実践訓練
しばらくして意識が戻ってきた茜は理沙の下へ走った。
(気持ちは走っていたが実際は病院なので早歩きでした。)
「理沙先輩!お時間取れますか?」
担当患者の様態を見ていた理沙は茜の焦った様子にも慌てることなく、
「田中さん、だいぶよくなってきていますね、この調子じゃお孫さんの誕生日には担任できるかしらね?でも、ご飯はきちんと食べてくださいよ。体力つけないと。じゃあ、またあとで戻ってきますね。なにかあったらナースコールで呼んで下さい。」
にっこり笑顔で患者さんの田中さんも嬉しそうに受け答え、病室を後にした。
廊下に出ると、理沙はあきれたように
「なんで仕事では大丈夫なのにその他では焦りまくりね・・・。何があったの?高田先生と回診してたでしょ、モーションかけられたりしたとか?」
「な、なんでわかるんですか?!!!」
「あいつ、思ったより手が早いわね・・・。もう少し慣らしてから練習台にしてやろうと思っていたのに・・・。」
ぶつぶつと理沙が独り言を始めたので
「先輩。マジでやばいです、押し切られて今日、で、で、デートの約束をしてしまって・・・。どうやって断ったら角が立たないのでしょう・・・・。」
「何言ってるのよ、行くのよ。」
「は?」
理沙の言っている意味がわからずに思わず固まってしまった茜を気にもとめず
「まだちょっと早い気がするけど、練習も大事でしょう。デートくらいいろいろな人と行きなさいよ。誘われたんだもの、楽しんじゃいなさいよ。」
「で、でも、私・・・。」
「将太君のことが気になってるのはわかってるよ、でも、今のままじゃあんた緊張してデートのひとつもうまくいかないから気になってもいない高田先生で練習してみたら?付き合っているわけでも無し、浮気ってわけでもないし、高田先生なら送り狼になることも無いでしょう。」
理沙に自分の気持ちが筒抜けであることに少々焦ったが理沙の説得力のある理沙の言葉になぜか納得するところもあった、それにすでに約束をしてしまっているのでこのまま今日はデートに出かけてみるのもありなのかと思い、そのままチャレンジしてみることにした。
その後の業務はどきどきしながらあっという間に過ぎていった。




