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ふゆうげん

作者: 雨露毱

ふわり。

宙に浮く。

見える地は遥かに遠くて。

浮遊感から逃れたくて地に近づこうとするけど敵わない。

どれだけ踠いても、どれだけ泣いても、どれだけ叫んでも、何も返ってはこない。反応は、何もない。

まるで自分の存在が風に流される砂のように、さらさらと無くなってしまったかのような錯覚に陥る。

どれほどそうしていただろう。

全てが無駄に思えていた。

全てに、慣れてしまった自分がいた。

この景色に。浮遊感に。静寂に。そして……孤独に。

だから、全てをやめる。

踠くことも、泣くことも、叫ぶことも、なにもかも。

誰かに気づいてもらえなくていい。

誰かに覚えていてもらえていなくていい。

誰かに嫌われないようにとしていた行為を……無意味な愛想笑いを、無理矢理な同調を、偽りを、忘れ去ったとき。

そのとき、ふと、浮遊感以外をも忘れた身体がどこかに引き寄せられた気がした。

ふわり。

宙に浮く。

まだ、宙に浮いている。

見える地は未だ遠くて。

まだ遠いけど、少し近い。

変に踠くとまた遠くにいってしまいそうで。

慎重に、慎重に喜びを噛みしめる。

地にいる人々はそれぞれがやりたいことをやっているように見える。

あそこまであとどれくらいだろう。

不思議といつか必ずあの地に足をつけることができるという不確かな確信があった。地の感覚をまた味わえるような気がした。あの地にいる人たちの輪に息苦しさを感じずに入れる気がした。

そのいつかのために今度は新たな「なにか」を見つけ出す。

そのために今日もまた浮遊する。

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