高田先生
理沙に言われた宿題のなりたい自分について茜は悩んでいた。
なりたい自分って何だろう。私は以外に普通に結婚して子供とか欲しいのかな・・・。
それは他人本位だし、自分ってだけじゃないよな・・・。
でも、確かに自立した人間ではありたいけど、誰かと人生をともにできるようになりたいかも・・・。
ぐるぐる悩んでいた茜は思わず仕事中だということを忘れてしまっていた。
「斉藤さん、どうかしましたか?」
回診ちゅうの高田先生に話しかけられはっとした。
「すみません、少し考え事をしてしまって・・・。」
「大丈夫ですよ。何か担当患者のことで心配事ですか?」
「い、いえ、すみません私情でした。」
「珍しいですね。斉藤さんらしくない。」
「すみません!」
「・・・悩み事ですか?」
「あ、いえ、そんな悩みと言うほどでもないのですが・・。はい。」
「ん~。では、僕では相談に乗れそうですかね?」
「え??」
高田先生はなかなかのイケメンの若手の医師だ。年齢はおそらくそう変わらないが仕事はできるし、患者のみならず看護士や医師達からの評判もいい。要するにいい医師だ。それに伴い若手の看護士仲間の中では少し人気者なのだ。
普段はそこまで交流の無い高田先生にいきなりそんなことを言われて少し焦った。
「あの、え~特に大きな問題ではないので・・・。」
「そうか、残念だな。では、気晴らしに今夜食事でも行きませんか?」
「!!!・・・・・食事ですか・・・?」
まさかの展開に唖然としていると、照れたように高田先生は
「まあ、気軽にですよ。でも、デートですかね?」
ボン!!
と自分の顔が真っ赤になるのがわかった。心臓は息が苦しいほど早い。
ここ年々デートらしいものをしていなかったし、デートに誘われること自体がまれで
緊張してしまった。
「あ、あの。」
「彼氏いるんですか?」
「い、いえ・・・。」
「じゃあ、決まりだ。斉藤さん、四時上がりでしたよね。駅で待ち合わせましょうか。僕はもし分けないが4時半にあがる予定なので駅に4時45分でいいでしょうか?」
「え!あ、はい大丈夫です。」
「よかった。楽しみにしています。」
にっこり笑うと高田先生はいつも道理に颯爽と廊下を歩いていった。
私は間抜けにもポカンと口が開いたまま廊下に取り残された・・・。




