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丘の上の木の下で


「あの、大丈夫ですか・・・?」


手を差し出してくれた彼女は、白いワンピースと麦わら帽子をしていた。


「あ、ありがとう・・・。」


俺はお礼を言うと、手を握ったまま彼女をまっすぐに見つめた。

どこかで見かけたような顔だったからだ。


「あ、あの、どこかでお会いしたことは無かったですか・・・?」


彼女はまっすぐ見つめている俺の目をそのまま見つめ返してくれた。


「・・・・・・。」


彼女は何もしゃべらず、俺を見つめたままだ。

俺は少々、居心地が悪く感じ、目を口元に外した。


「・・・少し歩きましょ?」


彼女の最初の返答は、質問に対するものではなかった。

その返事に何かしら謎めいた感じがした。

初めてにしろ、知っていたにしろ、不自然だったからだ。


彼女が先頭に立って、歩き出した。

手はいつの間にか、外れていた。


彼女に誘われて丘へと伸びている一本の道を歩いていくと、丘の向こうから塩の香りが漂って来た。

丘の頂上には一本の大きな木が植わっており、そこから丘を見下ろすと、大きな海原が波風をたてながら目の前に見えた。


浜辺には若いカップルや子ども連れの家族が、はしゃぎながら海へと入って行ったり、波打ち際で遊んでいたり、パラソルを掛けて楽しんでいた。


「ここ、素敵でしょ?私のお気に入りの場所なの。」


彼女はそう言って、木の根元に足をそろえて座った。

2人で一緒に並んで海に沈んでいく夕日を眺めていると、


「今日は、私は帰るわ。また、会いましょう?」


と彼女は言って、丘から降りていった。

麦わら帽子と潮風にたなびかせているワンピースが金色こんじき色に見える、彼女の後姿を見送った。


俺も帰ろうとして、もと来た道を戻ろうとしたが、木の下に何かが埋まっているのに気付いて、振り返った。

夕日の光を浴びて大きく影になったその木の根元には、木の箱らしいものの角が少しだけ土から出ていた。


気になった俺は、その木の箱を掘り起こした。

すると、その表面にはこのような文字が書かれていた。


『この先には行くな』


と―――。


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