっくり解析しようと思う。


着々と増える魔素と


新たなる魔法の要素 魔法陣 


一体どんな仕組みなのか

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