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8.少女の秘密(SIDE レヴィナイス)

少々短いです。


 ファリナが着せ替え人形の果てに昼寝をしてしまった為、セラもまた帰るに帰れず、今日はクリスティーン兄妹は王宮に泊まることになった。というか、母上が強引に押し通した。だが、それは正解だったといえる。何故なら、夕方から天気が崩れ、雨が降り出したからだ。勿論、馬車で帰れないことは無いだろうが、セラがいるとはいえ、幼いシリルが風雨の中帰路につくとなると、俺は気になって冷静ではいられないだろう。

 夕食は一緒に摂った。母上は勿論、普段、滅多に一緒に食事を摂れない父上まで、当然のようにいる。クリスティーン兄妹、恐るべし。

「一度ね、シリルちゃんに聞いてみたいことがあったんだ。」

 砕けた話し方をする父上は珍しい。

「なんでしょーか?」

「ティオンヌから聞いたんだけど。」

 ティオンヌとは、彼等兄妹の父親で王宮魔術師長である男の名だ。

「勘の鋭い子や魔力の高い子は、たまに前世の記憶を持っていることがあるらしいね。大きくなったら段々忘れていくって話だけれど。セラくんもシリルちゃんも勘が鋭くて魔力も高い。だが、セラくんはもう八歳だし、もし覚えているとしたらシリルちゃんかと思うんだが…………。何か覚えているかい?」

 すると、父上は笑顔なのに、ファリナは目で見て解る程に狼狽えた。

「………………いえ、にゃんにも…………。」

 言葉で否定していても、態度がそれを裏切っている。

「そうか。残念だな。輪廻転生が本当に起こりうるのか、興味があったんだが…………。」

 ポツリと呟いた後、父上は笑顔に戻り、話題を変える。だが、俺の中では奇妙な不安が染み出し始めた。


 夜になり、ファリナを寝かしてから、セラが俺の部屋にやってきた。

 雨はまだ降っている。それどころか、段々酷くなっているようだ。

「レヴィン。俺の妹は可愛いだろう!」

 セラは、第三者がいる時は俺を“殿下”と呼ぶが、二人だけになると愛称になる。ついでに敬語も無くなる。公的な場合は自分を“私”と言い、家族や俺と一緒にいて他には誰もいない時は“俺”になる。まぁ、一人称に関しては、俺も同じだが。

 腹黒く笑うセラに俺は表情を変えないように気を付けながら言った。

「まぁ、自分より小さいヤツは可愛いモンだ。」

「ん?それだけじゃないだろう?昼間寝てしまったシリルを抱き寄せて、ご満悦な顔をしていたクセに。」

「小さくてか弱いものに対する庇護欲の他に、何があるって言うんだ。」

「ひとりの女の子として、じゃないかって意味さ。」

「そりゃ、ファリナは女の子だって知ってるが。」

 セラはニヤけた笑みはそのままに、片眉を上げた。

「鈍いな。そういう意味じゃない。…………って言っても解らないか。お子ちゃまだな。」

「誰がお子ちゃまだ?!」

「レヴィンだろう?!」

 バキャッ!!!!!ドォーン!!!!!

 俺達の会話を遮ったのは、闇を切り裂くような閃光と巨大な破壊音、そして城を揺るがす程の振動だった。

「ヤバいっ!!!」

 一瞬の硬直の後、セラが血相を変えて立ち上がった。転がるように部屋を出ていく。驚いた俺は、一拍遅れてセラの後を追った。

「シリルっ!!!」

 叩き割るかの如く荒々しく扉を開けるセラは、そのまま部屋の隅に座り込んで頭を抱える少女に駆け寄った。彼女は目で見て解る程、小さな身体を震わせている。

「いやっ!やだぁーっ!あけてっ、ここをあけてぇーっ!!」

 抱えた頭を左右に振って半狂乱になって叫ぶファリナの姿に、俺はどうして良いか解らなくて、そのまま立ち竦んだ。

 セラは彼女に素早く近付いて抱き寄せる。

「シリル!大丈夫。大丈夫だから…………。」

 カタカタと震えていた少女は、兄に“大丈夫”と繰り返されて抱き締められて、少しずつ落ち着きを取り戻し始めた。雷が遠くなったせいもあるかもしれない。

 そして、雷が収まる頃には、眠ったのか失神したのか……、意識がなくなっていた。




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