脇役君は巻き込まれ……
やぁ、初めまして。 オレの名前は、中西 堅慈。歳は17の高二だ。見た目は釣り目の上の中。髪色は茶髪で、毛先を遊ばせている位のちょっと不良っぽい奴だ。
「…ん?」
ピンポーンと言う音が聞こえた。なので、一旦オレは時計で時刻を確認した。
「07:25か…」
この時間に来る奴はアイツ等しかいない。というか早く行かないと近所迷惑になるだろう。あっ、言うの忘れてたけど、オレには親はいないんだ。
そう。よく小説とかである、天涯孤独な人間ね。
まぁ、そんな事より早く行こう。そう思い、オレはドアを開け、外で待っている奴等に声を掛ける。
「おう、悪い。少し、遅れたか?」
「アンタ、遅過ぎ!なに、コウの事、待たせてんの!」
今、話し掛けて来たのは、所謂、幼馴染でツンデレの奴。名前は……摘手 礼子とかでいいだろ。知らねぇし。一応言っておくが、オレの幼馴染では無い。
「本当、少しはコウ様の事を考えて上げるべきではありませんこと!」
次のは、所謂、金持ち令嬢の奴。名前は……金鶴 兼子とかでいいだろ。奴の親には中々貰ったし、それに良い事して貰ってる。待てよ、コイツの親の名字は華鳳院だから、違うかもしれん。……どうでもいいが。
「二人とも、ボクの為にそこまで怒らないでよ。ゴメンね、堅慈にも予定があって遅れたんだよね」
そして、二人を窘めるコイツの名は、朱神 光だ。オレがコウと出会ったのは中二の頃だ。
コウがこう言うとあの二人は
「もう、コウったら…アタシはコウのそういう優しいところす、好…なんて言えるかぁぁああ!!」
「ふふっ、私はコウ様のお優しいところ好きですよ。キャッ、言っちゃいました///」
こんな感じになる。
此処で分かると思うが、オレと言う人間は所謂、脇役みたいな奴だ。主人公が不良と喧嘩する時、結局はオレが全部倒したりするような役回りをする。オレは意外ではないと思うがまぁ、かなり強い。ヤクザだって、殺し…じゃなくて倒したし、マフィアだって殺し…じゃなくて倒したからな。しかも一人で。
「ところで、なんで今日は少し遅かったの?」
コウが訪ねて来た。
「あぁ、ちょっと両親に挨拶してた」
嘘です。朝飯食ってました。
「…はぁ?アンタ、そんな事で時間食ってたの?」
「灯!!いくら君でも堅慈の両親をそんなと言うのは許さないぞ!」
「うっ…ゴメンね」
何故、コウがオレの両親の事についてこんなに感情的なのか?それには理由がある。
「ボクに謝るじゃなくて堅慈に謝るんだ」
「チッ……悪かったわね」
うわっ、感じ悪いわぁ。気にしないけど。
「コウ様?何故、そこまで感情的になさるのですか?」
「ちょうどいいから、二人に聞いて貰う。堅慈、言っても良い?」
どうぞー、ご勝手にー。という感じは出さないで、ちょっと暗い表情を見せながら頷く。やべっ、オレ俳優向いてるかも。
「堅慈の両親はボクの命の恩人なんだ」
『えっ?』
まぁ、詳しく言うと。オレがコウと出会ったのは中二って言ったろ?コウの奴、その頃から女にモテてた所為で男友達がいなかったんだと。
まぁそんで、オレと言う友達が出来て嬉しくて、よくオレん家に通っているうちに、オレの両親とも仲良くなって、遊びに行く時、コウの奴、落とした物を拾おうとして歩行者の信号を見て青になった時道路に出たっけ、信号無視したトラックが出て来て、さぁ大変となり、オレは傍観してたら両親が駆け出してコウをオレに向かってぶん投げて、そのまま両親はトラックに引かれ、チーンとなったって訳だ。
だから、コウはオレの両親を命の恩人だと言っている。
「ボクは最低だ。」
オレは最高の気分だ。だって、保険金が入ってウハウハだったから(笑)。しかも両親がそれなりに稼いでたからもう、ね?
「コウ…泣かないでよ」
しかし、あの後両親の血縁関係者がオレの金を巡って争いを始めたのはウザかった。ある奴等は、この世からおさらばして貰い、またある奴等は、夫婦間の浮気現場写真をポストに入れて泥沼にさせ、オレを受け入れる事が出来ないようにした。
お陰で今のように悠々自的な生活が送れてます。
「コウ様には涙は似合いません。それに悪いのはトラックの運転手でしょう?」
普通はさ?こう言う事があって、主人公に復讐してやる!みたいな脇役が多いじゃん?でもさ、勿体無いとオレは思うんだよね?
だって、適当に仲良くしてれば、アイツ目当ての女が告白してくんだぜ?ブスは断れば良いし、美人とはヤれるし。確かに、彼女は取られるかもしんないけど、オレに取っちゃどうでもいい訳で。それになんか知らんが、オレは案外テクニシャンだったらしく、別れた後もヤっている奴はいる。因みに、中には彼氏持ちもいる。更に言うと、オレと付き合った奴は全員、コウに告白したらしいが気付いて貰えなかったらしい。
おっ、いつの間にか、学校に着いた。
「あっ、そうだ。中西は少し話があるから職員室に来てくれ」
「分かりました」
授業が終わり、昼休みに入ろうとした時、先生に呼ばれたので職員室に向かった。言っとくけど、学校では真面目だから、オレ。確かに不良っぽいけど、真面目なんで案外、先生達からの信頼はあります。
「それで、話とは?」
「お前、また他校と喧嘩したらしいな?」
あぁ、それか。アレはストレス発散と金が手に入るから一石二鳥なんだよなぁ。
コウがナンパ男に絡んで、オレが倒して、コウが女の元に行き、オレはその間に財布から金を瞬時に全部頂く。コレがヤクザとか、マフィアだと更にパンパンなんだよ。
しかもヤクザとか、マフィアの場合は殺しても後処理は華鳳院の奥さんに連絡を取ってやって貰えるし。あっ、やべっ、殺してとか言っちゃった!テヘペロ★
えっ?なんで華鳳院の奥さんの連絡先を知ってるかと言うと、オレがあの人の浮気相手だからだけど?欲求不満って、大変だね?
まぁ、あの人が本家の人間だし、稼いでいるのもあの人だから旦那にバレても良い、って感じらしい。
「ハァー。どうせ、また朱神の奴が他校に絡んだんだろ?」
この先生は、というか、先生達はオレとコウの関係が分かっており、
「申し訳ありません、コウの奴がやられてしまうのは危ないと思ったので」
とか言うのが何時もの事だ。
「お前、誰かにこういう事するなとか教えられなかったのか?」
こう言われれば
「申し訳ありません、自分にはもう教えてくれる人がいないので…」
とか言えば良い。更に、悲しく見える笑顔で言うのがポイントだ。
「あっ、悪いな。ハァー、反省文書いて貰おうと思ったがいい、戻って良いぞ」
ハッ、チョロい。因みに女性の熱血教師ならヤバいところまで行けちゃうんです。但し、美人限定。
「堅慈、一緒に帰ろう?」
放課後になり、コウがオレの席に来た。
「あの二人は?」
「ちょっと用事があって先に帰るって」
ふーん、珍しい事もあるもんだ。
「───でさぁ、その時にね?…ってアレ?足が動かせない!」
コウがそう言ったので、コウの足元を見ると魔法陣とか言うのが下で光っていた。よく見ると少しずつだが、コウの体が魔法陣に沈んでいっている。
「堅慈、助けてっ!!」
コウはそう言って、オレの左腕を掴んだ。その瞬間にオレは周りに人が居ない事と、防犯カメラの類いが無い事を確認した。
「分かった。今、助ける!」
そしてオレは、コウからは見えない角度から首の骨を折った。そして、死んだ事を確認した後、掴まれた手を外し、その場から遠ざかり、その後の様子を見守った。
コウと言う名の死体は魔法陣に沈んでいった。
「魔法陣って便利だな」
そして、オレは家に帰った。
脇役は巻き込まれませんでした(笑)。
─オマケ─
コウを召喚した世界。
姫「やりましたっ!勇者様が……って死んでるがなっ!?」
人『な、なんだってー!?』
魔人「フハハハ!我が名は四天王が一人……って勇者が死んでるがなっ!?」
魔『ヒュー、ラッキー!』
魔王「ヒャッハー!今の内に、世界征服だ!男は犯せ!女は殺せ!」
魔『…えっ?』
こうして、異世界は魔王によって征服されたのでした。