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そして彼女のもとへ―――。

宇宙空間を彷彿とさせる雲のない夜空から、薄明るいグラデーションが隅から描かれていく。

グラデーションは徐々に明るみを増し、太陽の光が顔を出そうとしていた。


窓から朝日が射し、目元に降り注いできた。

眩しくて少し横にずれながら、この部屋で2回目に見る天井をぼんやりと目蓋を開けて目を覚ました。



今日はあの娘に会いに、昨日一緒に行った海が見える丘までまた行く予定だ。

今朝はいつの間にかそんなことを一番に考えていた。


「今日も出ていくのか?」


不意にスキンヘッドのおっさんが尋ねてきた。

そのつもりだと答えたら、なにをどうするでもなく黙って離れていった。

昨日の様子から違った反応を見て、どうやら無理に引き留めようとはしないようだ。


俺はドアの方に近づいて、ノブを握ったまま後ろを振り返った。

この部屋の住人達は、何をするでもなく、座ったり突っ立ったままでいたりしていて、まるで生きているとは言えないように感じた。


ドアを半開きにすると、外からの光が部屋の中へと入っていった。

部屋の明るさが陽の明かりのせいで暗く感じる。

俺は一歩、外の世界へ足を踏み出し、あの娘の元へと行くことだけを思っていた。


階段を降りていくと、昨日はあんなにいた群衆は、見る影もなくいなくなっていた。

周りは静かで、行く道は白く光り輝いていた。


丘の上まで昨日の通り辿って行ったら、眼下にはあの海が広がっていた。

こちらの方には人はいて、なおも楽しそうに騒いでいた。

子どもたちや、学生たちの幼さの残る声が響いている。


丘の上の大きな木の元に座り込んで、海を眺めながら彼女を待つことにした。

海の方からは時折強く潮風が吹いてきて、そのなんとも言えない不定期な間隔が心地よかった。


日が傾いてきた頃、あの娘が横から現れてきて、声を掛けてくれた。


「待った?」


俺は、待ってないよ、と言い、手を取りあって浜辺の方へと降りていった。

小さなボートが、まるで待ち受けていたかのように波打ち際に置いてあった。

この海原を進むには心もとない感じがしたが、俺とこの娘は一緒にそのボートに乗り込み、俺はオールを両手に持って沖の方へと漕いで


いった。

彼女と街が視界に重なって見える。


日の光が段々と赤くなっていくのが分かる。

段々と空の隅から夜の帳が降りてくるのが見えてきていた。


彼女は、「不安もあるけど、一緒にこのボートに乗って、行ける所まで行こうね!」と語ってくれながら、俺をじっと見つめていた。

俺は、彼女の目に写る、明けも暮れもあるそのいつもの太陽の色を、得も言われぬ感情を込めて見つめていた。


彼女の背後にある見慣れた街は、段々と遠くなっていき、ついには見えなくなっていた。


何故か郷愁に似た感覚を抱きながらも、オールをゆっくりと漕いでいく。


今は彼女と一緒にいるこの航海の時間を楽しもう。


二人で一緒に見上げる夜空の星たちは、きっとこの上もなく綺麗に見えることだろう。


そしてまた新しい朝日が昇り、俺たちを陽の光に包み込んでくれる。


俺は自分の正体について、分かったことがある。


俺の名前は、恋心。


そしていつしか、この名前は愛へと変わるだろう。




ラストを考えるのに随分と時間が経ちました。

夢の内容では、一人でボートに乗って海に出ていくシーンだったのですが、一人ではなく二人で乗り込んで人生の航海を―――というように繋げてみました。

実際の夢の内容では、寂しいエンディングになってしまうので、変更しました。

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