この部屋について
あの後、帰途に付いた。
目が覚めたあの建物の手前では、相変わらず大勢の人達が集まっていた。
やっとの思いで辿り付き、上へ上へと階段を上がっていく。
扉を開けて入ると、スキンヘッドのおっさんがこちらを見て、言った。
「戻ってきたか。」
俺は軽く頷き、部屋の適当な所に腰を下ろした。
未だに白い服を着た人たちは、各々が好きなように立っていたり、座っていたりしていた。
俺はスキンヘッドのおっさんに訊ねてみた。
「あんたたちは、ここから出ていかないのか?」
するとおっさんは、俺に好奇な目を投げかけ、答えてくれた。
「オレたちは、この部屋から自らの意志で出ていくことはできないのさ。
この部屋の意志がオレたちの意志で、オレたちの意志が、この部屋の意志なのさ。」
俺はそれを聞き、じゃあ俺はどうなるんだ?と疑問を感じていた。
もちろん、この部屋から出た時は、自分の意志で出ていったさ。
だがそれがこの部屋の意志じゃないと誰が分かるってんだ。
「外で誰かと会ったみたいだな。まあ用心しとけや。」
おっさんはそう言って、今日はもう寝ると一言呟きそのまま横になった。
俺も、今日あったことを思い出しながら、あの娘の事を思い出しながら眠りに入った。
いつの間にか、部屋の証明は暗く落ちていた。