異世界転生の謎を解き明かせ
第1章 起章
1.転生者は辛いよ
いきなり目の前で大きなため息をつかれてしまった。
ため息を吐きたいのはこっちだろうが!!
と言ってもそんな突っ込みを入れられる相手でははい。なんと言っても相手は神様だからだ。
白いシャツに白いズボン、白いベルト都白い革靴。何もかも白尽くめな中年のおじさんに見える。
「何で僕を見てため息付くんです? 止めてくださいよ、僕が悪いみたいに見るのは!」
転生の神様は両手を合わせて言った。
「ごめん、ごめん。いやね、ポカしたのが二度目だから嫌になっちゃってね。アハハ~」
「君たちの時間で五年程前にも同じ事があったからさ~」
笑っている場合では無いようなことを目の前の神様は平気で言った。
僕の名前は八神直哉。何処にでも居る中学二年生。どうやら通学途中で命を落としたらしい、しかも神様のミスで。
「僕は何で神様の前に居るんです?説明してくれるんですよね?」
詰め寄りたい気持ちを抑えて僕は神様を睨みつけた。
「君の気持ちは分かる。今から順を追って話そう。
君は一年ほど前に通学途中で時空雷に打たれて死んだんだ。時空雷そのものは普通に発生したものだったけど、君が撃たれて死ぬのはこちらの管理ミスだった。君があの道を通らないように誘導する筈だったんだが、・・・ ちょっと失敗してしまったんだ。」
時空雷とは時空の歪みが細く長くランダムに起こる現象らしい。時空の歪みの雷のようなものだと説明された。原因は不明。神様には心当たりがあるらしいが教えてはくれなかった。
ジト目で見つめる僕の視線をそらして何となくぼかして説明する神様。
「ちょっとした失敗なら神様なんだから直ぐに僕を生き返らせてくれれば良かったんじゃないですか?」
口を尖らせて文句を言うと神様は更に驚くべき事を告白した。
「いやぁ~そうなんだよね。 ・・・でも、一年以上過ぎてからの事象の改変は次元乱流を誘発するからちょっと厳しいんだよ~、アハハ」
一年以上気付かれなかったってどういう事?
目が点になった。怒りで口がパクパクして言葉が上手く出てこない!!
「あんたねー!!」
思わず神様の肩を両手で掴んでガクガク揺さぶってしまう。
「ごめんなさい。 本当にごめん。
だから、お詫びに転生させてあげようと思うんだ。」
ポリポリ頭を掻きながら神様は言う。
神様はその力があると言う。
「もちろん、君が望む世界を選んで良い。転生先の神様と相談して君の望む条件を呑もう。」
神様は背後にある沢山のパネルを指して言った。
僕と神様が居る場所はまるで不動産屋の受付のような場所だった。
突き抜けた青空と綿菓子のような床が無ければ絶対ここが神様の世界だとは気がつかなかっただろう。
時折吹く涼やかな風が気持ちを抑えてくれる。
「どんな世界でも良いんですね!」
目を輝かせる僕を見て神様は頷いた。
「もちろん、剣と魔法のファンタジー世界でしょう! ラノベのような冒険と恋の世界に行きたい!!」
もちろん神様にはどんな答えを言うのかは分かっていたらしい。
「但し、ちょっとだけお願いがあるんだ。さっき言ったように前の転生者が居るんだ。その彼の事を詳しく調べて欲しいんだ。」
「え?神様が転生させたんじゃないんですか?」
もじもじしながら神様は言う。ちょっとキモい。
「実のところ彼の名前はおろか、何故どうやって転生したのか分からないんだ。
転生先の ガライヤ も知らないらしい。」
ガライヤとは剣と魔法のファンタジー世界の女神様の事だ。
地球の神様か指し示すパネルの向こうから軽く手を振ってくれていた。なかなかの美人だ。
「義務と言う訳では無いんでしょう?」
ちょっとゴネながら言う僕に慌てて神様は頷いた。
「もちろん、出来たらの話で構わない。 でも、彼のことを調べることが君があの世界で生きていく証になると思う。 しかも、君の疑問を解き明かすヒントを与えてくれる筈だ。」
神様は意味深な笑みを浮かべながら言った。
ちょっと考える振りをしながら僕は了承した。
「分かりました。神様の代理をしましょう。」
「じやあ、ガライヤの世界へ」
神様が指を鳴らすと僕達は剣と魔法の世界へ吸い込まれて行った。